こんにちは世界
…………………………
っ…………!
目を閉じていることに気付き、思わず目を開ける。
眠ってしまっていたのか……? この俺が?
ありえん。俺――堂哲也は徹夜が趣味の男だ。寝るのは週に1回だけ。そんな俺がたった二徹で寝るはずが……。え、ちょっと待て。
視界に違和感を感じ、周りを見渡す。
「どこだ……? ここ……」
思わず声をあげる。
そこには何もなかった。見渡す限り一面白の世界。
例えるなら、そう、某龍の球に出てくる24時間が一年に相当する部屋のようだ。
……
……謎の空間に時を忘れて立ち尽くしていた。
こんなことをしている場合ではない。どうにかしてここを脱出できないだろうか。少し探索してみよう。
探索しはじめて約1時間は経っただろうか。代わり映えのない空間に飽き飽きしてきた頃、この白の空間に異色のものがあった。
看板だ。RPG等でよく見る、木製の。
何らかのメッセージが日本語で記されているようなので、読んでみる。
「あなたは 。こ から出る は、身を ねれば い。目 閉じ んだ。 、 こは 獄だ。希 はな 」
所々文字がかすれていて読み辛い。
いまいち読み解けないが、恐らく「こ から出る は、」は「ここから出るには、」だろう。「目 閉じ んだ」っていうのは「目を閉じるんだ」と考えられる。
つまりここから脱出するには目を閉じればいいのか?
他の文言にも何か重要なメッセージが含まれているのかもしれないが、よく分からない。
どちらにせよ、俺がするべき行動は「目を閉じる」しかなさそうだ。
力強く目を瞑る。すると、俺の意識は闇へと沈んだ。
一瞬とも永劫ともとれるような意識喪失の後、地に足が着くのを感じた。周りからは人々の慌ただしい話し声が聞こえるような気がする。
目を開けると、そこは街の中。人も建物もどことなく西欧風だ。ここはどこだろう。
キョロキョロと辺りを見渡していると、日本語で声を掛けられた。
「なぁそこのあんちゃん、金出せや」
なんて直接的な。いかにも小物の雰囲気を醸し出しているチンピラだ。俺と同じような日本人に出会えて少し安心した。しかしどうして俺に声を掛けたのだろう。観光客か何かだと思われたか?
「だんまりかい。さっさと金出さねえと……、ぶち殺すぞ」
野獣のような眼光で睨まれる。
参ったな。俺はこういう手合いに絡まれたのは初めてだ。しかも着の身着のまま飛ばされたので、金など持ち合わせていない。ここはあえて従順に……
「分かった分かった。金を渡すから勘弁してくれ」
「物分かりがいいじゃあねえか。」
無論嘘だ。相手を油断させて先制攻撃をとるという手法だ。
予想通り、殺気立っていた奴の体が弛緩している。
「オラァ!」
隙だらけな奴の腹に向けて渾身の一撃を叩き込む。
「ひでぶ!」
ドゴッと鈍い音が響いた後、奴の体が爆散した。
血肉が四方八方に飛び散り、俺の体にもかかる。
辺りの住人たちは叫び声をあげた後、一目散に逃げていった。
……え?
予想外の展開に固まる。
まるで「FINISH HIM!」と言われ「FATALITY」なコマンドを入力したときのようなことがまさか起きるとは予想だにしていなかった。
そんなに脆い体だったのか?
いや違う、拳を叩き込んだ時に感じたのは普通の人間程度の質量だった。
一体どういうことなんだ……?
現実が受け入れられず狼狽していると、突然後方から声が響いた。
「暴力行為発見! 直ちに処刑場に連行します!」
処刑場……? やばい、早くここから逃げ――――
後方の奴に背を向け走り出そうと試みたが、体が動かない。
その場に崩れ落ちる。
そしてだんだんと思考が停止していく。意識が朦朧とする。
意識が完全に落ちる寸前に感じたのは、何者かに担がれ、運ばれている感覚だった。




