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承:変わり身の克己心

誰が一番強いかは諸説あります

不知火財閥と言えば、いつからか日本の歴史に名が挙がるようになった胡散臭い万能の金持ちのようなもの、とレヴィアは見ていた。


その詳細を知る者は少ないと言われているし、実際そうだろう。


あまりにも手を掛けている範囲が広く、出資額が大きすぎるからだ。


レヴィアは日本の税金システムはよく知らないのだが、相当な額を不知火は国に収めている一方、脱税してそう。


「それで、天下の不知火の一人娘、不知火=憐の付き人たる女中頭、不知火=陽影が何か我々に御用でしょうか?」


「あらあら、ご存知でごしたか」


緑髪を首元で整えた、いかにもな淑女。もちろんメイド服。イメージカラーはおそらく青。スカートは膝丈。それがカラオケに突然現れたメイドのいでたちだった。


「お願いというには、我々の主である不知火=憐様の身を暗殺者から護って頂きたいのです」


「いいですよ。手数料や経費を抜きにして一億貰えれば詳細も言われずとも達成します」


メイド長、不知火=陽影の表情が強張った。


「本気で言っておられますか」


「当たり前でしょう。こちとら死ぬかもしれないんですよ。

それに何も前金で全額払えって言ってる訳じゃあない。

暗殺者って、そのお嬢様を個人的に恨んで殺しに行ってるんですかね。違うでしょう、

それを依頼した人間まで締め上げて二度と逆らえないように心身と社会的地位まで抹殺してやろうって言ってるんです。

大口の保険を一つ契約して、命が末永く救われたと思えば安いものでは?」


肺活量を活かして、レヴィアは一息に言い切った。


陽影の引き締まった顔が、ぽかーんという擬音を浮かべて口を開け固まる。


「え、ええと……少々、身内との相談時間を頂いてもよろしいでしょうか」


「いいですよ。頑張って身内と交渉して下さい。

私たちと交渉しようと思っても安く見ちゃ相手にしませんからね」


どすり、とレヴィアはカラオケの椅子に座った。


「言い過ぎでは?」


ベルクはレヴィアの顔色を伺う。


「これくらい言わないと、アンタがほいほい危険に飛び込むでしょうが。

貧乏は許せても、アンタが死んだら困るんです。お分かり?」


ベルクはコーヒーを飲んだ。喉に砂糖が絡む。


つまりこの依頼、レヴィアは引き受ける気もさらさらないと言うことか。相手も気の毒なことだ。


「分かりました。一億、間違いなく現金で用意だてます。それで結構でしょうか」


次はレヴィアの顔色が変わった。それまでは聞くまでもない、といった雰囲気だったものが、むしろ怒気を孕んだものとなる。


「ははーん。もっとお高く吹っ掛ければ良かったですけど、どっちにしても、それだけの大金をすぐ用意するって言われたら、胡散臭いんですよねぇ」


レヴィアの物言いは言いがかりも甚だしいが、ベルクとて尋常ならざる気配は感じ取った。


「誠意を見せねば断られる。それは困る、貴方たちにはそれだけの価値があると、そう見たのですが」


ふっ。陽影の物言いを受け、ベルクは笑いをこらえることが出来なかった。


「失礼。なにかおかしなことを言いましたか」


少しばかり陽影は声色を固くする。


「偽物か影武者に誠意を説かれたことに皮肉めいたおかしみを覚えたまでだ」


今度こそレヴィアと、陽影の顔色が変わった。


「違うか。堂々としてはいるが、後ろめたさが視える態度。

言葉の節々に微妙な間、それでいて大胆な金払い、しかも護衛もなし。

悪意こそ無さそうだと黙っていたが、言葉選びを間違えたようだな」


レヴィアは右手で陽影と名乗った女の顔を鷲掴み、持ち上げた。


「ベルク。そういうのはこっそり言って下さいね。

余計なことを知った私たちまで財閥に狙われちゃあ困りますから。

それは嫌なので、ベルクの察するところの影武者さんにはここで死んで貰いましょう」


べちっと音を立て、レヴィアの右手にベルクの手刀が振り下ろされた。


「こらレヴィアやめておけ。

悪意はないと見えるし、この娘、おそらく耳朶に極小のスピーカーでも仕込み、リアルタイムで本物からの指図を受けているのだろう。

金持ちというのも、ああ見えて苦労が絶えないと見える」


レヴィアが力を緩めると、どさり、と音を立ててメイドは床にへたりこんだ。


「お優しいことですねぇ」


レヴィアは陽影の手を取り、椅子に座らせる。


声もなく青ざめた陽影に、ベルクは告げる。


「この依頼、引き受けた。お前の主人の元に案内して欲しい」


「そうはならんでしょう」


ベルクの言葉を聞き、レヴィアは彼を殴った。


誠意見せろオラァ

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