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過:その世界の名カルアディア

ここだけ過去の話です。

その世界は長く苦しい戦いに疲弊しきっていた。


七つの国家が争い合い、五つの海のうち、三つが枯れ果て焦土と化した。


それでも人々は他者を信じる事もできず、最も強大だった国家ムスペルヘイムが周辺諸国に放った和平の使者がまともに相手をされることも、ついになかったのだ。


「偉大なる王スルト。ベルク=エンヴィヒカイト、ここに帰陣しました」


和平を果たせず国に帰ったことに胸を痛めながら、ベルクは城の玉座に座る王へと謁見する運びになった。


「……いや、お前はよくやってくれた。この国に殆ど人的被害が出なかったことは、ベルクの功績と多くが認めるところ。恥じることは何もない」


ベルクは跪き頭を下げたまま、目を閉じた。


ムスペルヘイムに被害者が出なかったのは、先に他国に対して多くの犠牲者を強いた結果だ。

その殺戮を認められても、それほど嬉しい訳ではなかった。


「仰ったように、敵対の意志を示した者は根絶やしにして参りました。

なにとぞ彼らから徴収した作物は、我らが国の民衆へと優先的に回して貰えればと願います」


国王スルトは少し考えたそぶりを見せた後、告げた。


「ならぬ。まずは国の守護に当たった騎士、民の反乱を防いだ貴族に褒美を与えねばならぬ」


ぴくりとベルクの眉が動いた。


「しかし王。そも民衆の反乱も、飢えがゆえ。

彼らは日々の糧のみを慎ましやかに望んでいるのです。そのささやかな願いに応えること、

この騎士ベルクの働きの対価としては下さいますまいか?」


王は言った。


「お前への褒美は、お前が、ましてや私が決めるものでもない。

これも貴族院の会議を通して決められること。出過ぎた口を聞くものではない」


その貴族どもが国を腐敗させ戦乱へと導いたのだ、とはベルクは言わなかった。


「……なに」


ベルクが国王スルトに投げつけた長方形の呪符は槍の姿を取り、スルトの胸を刺し貫いた。


「Burn,your life is finshed by fire.Bye」


ベルクが呪言を唱えると、王の身体に炎が燃え広がり、即座にその全身を灰と消した。


「これより騎士ベルク=エンヴィヒカイト、

国家ムスペルヘイムひいては世界カルアディア

すべてへの反逆者として王侯貴族すべての命を獲る!」


その言葉を玉座の間の人間が理解する前に、王城すべては燃え尽き爆発し、失われた。


ごうごうと燃える火の熱、燻る消炎の音だけが世界のすべてとなる。


そして一人生き残ったベルクは、王城があった場所からゆっくりと歩き始めた。


「いくらなんでも、やりすぎじゃないですか」


ベルクが声の元に視線を向けると、そこには青髪赤目が印象的な少女が、

瓦礫の上に座って両足を揺らしていた。


「どうして同じ人間を、ここまで粉微塵に?」


「知れたこと。同じ人間だからだ」


同族嫌悪って奴ですかね。少女は呟き、優雅な一礼をベルクに対し行った。


「私の名前はリヴァイアサン。嫉妬と羨望を司る大悪魔にして、この世界の戦乱の発端の一因」


ベルクが投げ放った呪符は、リヴァイアサンの胸元に届く前に燃え尽き、消えた。


「ちょっとちょっと喧嘩っ早すぎるのでは?

私が人心を操れば、戦争を終結させることも可能なんですけどね」


ベルクが放っていた呪符が剣の姿を取り、彼女の背中を袈裟斬りにした。


「……あれ?」


リヴァイアサンはうつ伏せに倒れた。


この世界が滅亡する、七日前の出来事である。


戦争がこじれる原因はいろいろあるみたいですね。

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