神の力
女神から借りた力が思わぬ進化をしてしまった勇者ちゃん。魔王ちゃんは倒せるのか……?
黒髪黒目の美少女魔王ちゃん。今日はさすがに冷や汗が止まらない。何故なら相手の勇者ちゃんが女神から最悪に近い奇跡の力を借りてきやがったからだ。
崩れゆく玉座の間から逃げ出してとりあえず体勢を立て直そうと考える魔王ちゃん。
しかしそんな背後で瓦礫を吹き飛ばし。金髪碧眼の美少女勇者ちゃんがにやにや嗤いながらゆっくり追いかける。いつもと違って余裕があるのだろう。いつでもどうぞ? な強者の風格が張り付けたように見てとれる。
とりあえず勇者ちゃんに得意技の球電を叩き込む魔王ちゃん。ほぼ光速の最強技だ。
しかしそんな攻撃は勇者ちゃんにはまるで効果無し。球電がぶつかっても涼しい顔で立ち、周りの壁や床が破壊されてゆく。彼女の周りにある力場が完全に力を受け流していた。
勇者は憎たらしくあくびをしつつゆっくり魔王ちゃんを追い詰めてゆく。
◇◇◇
事の発端は勇者ちゃんが挑んできた、まぁおおむねいつも通りの日常から始まった。
今回は何やら女神様に『反射させる神の力』を与えられて意気揚々と挑んできたらしい。そして結果はもちろん、返り討ち。うんざりしながらもう帰れと手を振る魔王ちゃんを見て、勇者は悔しさのあまり泣いて床を叩きまくった。
その時幸か不幸か女神の気紛れか悪魔の企てか。何と女神の力の証である『翼ある太陽のアザ』が輝き、能力が進化したのだ……。
◇◇◇
そして。今に至る。
さすがに進化した神の力――アバスと呼ばれる能力を前に普通の魔法など小細工どころか子どもの遊びにしかならない。冷や汗をかきながら攻撃を叩き込み。
そしてかわす。
対する勇者ちゃんはにやにやしながら腕組みをし、ふてぶてしい態度でふんぞり返っている。
彼女の反射能力は進化して、『ダメージを別の存在に押し付ける』能力に変化していた。
今の彼女に攻撃は効かない。ありとあらゆる攻撃を別に押しつけて無効化しているのだ。
とはいえ自分も魔王。引く訳にはいかない。くるりと空中でバク転して距離を取りつつ呪文を詠唱。またしても球電を創り出す。
馬鹿の一つ覚えに心底舐めたため息をつく勇者ちゃん。そんな彼女には何も答えず、魔王ちゃんは静かに攻撃を繰り出した。
光速で飛んで来る球電をかわす気も無く受け止める勇者ちゃん。元々ダメージは床でも空中でも何にでも肩代わりさせれば良いのだから気が楽だ。球電がぶつかった瞬間、空中に肩代わりさせて勇者ちゃんは無効化した。バチバチと放電が走りステンドグラスを破壊した。
それだけ? と、勇者ちゃんは腰に手を当て完全に悪党な面構えだ。どんな攻撃を受けても余裕だからか、ちょっとムカつく顔になっている。
何とかしてあ奴を倒さなければなと、魔王ちゃんは親指の爪を噛んだ。とはいえ何か手段がある訳ではないが……。
そうこうしていると勇者ちゃん、飾り気の無い長剣を鞘から抜いて振り回してきた。なるほど待ち構えるのが面倒くさくなり自分から攻め込むつもりみたいだと、魔王ちゃんは納得し。彼女も魔力で精製した剣を右手に、左手には炎を宿す。
勇者ちゃんは全く気にしない。それはそうだろう。何せどんな魔法でも斬撃でもどこかに押しつけてしまえば良いのだから。
それでも魔王ちゃん。勇敢に挑んでゆく。まずは斬り込み。彼女に見える薄い結界のような力場に長剣を滑らせる。
ガンガンガンッッ!!
打ち合うものの効果はまるで無く、いい加減飽きたという風な勇者ちゃんが魔王ちゃんに向かってダメージを押し付ける。
魔王ちゃんはすかさず左手の炎を放ちつつ、迫り来るダメージの洪水を剣の一振でかき消した。
勇者ちゃんはかわす事無く炎を受け止めた。あんなちっこい卵みたいな炎、さっさとダメージを押しつけてしまえばおしまいだからだ。
ところがその炎、触れたと同時にゴオオオオッッ!! と燃え盛る炎の竜巻に変わったのだ。
勇者ちゃんが大慌てになった時にはもう遅く、炎はすっぽり勇者ちゃんを囲っていた。
しかもそれだけでは無い。何と炎の中から雷が迸り氷塊が現れ風が逆巻き光が刺さる。そう。これは一つの呪文で複数の魔法が使えるという、魔王ちゃんの呪文の一つだ。これを駆使して勇者ちゃんの神の力を力任せに突破しようというのが、魔王ちゃんの目論見だ。
馬鹿みたいだと嗤う勇者ちゃんだが鬱陶しい事には変わらないので、何とかしてダメージを押しつけようとする。しかし炎は再生を続けるばかりで手応えが無い。
頭に来た勇者ちゃんは一気に力を開放し、まとわりつく炎を壁や天井に押しつけた。炎は壁や柱を溶かし、城の支えを失わせてゆく。
そして天井にあったシャンデリアの鎖が溶けて。勇者ちゃんに頭から落っこちた。
突き出すように、勇者ちゃんの血塗れの腕が砕けたシャンデリアから覗く。
最初はぽかんとしていた魔王ちゃんだが青ざめて。涙目でシャンデリアを必死にどかしていましたとさ。
続きはまた近い内に執筆いたしますね