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火炎魔法

今日も全力勝負に来た勇者ちゃん。しかし自分より魔法が上手な魔王ちゃんの姿を見て……?

 金髪碧眼の美少女勇者ちゃん、今日はとってもご機嫌に魔王ちゃんの玉座の間へと向かっていた。


 何故なら今日、勇者ちゃんは女神さまに頼んで『自在に操れる火炎魔法』を仮入手したのだ。


 ……ここだけの話、勇者ちゃんは魔法がド下手くそ。上手く使えた事なんて一回も無いのだ。だからこの力を現実の物にすれば、自分は魔法を扱える。それを知った彼女はウキウキだ。


 くるくる回転しながらスキップ。鼻歌交じりに女神の印である『翼ある太陽のアザ』が刻まれた右手を見つつ進む彼女の前には壮麗な玉座の間の扉が現れた。いつもの扉、いつもの場所。彼女にとっては馴染みの場所。彼女は勢い良く扉を両手で満面のにやけ面を中に叩き込む。さっそくこの力を魔王ちゃんに見せつけて、神の力を我が物にしようとこの時まで思っていた。


 ……そう。玉座の間の魔王ちゃんが、自分より上手く火炎の魔法を使っている処を見るまでは。


 ◇◇◇


 黒髪黒目の魔王ちゃんがチョコドーナツを食べながら魔法を使っている姿を見た瞬間。勇者ちゃんの火炎魔法がどす黒く染まった。何故なら彼女は女神から力を借りた自分より上手く魔法を操っていたからだ。


 くるくると魔王ちゃんの手のひらから飛び立つ炎はまるで生きているかのように華麗に動き、何と不死鳥に変わると彼女の肩に鎮座する。


 まさに奇跡の技だと、自分が女神から借りた奇跡でやっと炎を制御しているのを見ているとそう思う勇者ちゃんだ。相手は自分より上手い。それを痛感する。


 そうすると彼女の周りに燃え上がる炎が一段と勢いとどす黒さが増してゆく。


 ふとその瞬間魔王ちゃんが勇者ちゃんに気づいて――絶句した後、即座に飛び退いた。


 何故なら勇者ちゃん。凄く嫌みったらしいにんまり笑顔で揉み手しながら近寄って来たからだ。


 その気色悪さに怯えつつ後退る魔王ちゃん。そんな彼女に対して勇者ちゃんは人差し指を立てた。なるほど、どうやら魔法の勝負がしたいらしいと魔王ちゃんは納得した。


 彼女が後ろを向いて冷や汗を拭っている背後では。勇者ちゃんが悪そうな笑顔で笑っていた。


 ◇◇◇


 勇者と始まった魔法勝負。内容は交互に魔法を使いどちらがうまく炎を扱うかというシンプルな勝負だ。


 魔王ちゃんは魔法に自信があるので余裕である。


 ……対する勇者ちゃんは。良からぬ事をしているのか、魔王ちゃんにバレないよう何かゴソゴソしていた。


 それに気づいて半眼になる魔王ちゃんと勘が良く慌てて振り向く勇者ちゃん。魔王ちゃんはまぁいいかと腕組みをした。


 最初は魔王ちゃん。先ほどの炎より小さな火球を幾つも出して周りに浮かべ、ぐるぐると回して混ぜるとまたさっきの不死鳥に変え謁見の間の中を飛び回らせた。


 それを見て勇者ちゃんはワンパターンだという風に嗤う。それを見た魔王ちゃんは不機嫌に勇者ちゃんを睨む。勇者ちゃんは指を振って鳴らすと、何と部屋中にダイナマイトを投げ散らかしたのだ。


 ぽかんと口を開いく魔王ちゃんとにまにま嗤いつつ両腕を広げる勇者ちゃん。なるほど、この中でダイナマイトを爆発させないように炎魔法を使えという訳だ。


 心底くだらんと呆れる魔王ちゃん。何せこの炎は魔法の炎。自在に動かせれば燃焼も自由。そんな炎がこんなしょぼい邪魔ごときでどうにかなるようなものでは無い。魔王ちゃんはお望み通りと不死鳥を出して周りを回らせる。当然床のダイナマイトには点火しない。


 それを見た勇者ちゃんはギリギリと悔し泣き。更にダイナマイトを不死鳥に投げつける。


 ますます呆れたと魔王ちゃんは燃える不死鳥を操りひらひらかわしてゆく。ポイポイと勇者ちゃんが連続で投げつけるダイナマイトにはかすりもしない。


 やがて翼を回して上昇し、翼を羽ばたかせ火の粉を撒き散らしながら死鳥は彼女の肩に乗ったのだ。


 その様子にぐぐぐ……っと歯ぎしりする勇者ちゃん。悔しさの炎に自分の身が焼かれてゆく。メラメラと炎が後ろに浮かんで――何と本物の炎が出ていた。


 そして炎は。落ちていたダイナマイトに点火した。


 ジジジジッッ! と導火線を伝う火を見てハタと我に返ると、二人は顔を青ざめさせた。


 二人は脱出の為に大慌てで走る。


 しかし無慈悲にもダイナマイトは爆発を起こし、他に散らばっていたダイナマイトにも誘爆して部屋を吹き飛ばす大爆発を巻き起こす。


 爆風でステンドグラスから叩き出された勇者ちゃんと魔王ちゃん。煤けた顔にぼろぼろの服でまさに満身創痍だったが……。


 何と二人の間に点火したダイナマイトが飛んで来たのだ。


 きょとんとなってお互いを見やる二人。


 そして無情にもダイナマイトは二人の間で大爆発を起こす。大きな花火のような爆発はどこか風情があって良い光景だった。


 二人は真っ赤な大爆発の中で打ち上げられて宙を舞い、そのまま地面へと叩きつけられた。


 勇者ちゃんは地面に頭から刺さって下半身だけ出して、魔王ちゃんは岩にお腹から叩きつけられて頭から血を流し虚ろな表情だ。


 やがて力尽きたのか、魔王ちゃんもパタンと顔を地面に落としましたとさ。

また不定期に更新します

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