表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

WORLD 1-3  能力の代償はつらいよ

サマルトロ王国編、ここから本格スタートです。

 フォレストボアーを倒し、自分の力を自覚した後。

 そこから俺が同じ道を辿り、最初に行こうとしていた城にたどり着くのは造作もないことだった。

 一度目はモンスターに出くわさないようにわざわざ回り道をしたり隠れたりしていたが『ジャンプし敵を踏みつければ一撃で倒せる』という“ある意味チート能力”を知ってからはまずそんなことをする必要はなくなる。

当初はRPGらしさが無くなっている事に不満を感じていたが、思いの外敵を倒していくのが楽しくなり、さらにどんな敵でも自分には敵わないという優越感から、

「ここから俺の異世界無双がはじまるぜぇー!!」

 と調子に乗って前回城壁を拝むだけで終わった大きな城を目指し、俺は疲労を感じない身体で平原を猛ダッシュしていた。 



 ゲームの世界で『走っても疲労を感じない』というのは最早デフォルトではない。

 《ブレクエ》では3DアクションRPGになった《ブレクエⅨ》から、シリーズ一貫してプレイヤーキャラに『体力ゲージ』が設定されている。

『体力ゲージ』とは、歩く、通常戦闘コマンド「たたかう」などの通常アクションでは変化しないが、走る、ジャンプ、特殊技を繰り出す時など、身体を激しく動かすアクションを行う際に減少し、メーターを振り切るとプレイヤーキャラはバテてしまい強制的に動きが遅くなる。

『体力ゲージ』の持続時間を延ばすための強化素材を集めるのもこのゲームの醍醐味であるため、ブレクエマニアの俺はすぐにこの無尽蔵の体力をおかしいと感じたという訳だ。

 もっとも、現実リアルとなったブレクエ世界にそんな要素があるのかは分からないが。




『サマルトロ王国』

 俺が目指していた街にはこのような名前がつけられていた。

街を囲む堀と大きな城壁を廻り、跳ね橋が下げられた門から中に入ると、活気のある人々の声が聞こえてくる。

「おおおおおお! すげぇ!」

 入ってみると、城下町は多くの人々で大通りが埋め尽くされていた。

 ここで俺の頭を一瞬よぎったのはこの世界の人々の言語はどうなっているのか、ということだったが、その心配はすぐに杞憂に終わった。

 立ち話をしている30代ほどの2人の冒険者からは、

「おい知ってるかぁ? 今フォレストボアーが大量発生してるらしいぞ」

「まじかよ? 討伐以来は勘弁だなぁ。あいつらと戦って勝った試しがねえもんでよぅ」

「ああ俺もだ。ああいうのはどっかの強えー奴らに任せるのが一番だぜ」

 と、どこか聞き覚えのあるモンスターの話からは慣れ親しんだ日本語が聞こえてきたし、すぐそばにある建物には『クエストセンター』という、これまた慣れ親しんだカタカナが書かれた看板が張られていた。ひとまずコミュニケーションの心配はないだろう。

 胸をなで下ろし、折角なので観光でもしようかと思ったその時、


 グゥゥゥゥゥ……

「……とりあえず、腹減ったな……」

 腹部から鈍い音が鳴り響き、俺は朝から何も食べていないことに気付いた。

 俺の身体は走っても疲れないが、腹は減るらしい。

 太陽はほぼ真上に位置しており、今は丁度お昼時だ。俺の体内時計はらどけいから考えるにこの世界の時刻はどうやら蓮の世界とリンクしているらしく、朝方に異世界転移したことを考えるとかれこれ5時間以上が経過しているということになる。

 ふと現実世界では今家族は何をしているのだろうと考えたが、それよりも今はココで生き延びることが先決。

 ひとまず家への恋しさを振り切る。

 しかし俺には生き延びる上で重大な問題があった。

(今腹ごしらえしたいところなんだけどなぁ……できないんだよなー)

 理由は簡単。お金が無いからだ。

 今まで敵を踏み倒してここまでやってきた訳だが、この敵の倒し方には2つのデメリットが存在する。

 それは


・倒した後、お金やアイテムをドロップしない

・経験値が得られない。よってレベル上げは不可能。


この2点だ。

 経験値が得られないのはまだいいが、お金が手に入らないのはある意味致命的と言える。

「んーと……ノベル的な展開でよくあるのは、何か自分の持ち物を高く売ることなんだけどー……」

 そう言いながら俺は自分の身体を確認するが、

「服……と靴……だけ! 他はナッシング!」

 目利きの商人でもいればこれらも売れるのかもしれないが、そう簡単に出会えるはずがなく、商人を探しているうちに日が暮れては元も子もない。さらにTシャツも結構気に入っているやつなので出来れば手放したくない。

「別の方法で稼がにゃならん……とすると手っ取り早いのはアレだな」

 再び俺は、周囲の建物よりも一回り大きく佇む『クエストセンター』の文字に目を向けて歩き出す。



『クエストセンター』

 その名の通りRPGの代名詞とも言えるクエストを扱う機関ギルドである。

 この機関が行うのは依頼者と冒険者の仲立ちで、仕組みはいたってシンプル。

 街の住人などの依頼者が仕事クエストをクエストセンターに依頼し、報酬を設定。するとセンター内の掲示板に依頼内容が公開され、冒険者がその仕事クエストを受ける。

 冒険者が仕事クエストに成功すると設定された報酬の8割が冒険者の手に、2割はセンターが仲立ち料として受け取るという仕組みだ。

 クエストの種類は依頼者によって異なるが、モンスター討伐、アイテム収集、人探しからペット探しまで多様なクエストがある。

 なお、ここで受けられるクエストは本編のストーリーとは異なり、あくまで外伝的なものだ。



 クエストセンターの数あるクエストの中から俺にも可能なものを選び出し、報酬金をもらうのが最も早くお金を手に入れられると考え、

「昼飯は我慢するにしても……最悪今日の宿代と夕食代は稼ぐ!」

 空腹を我慢し、俺は勇んでクエストセンターの扉を開けた。


ルビの振り方をやっと習得したので使ってみました。


これまでの話にもおかしな所にルビが振られていたので修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ