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暗示

城下町の町興しの為に暗示術を練習している魔王ちゃんを見て、あんな力が欲しくなる勇者ちゃん仮初めの力を女神から貰うのだった

 金髪碧眼の美少女勇者ちゃんは。玉座の間に入る扉から魔王ちゃんを覗いて絶句していた。


 何故なら魔王ちゃん。離れた城下町を町興しする為に暗示術の練習をしていたからだ。


 黒髪黒目の魔王ちゃんの指先が揺れ動き、ゆっくりゆっくりと白亜の胸像に暗示をかけてゆく。


 やがて胸像の青年は自分を人間と思い込み。ぴょんぴょんと跳ね始めた。


 凄まじい、というか精神暗示の域を超えた精神暗示の力を前にして。勇者ちゃんは地団駄を踏んで悔しがる。あぁ自分もこんな力が有ったならと、うろちょろしながら壁を蹴っ飛ばし。手を組んで女神に祈る。


 そんな時光芒が差し込み。彼女の右手に女神の証である『翼ある太陽のアザ』が出てきたのだった。


 ◇◇◇


 何者かの気配を感じ、マントを『優雅に』翻す魔王ちゃん。とはいえ誰が来るなんて検討がつく。使用人達かはたまた――あの勇者だけだ。そして使用人は呼んでいないので来ない。と、すればあのお間抜け勇者ちゃんだけだ。魔王ちゃんは思う。今日という今日こそは面と向かって言ってやろう。いい加減貴様は勇者じゃなくて道化師に転職しろと。踵を鳴らして優雅に振り向き深呼吸して勇者ちゃん(多分)の方を向き、魔王ちゃんが指を突き立てようとした瞬間。


 嫌な予感がして飛び退いた。


 そこにはチンピラみたいにガラの悪い舌打ちをしつつ『乱暴にマントを翻す』勇者ちゃんが、右手の甲に『翼ある太陽のアザ』――女神の力の証を輝かせて立っていた。あの力……なるほど、自分と同じ強力な精神暗示かと魔王ちゃんは両目を塞ぐ。


 自分と同じレベルの精神暗示ならあの力は危険だ。魔王ちゃんは強烈な目眩に耐えながら唸る。さっき石像にやってみせた通り、自分の精神暗示は生命体だけでなく無機物にも暗示が出来る。それと同格なら厄介だろう。


 中々暗示がかからない事にやきもきした勇者ちゃん。ならば魔王ちゃんの代わりにと床の石畳を睨みつつ暗示をかける。瞳の中にはイバラの蔦が見えた。


 瞬間。石畳は瞳の中にあったイバラの蔦に変わり、檻のように魔王ちゃんを閉じ込めた。


 魔王ちゃんはちらりと何も無い空間を睨み、視線が重なる先に暗示をかける。瞳の中にはトンネルが見えた。


 そしてそこを出口にトンネルが開通され。魔王ちゃんは悠々と脱け出した。


 ぐぬぬぬぬ……と歯ぎしりして唸る勇者ちゃんはさらに魔王ちゃんの周りの空間に暗示をかけ、巨大な棺桶にしてしまう。


 すぐさま閉じ込められた魔王ちゃん。それを見て心底馬鹿にしたケタケタ笑いをし、勇者ちゃんは剣を振り上げると突撃する。


 しかし甘くはなかった。


 何と棺桶に覗き窓が出来て、そこから魔王ちゃんが黒い左目を見せつけていたからだ。宝石みたいな黒い瞳に樹木が映る。


 すぐに勇者ちゃんの動きが止まり、びしっ! と両手を天に向かって広げて直立不動。まさに樹木そのものだ。


 やれやれしばらく静かにしてろと。魔王ちゃんはうんざりため息をついて棺桶を蹴り破る。いい加減練習しておかないと本番が大変だ、町興しは失敗できないのだと魔王ちゃんは勇者ちゃんの隣を通り過ぎようとして。


 何と小さな熊のぬいぐるみになってしまった。地面に転がり落ちて横に倒れる熊ぬいぐるみ。そしてそれを見てケタケタ笑う勇者ちゃん。どうやら通過する一瞬で自分が熊のぬいぐるみだという暗示をかけてやったらしい。すぐさま自分にかけられた暗示を解いて、勇者ちゃんは小さな熊のぬいぐるみを蹴っ飛ばそうとして。蹴りつけた右足が途中から花束に変わってしまう。


 どうやら今度は魔王ちゃんが身体の一部が花束になる暗示をかけてきたらしい。


 やられた事に腹を立てた勇者ちゃん。次は瞳の中に蛇を宿して暗示をかける。

 

 もちろん魔王ちゃんだって負けていない。カマキリを瞳に宿して対抗する。さらに勇者ちゃんも対抗して狐を瞳に宿す。暗示合戦は様々な動物を宿し暗示をかけたり解除したり、実力が拮抗しあう。


 そして一瞬の隙をついて。勇者ちゃんが魔王ちゃんに自爆の暗示をかける事に成功する。轟音と爆煙を振り撒いて消え去る魔王ちゃんと少しだけ目が合った気がするが……気のせいだと勇者ちゃんは疑問を払う。


 そしてついに魔王ちゃんを仕留めた事に大喜びをし、右手のアザを眺めた。だってそうだろう、今まで魔王を倒そうとしてきたのは借り物の力を現実にしたかったからだ。これで願いが叶うはずと勇者ちゃんはウキウキだ。


 しかし。力が現実になる気配は全く無い。


 勇者ちゃんは首を傾げたがまぁ時間の問題だとマントを『優雅に』翻した。


 コツ……コツ……と、まるでこの城の主の如く静かに進み玉座に華麗に座り。傍らのテーブルにあるチョコドーナツを手にして一口噛り。ほぅ、と満足なため息をついた。


 チョコドーナツの繊細な甘さに満足して頬杖を突いた時。彼女の金髪が黒髪に、碧眼が黒目に変わり。背丈も少し縮む。


 そして服装も表情も、魔王ちゃんそのものになっていた。


 勇者ちゃんは気づいていなかった。ついさっき魔王ちゃんにしっかり暗示をかけられて、何と魔王ちゃん復活の為に肉体を改造されたという事実を。


 そのまま勇者ちゃんを生け贄に復活した魔王ちゃん。改めてチョコドーナツを満足そうに噛るのでしたとさ。

また近い内に更新いたします

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