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WORLD 1-8  マ○オは金を使わない

今回はいつもより長めです。


内容を変更してオチをしっかりさせました。

「それでは、こちらが今回のクエスト達成報酬になります」

 係員から俺に大きな袋が手渡される。

ジャラジャラという音がするその袋を前に、俺は少し微笑むと、

「どうも。お疲れ様です」

 今の俺が出せる最高にクールな声でソレを受け取った。

 キマった……。

 俺はもう笑い出したくなるのを必死でこらえ、それでもつり上がってしまう両頬を口で押さえながら窓口を後にする。

「レン、そっちも用は済んだかい?」

「はい。お陰様で報酬を頂いて参った次第でございます」

「いきなり口調が変わったね君。あと言葉遣いおかしいけど」

 それは仕方ない。

 俺が受け取った額は1,000ゴールド硬貨40枚、つまり40,000ゴールドだ。

 そりゃ口調くらい変わるだろう。


 バイト禁止の高校に通っていたため、稼ぎというものをやったことがなかった俺。

 ですがひょんな事から異世界転移し、異世界生活1日目にして人生初のバイトをしました。

 半日モンスター退治のお仕事をして、そのお給金の方はなんと! 40,000ゴールド!

 さあ、貴方も一稼ぎ! 


 どこの胡散臭いネット広告だよとツッコミを入れたくなるが、本当マジです。

 この世界の通貨単位『ゴールド』は、現在の日本円に換算すると「1ゴールド=100円」となる。

 これはブレクエ公式サイトに公開された裏設定で、マニアの間では結構有名だ。

 正直に言うとこんな情報何の役に立つんだよと思っていたのだが、なんと役に立つ時が来てしまった。

 つまり俺は、この世界に来て1日目で400万円相当のお金を手にしたということだ。

 すげぇ。凄すぎて実感湧かねぇ。

 クエストの帰り道ユーリに聞いたところ、この街の宿屋は1日200ゴールド程で泊まれるらしい。この額なら守銭奴ユーリからの借金を差し引いても、かなりの期間は屋根の下で寝られそうだ。


「いやぁ~、一時はどうなることかと思ったけど、無事一稼ぎできたわ! 色々ありがとな!」

 そう言いながら俺はユーリの肩をバンバン叩く。

「あはは、痛い痛い……いや痛くない? とにかく良かったね。……そういえば聞いてなかったけど、君が倒したフォレストボアーの数は?」

「おいおい、この期に及んでまだ俺からタカろうっての?」

「いや違うけど、ちょっと気になって」

 討伐数から報酬額が分かってしまうので教えるのは少し不安だが、今の俺は気分が良い。特別に教えてやらんこともない。

「聞いて驚け、俺の討伐数は80だ! 倒すのは簡単つっても、どんどん襲ってくるから対処が難しくてなー。まあ俺にかかればあんな奴ら、全然敵じゃなかったけどな!」

 鼻高々に語る俺に、ユーリは何故か浮かない顔でただ一言。

「……そうか」

「?」

「いや、なんでもないよ。それよりレン、今晩の宿は決まっていないんだったね? 良かったらボクの知り合いが営んでいる、良い宿屋を紹介するよ」

「へぇ~、お前やっぱり顔が広いんだな。なら頼む」

「任せてくれ。それから、折角同じクエストを受けた仲だ。一緒に打ち上げでもしないか? 今回こそはボクの奢りだ」

「おっ、おお! 今度こそ奢ってくれるのか!? じゃあお言葉に甘えて!」

 俺はコイツの事を誤解していたのかもしれない。

 いきなり異世界に跳ばされた挙げ句、金なし、力なしの状態だったので少し過敏になっていたのだろう。守銭奴と言って馬鹿にしていた。

 最初の印象こそあまり良くなかったものの、コイツもなかなか良い奴なのかもしれない。

 

 そう思って、まず俺はユーリから借りたお金を返そうと、先ほど受け取った袋に手を入れ、


[チャリーン]


 その途端、変な音がして俺は手を止めた。

 確かに一瞬、俺は袋の中の硬貨に触ったのだが、変な音と同時に硬貨の感触が突然消えた。

 手をすり抜けたのかなと思い、硬貨をごそっとわしづかみにしようとすると、


[[[[[[[[チャリーン]]]]]]]]


 ……やはり音と同時に硬貨の感触が消えた。何故か今度は音が重なって聞こえる。

 さらに、さっきは気付かなかったが俺の頭上に、


[40COINs]


 という文字が浮かび上がっている事に気がついた。

 俺の手には、中身が空になって軽くなった袋。

 

 数秒後、その文字ははまるで空気に溶け込むように消えていったが、俺はその光景をただ呆然と見つめる事しか出来なかった。

 そして……そして全てを理解した。理解してしまった。

 コインて……まさかこれは……。


「……えっと、君の頭の上に出てきた文字はなんだ? それにおかしな音も……」

「聞くなああああああああ!!」

「……えっ?」

 突然叫びだした俺を前に、今度はユーリが呆然とする番だった。

 驚かせて悪いとは思ったが、今はそれどころではない。

「なんでだよおおおお!? なんで今日汗水垂らして働いて必死の思いで得た報酬に触れねぇんだよおおおおお!! 夢、幻の如くなりってか!? いやこれ夢じゃねぇじゃん! めっちゃ現実リアルじゃん!! れた途端にチャリーンとかふざけんなよおおおお!!」

 もう日も暮れ、遅い時間ではあるがクエストセンターにも人はいる。

 沢山の視線を感じながら、俺はしばらくツッコんでいた。



 一通りツッコんだ後。俺は落ち着きを取り戻すと、視線を沢山浴びたことの気恥ずかしさも相まって、

「スマン、少し1人にしてくれ……」

 と、ショックから立ち直れない俺は待合室の椅子に腰掛けてじっとしていることにした。



 『お金』

 人類が文明を発展させていくうちに出来た、現在いまを生きる人間にとってとても重要なシステムである。お金が誕生する以前、それまで行われてきたのは物々交換という方法で……と、わざわざ説明するまでもないだろう。

 人間が日々の生活を営む上で、必要不可欠のものだ。

 もちろんゲームの世界であるこの『ブレクエ』でもそれは同じ。

 しかしだ。

 同じゲームでも、お金の使われ方が全く違うものがある。

 というより、お金の形はしているが『お金』本来の使われ方はしないゲームがある。

 アクションゲームである。


 アクションゲームというものが誕生したのは、俺のおよそ2世代も前。

 そのゲームには『残機』と呼ばれるシステムがあった。つまりコンティニューの残り回数のことだ。

 RPGのようにセーブして続きからやり直すことが出来ないため、アクションゲームでは残機はゲームを続けるには重要なものだった。

 そして、その残機を増やす方法がいくつか存在する。

 その一つが「ステージに散りばめられたアイテムを一定の数集める」というもの。

 殆どのアクションゲームはアイテムを集める数を100個に設定している。

「3桁にも及ぶ数のアイテムを集めて残機を1つ増やす」というのは途方もないように聞こえるが、実際は全くといっていいほど苦を感じない。

 それどころか「そのアイテムを集めなければならない」という使命感すら覚えるようになっている。

 なぜなら、それはお金の形をしているからだ。


 おわかりいただけただろうか。

 つまり、アクションゲームのお金は「お金だから集める」のではなく「集めるからお金」なのだ。

 お金以外の物が採用される例もあるが、それらに総じて言えるのは「プレイヤーが集めたくなるような形を取っている」こと。

 アイテムとしての効果を重視するため、実際はその形である意味はない。



 そして俺は何故か、アクションゲームの主人公の能力を得ている。

 硬貨に触れると消滅し、収集アイテムとして消化されてしまうのも分からなくはない。

 こうなることは予測すら出来なかったものの、納得はできてしまう自分が嫌だ。

 

 そんなこんなで落ち込んでいると、ユーリが俺の所にやってきた。

「……えと、君も色々大変なんだなって事は分かった。分かったけど、ひとまず夕食にしないか? ガルも外に待たせてるし、今日は疲れたろう?」

 なんて優しい奴なんだろう。目頭が熱くなってきた。

 俺はやはりコイツに対して間違った印象を持っていたようだ。

「ああ……そうだな。こんな所で落ち込んでても仕方ないよな。…………うし! じゃあお前の奢りでたんまり食わせて貰うぞ!」

「そう! その意気だ! あっ、君がボクから借りたお金、利子が付くのは忘れずにね?」

「立ち直ろうとしている時にその発言はやめろよおおおおおお!!」

 前言大撤回。

 やっぱりコイツ金の事しか考えてねぇ。

これにて第1章は終わりとなります。

第2章は書き溜めしてからアップする予定なので暫く間が空きそうです。


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