表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

幽霊

今日も今日とて二人は決闘。しかしうっかりで勇者ちゃんは亡くなります。弔って元気の無い魔王ちゃんの元に勇者ちゃんの幽霊が……

 今日も今日とて金髪碧眼の美少女勇者ちゃんと黒髪黒目の魔王ちゃんは闘いを始めていた。勇者ちゃんは魔王を倒して自分の欲望を形にする為に。魔王ちゃんはそれをあしらう為に。


 二人は長剣を構え振りかぶり。同時に突撃をかます。勇者ちゃんは上から下に目掛けて振り下ろす太刀筋で、魔王ちゃんは横一文字に斬り払う太刀筋。


 だが魔王ちゃんの太刀筋の方が一瞬早く。勇者ちゃんの首を切り落としてしまったのだ。


 呆気にとられた勇者ちゃんの顔のまま、首がぽろりと床に転げ落ち。血飛沫と共に身体が前に倒れた。


 魔王ちゃんもぽかんとなるが慌てて倒れた身体を起こすと。涙を流しながら必死で回復魔法をかけ続ける。


 ただし勇者ちゃんは蘇る事はなかった。


 ゆっくりと魔王ちゃんは彼女の遺体を抱えて立ち上がり謁見の間を出て外に進み。


 中庭にスコップで穴を掘り首と胴体が別れた遺体を丁寧に納めると。また土をかけて葬ってあげた。


 墓石代わりに木片を突き刺した時。乾いた風が削るように吹き抜ける。


 魔王ちゃんはしばらく俯いたまま、肩を震わせ泣きながら。勇者ちゃんを弔っていた……


 ◇◇◇


 その日勇者ちゃんは亡くなった。闘いの最中に命を落とした。もう……蘇らないのだ、と。ぼんやりとココアが入ったティーカップを眺めながら。魔王ちゃんはゆっくりと頭を振った。


 今日のチョコドーナツはとても苦いなと彼女はため息をつく。本当ならこんなおやつを食べれる余裕等は無いのだが……用意していた物を食べないのも悪いと無理やり食べていた。


 味を感じないドーナツを二つ目まで食べた頃。窓がいきなりガタガタと強く震え始めた。


 今日は嵐でもないのにと不思議そうに窓の外を見やる魔王ちゃん。


 窓の下には勇者ちゃんの墓があるのが見える。その墓は特に異常は無い……。


 だが。何と室内に生暖かい蒸気みたいな霧が満ちてきて。背筋がぞわりとなる魔王ちゃん。さらに風は吹かないのに窓が割れそうな様子で軋み続ける。


 気味が悪くなった瞬間、魔王ちゃんは背後に嫌な気配を感じて振り返る……。


 そこにはなんと。自分の首を小脇に抱えた勇者ちゃんが、ぼんやりと透けた半透明の姿で佇んでいたのだ。


 びっくりする魔王ちゃんとそれに気づいた勇者ちゃん。その瞬間、小脇に抱えられた勇者ちゃんの顔が白くなり、白目を剥いてケタケタと嗤いはじめ。


 何と長剣をふわりと浮かせて斬りかかって来たのだ。


 間一髪でかわし、魔王ちゃんは部屋から飛び出した。ちらりと後ろを振り返ると、そこには長剣と生首を浮かせてけらけらと嗤う勇者ちゃんがゆっくり追いかけて来ていた。どうやら勇者ちゃん、自分が殺された事に腹を立てて幽霊になって出てきたらしい……。


 すかさず長剣を引き抜き一足跳びに間合いを詰めて袈裟斬りを見舞う魔王ちゃん。しかし刃は霧を払うように手応えなく勇者ちゃんをすり抜ける。


 どうやら幽霊になったこいつには物理的な力は効かないらしいなと。魔王ちゃんは冷や汗をかいて後退る。それを見た勇者ちゃんはにたにたと長い舌を出して嗤いながら、魔王ちゃんを追い詰めようとにじり寄る。


 埒があかないと悟った魔王ちゃんは横に跳ぶとそのまま側転。不意を突いて扉から脱出した。背後からは外れた声音の高笑い。勇者ちゃんにはまだまだお遊びみたいなものなのだろう。事実念じただけで辺り一面のステンドグラスがひび割れ崩壊する姿が、それを物語っている。


 何とかしないといけないが打つ手が無い。必死に魔王ちゃんは逃げ、勇者ちゃんの幽霊から必死に攻撃をかわし、廊下を逃げ惑う。


 やがて魔王ちゃんは勇者ちゃんを埋葬した場所に追い詰められた。まずい。このままだと奴が来る。魔王ちゃんの額に冷や汗が流れる。今の勇者ちゃんに捕まれば自分も同じ幽霊になるだろう……。だが何とかしないといけないが打つ手が無い。


 そんな時、後退った魔王ちゃんの踵に勇者ちゃんの墓がぶつかる。


 瞬間。魔王ちゃんに閃きが走り、脳内の兎が花束を抱えて踊りだす。


 魔王ちゃんは急いで墓を掘り起こし、首と胴体が別れた勇者ちゃんを魔法で繋げた。


 だがそんな時。魔王ちゃんの背後に勇者ちゃんが迫る……!


 ゆっくりゆっくりと追い詰めるように近寄る勇者ちゃん。やがて間合いに入り、魔王ちゃんを亡き者にする為に半透明の大剣を振り上げ――


 その瞬間。身悶え始めた。


 その理由はただ一つ! 何と回復魔法を口に込めた魔王ちゃんが勇者ちゃんの唇同士を重ねていたからだ。


 思い切り回復魔法と息吹きと共に吹き込む魔王ちゃんとますます身悶えぶれてゆく勇者ちゃん。


 やがて幽霊の勇者ちゃんは消滅し、みるみる内に勇者ちゃんの身体に血の気が満ちる。


 そして目を開いた勇者ちゃんを見て。満面の笑顔で涙を流す魔王ちゃん。


 最初気がつかなかった勇者ちゃんは嬉しそうに泣きじゃくる魔王ちゃんを不思議そうに見ていて。


 だんだんと事の顛末を思い出し、わなわなと真っ赤な顔で震えると。


 大剣を振り上げ彼女に斬りかかる!


 魔王ちゃんはそれを簡単にかわすとあっさり逃走をする。


 耳まで真っ赤な顔で滅茶苦茶に大剣を振り回し追いかける勇者ちゃん。


 それをいつまでも。泣き笑顔で追いかけ回されている魔王ちゃんでしたとさ。

ここまで読んで頂いて誠にありがとうございました。また不定期に更新致しますね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ