レイア十四歳。
ここからしばらくレイア編になります。
よろしくお願いします。
ミーシャって猫がいた。
わたしがまだ小さい頃の話で、おうちで産まれた子猫の一匹につけた名前。
クリーム色のもふもふで、とってもかわいくて。
わたしはその猫が何故かお気に入りだった。
その日もその子猫、ミーシャを連れ出しお庭で遊んでた。
風でふわっと飛んだわたしの白い帽子を追いかけ木に登っちゃったミーシャ。
まだ子猫なのにってすっごく心配でその子を追いかけ木に登ったわたしは、それが普段そんな事をしたことも無かったことに気がついて怖くなって。
下を見てしまったのがまずかった。
足がすくみ。手が動かなくなり。
そして身体中がガタガタと震えだしたかと思うとそのままその木から落ちたのだった。
気がついた時。あちこち痛くて。特に足が痛くて苦しくて。
もう泣き出しそうになった時。
金色に輝くミーシャがわたしを舐めてくれて。
彼女が舐めたところから痛みが引いた。
苦しかった、痛かった、そんなんだったのがすーっと楽になり、わたしはそのまま寝てしまった。
胸の上であったかい温もりを感じて気持ちよかったのだけ、覚えてる。
あの金色って、聖女さま?
小さい時何度も聞かされた。
お母様の従姉妹に物凄くチカラのある聖女さまがいたんだって。
金色に輝くその聖女さまのチカラはほんとう綺麗だったって、そうお母様何度もおとぎ話の様に話してくれたっけ。
金色に光り輝くミーシャはそんな聖女さまのイメージにぴったりだった。
わたしを助けてくれたのは、そんな金色聖女さまだってそう信じて。
聞いたらミーシャ、認めてくれた。
なんと心で話すこともできて。
わたしはますますそのミーシャが大好きになったのだ。
それからというものいっつも一緒に寝て一緒に遊んで。
あの時が一番楽しかったな。
魔法を教えてくれたのもミーシャだった。
今にして思えばあれはわたしの中から溢れる様になってしまったマナをコントロールする方法、ってことだったのだろうけど、それでもね。
おかげで今ではたぶん国随一の聖女候補って言われる始末。
ラギレスの再来、とまで言われて。
あるとき。
二晩連続で帰らなかった日があったミーシャ。
ねこだしね?
夜の猫集会とかもあるかもだしね?
そう思ってたけどちょっと心配で。
朝帰ってきたときはほんと嬉しくて。
でもミーシャ。
ちょっと何日か出かけてくるね、って。
すぐもどってくるからね、って。
そう言って出かけて行ってから。
それっきり帰って来なかった。
わたしの元に現れたのは、ミーシャじゃなくて、勇者、だった。
最初にわたしを見たその勇者さま、
ねえさん、と、そう呟いて固まった。
わたしも何故かその人初めて会うって気がしなかった、けど。
まあ、勇者さまだもんね?
どこかでお見かけすることだってあったかもしれないし。
勇者さま。わたしに金緑色に光る宝石をくれて。
ミーシャの形見だって、そう言った。
そのあとはもう泣きじゃくってしまって、勇者さまの話すことたぶん半分も聞こえていなかった。




