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オカルト探偵部~~都市伝説・迷い森の人魚を探せ!~~

作者: 鬼灯

大学の文芸部にて書いた小説です。

Pixivとエブリスタにも掲載しています!

 桜咲く季節が過ぎ去り、ジメッとした暑い初夏に変わる頃、俺の幼馴染その1、綾瀬(あやせ) (せん)が声を高らかに言う。

「我ら、オカルト探偵部設立を祝して第一回都市伝説探索企画を開催するわ! みんな面白い都市伝説は持ってきた?」

「ふふ、もちろんですよ~。部長」

「当然だろ! 僕のとっておきをお見舞いさせてやるよ」

 お手製のミイラの髪飾りを付けた幼馴染その2の副部長の木乃(きの) 麻美(まみ)とテンションの高いメガネの幼馴染その3の広瀬(ひろせ) 理人(りひと)が目を輝かせながら言うなか、俺は冷めた目で言った。

「出来上がったばっかなのに、いつの間にそんな企画立てたんだ? 俺、初耳なんだけど」

 俺の発言に幼馴染達は揃って目を丸くした。

「えっ!? ハルくん、都市伝説をリサーチしなかったの?」

御門(みかど)くん、オカ探部部員ともあろうものが初日でやってこないとはどういう了見なの?」

「やれやれ、(しゅん)。キミは一体何のために入ったんだい?」

「お前らトリプル災害を止める為に決まってんだろ」

 麻美の驚く声と千と理人が呆れながら言った言葉に俺が辛辣に言い放つと各々自覚なしにふざけたことを抜かす。

「ヒド~イ」

「私達のどこが災害なのよ?」

「優等生な僕らを問題児扱いするなよ」

 寝言は寝て言え、超問題児ども。教師や他の生徒に恐怖(トラウマ)を植え付けた前科のあるお前らを野放しにできるか!! 俺は氷のような目で奴らに言った。

「気に食わないって理由で藁人形を使って呪っていたオカルト馬鹿部長とミイラについて熱く語るあまりクラスメイトをミイラにしようとしたミイラ馬鹿とお手製の薬で人体実験しようとした科学馬鹿メガネのどこが問題児にならないと思ったんだ?」

 俺の言葉に麻美と理人は動揺し、千は開き直った態度をしながら言う。

「あ、あの時は調子に乗っちゃって……。反省してるから~掘り起こさないでよ~」

「あの時は仕方がなかったんだ! 出来のいい薬が完成してテンションが上がって仕舞って……。人で試したくなるのが科学者の性だろう!!」

「聞き分けのない奴を呪って何が悪いのよ。私のかわいいコレクションの呪い人形達を黙ってお寺や神社に供養しただけでなく、もう集めるなって言われたら呪いたくもなるでしょ?」

 麻美(まみ)は軽い口調ながらも反省しているからいいとして、そこのメガネと呪術馬鹿。少しは反省しろや。

 理人、第一テメェは科学者じゃねえし、素人が得体の知れない薬を作るな、試すな。試すんならテメェで試せ。他人を巻き込むな。そして千、それは先生に同意だわ! それらを供養して貰ってむしろ感謝しかねえよ。お前の趣味は洒落になんねぇから、もう集めんな。マジで!!

 まあ、こんなこと思っても治らないし、もう諦めた。

 ストレスで胃に穴が開くわ、吐血するわ、の大惨事に慣れてしまった俺が悲しい……。俺は深い溜息を吐きながら言った。

「はぁ……。これ以上問題を起こすなよ。お前らのお陰で胃薬が手放せなくなった俺の気にもなってくれ」

「キミ、そんな胃が弱かったっけ?」

「大丈夫~? ミイラの粉末あげるよ~」

「まったく、健康管理がなってないわよ」

 自覚がないのかよ!? ストレスの元凶ども。

 胃をキリキリさせながら俺は話題の修正に取り掛かった。

「で、お前らの持ってきた都市伝説とやらを話さないのか?」

 三人ともハッとした表情になり、口々に俺に責任転嫁しやがった。

「おっと、そうだったな。(しゅん)の所為で忘れてた!」

「そうね。御門くんの所為で本題を忘れるところだったわ」

「わたしも~、ハルくんのお陰ですっかり忘れてたよ~」

「なに、人の所為にしてんだ!! 問題児ども! まったく聞かされてなかった俺に非はねえ!」

 いいからさっさと始めろや! 話しが全然進まねえだろ! 

今にも血管が切れるんじゃないかと思いながら、都市伝説を三人に促した。

 トップバッターは部長である千から発表が始まった。

「私が調べた都市伝説はね、『コトリバコ』というものよ。詳しく話すと長くなるから簡単に説明すると、『コトリバコ』は明治初期の隠岐騒動によって逃げてきたある人物が逃げた先で迫害を受けていたとある部落と契約し、作成されたとされる子孫を絶やす事ができる呪いの箱よ!」

 そうだろうと思ったよ。つか、嫌な予感しかなかったわ!!

身体に悪寒がはしった途端、呪術馬鹿のスイッチが入り、知りたくもないその呪いの箱とやらの製法について語り出しやがった。

「見た目は木を複雑に組み合わせたパズルのようなもので、その中に動物の雌の血を満たし一週間おいたあとに『間引いた子供』の一部を入れるそうよ。ちなみにコトリバコを作る子供の数が多ければ多いほど強力で、制作者自身も呪われるほどの破壊級の強さを持っているわ。で、それが島根県あたりにあるらしいからみんなで探索に行きましょう!」

 行きましょう!じゃねえ!! イキイキとした表情でなに恐ろしい事を言ってんだ!?

「行くわけねえだろ!! ボケ! そんな危険なモノがある場所に俺達を巻き込むな!! そして行くなんて馬鹿か!!」

 俺がブチ切れると、千は何故か誇らしげに答えた。

「安心しなさい、私の方(呪い)が強いわ!」

「どこが!? ドヤ顔で自信満々に言ってるけど、安全の保障がどこにもねえじゃねぇか!」

 全力で拒否すると、麻美も理人も『コトリバコ』はヤバすぎると思ったようで俺に同意してくれた。そのお陰で千の企画は却下された。

千は不満げだったがな……。

「フッフフ、次は僕の番だな。僕のとっておきの企画をキミ達、しっかり聞いてくれよ!」

 メガネをキラリと光らせて怪しげな笑いを立てる理人に冷ややかな目で尋ねた。

「まさかと思うが、チュパカブラやイエティと云った世界中のUMAを探そうなんてことを言うつもりじゃあねえよな?」

「何故分かった!?」

 図星かよ!? てか、UMAは都市伝説に入るのか!? 

 自分の企画を却下されたためか、ムスッとした顔で理人に言った。

「UMAは都市伝説ではないし、広瀬くんのは却下ね」

「なに!? UMAは都市伝説に入らないのか!? くっ、僕としたことが!! せっかくキミ達をエサに捕獲しようと思っていたのになあ。最低でも二十年掛けてでもやろうと思っていたのに!」

「てめぇだけ行って、UMAの餌食にされろ」

 アホな事をほざいた科学馬鹿の企画も却下され、エジプト大好き、ミイラ大好きお嬢様の麻美(まみ)が最後に発表しだした。

「わたしが最後だね~。じゃあ、発表するよ~。わたしが調べたのはね、みんなも知っている伝説、ここの近くにある『迷い森の人魚』についてだよ~」

「ここの住人なら誰でも知っている人魚伝説じゃん! 都市伝説どこいった!?」

 理人に続いて麻美まで企画と離れた内容に俺が突っ込むと麻美はよくぞ聞いてくれたという笑みで答え始めた。

「たしかに、誰でも知っている人魚伝説なんだけど~。実は都市伝説でもあったんだよ~」

「ほう。それは興味深いな……」

「木乃さん、詳しく聞かせてくれるかしら?」

 興味津々な二人のようすに、どこから出したのかエジプトのミイラの棺桶を机の上に置いた。そして棺桶から人魚のミイラを取り出した。

 ちょっと待て。いろいろと突っ込ませろ。なんでエジプト産の棺桶から人魚のミイラが出てくるんだよ! つうか、よく入ったな!? 形からして入らないだろ! てか、その棺桶から放出されているまがまがしい気はなんだ!? 目がギョロギョロ動いてるし、なんかブツブツ言ってるし!!

《〝アアアァァァ……、呪ってやるぅぅぅ……》

 うおおい!! 呪ってやるとか言ってんぞ!? お前らなんでスルー出来るんだよ!!

「えへへへ、よく出来てるでしょ~? ツタンカーメンの棺桶のレプリカ~」

「これレプリカなのか!? 本家の呪われたやつじゃなくて!? レプリカまで呪いのアイテムと化してんのはなんでだ!!」

「そんなことより、人魚の説明をしてくれよ」

「どういう経緯で手に入れたの?」

 おい、ゴラ、無視か。俺の突っ込みに問題児どもはスルーし、千と理人は麻美に人魚のミイラの説明を促した。

 麻美(まみ)はにこにこと取り出した人魚のミイラについて説明し始める。

「じつはこのミイラ、いろんな人から転々と渡ってきたもので~、わたしのおじいちゃんから貰ったものなんだ~。しかもビックリしたことになんと~、あの一度入ったら二度と出て来れない迷い森の湖に住んでいた人魚のミイラなんだよ~!」

 一度入ったら出られないというが、あそこ普通に地元民が出入りしてるけど!? 全然、『迷い』の森じゃあないという突っ込みはなしでいいか? 所詮は作り話だし。

 嬉々として言う麻美に千と理人も驚きの声を上げる。

「なんだって!」

「それは本当なの?」

「うん、本当だよ~。毎夜この人魚ちゃんがお家に帰りたいってすすり泣いてるから~」

「それもう、都市伝説じゃなくて怪談じゃねえか!!」

またしても俺の突っ込みをスルーして千が部長権限で宣言した。

「毎夜、すすり泣く人魚のミイラ……。いいじゃない。面白そうだし、その人魚さんも帰りたがってるわけだし。良し、記念すべき第一回の探索は木乃さんの『迷い森の人魚』に決定するわ! さっそく全員で今から迷いの森に出発するわよ!」

「「オー!!」」

「今からかよ!?」

 こうして俺達というか、俺は強制的に参加させられて行くことになった。


 そしていま、迷いの森に入って一時間が経っているんだが、例の湖とやらがまだ見つからず苦戦していた。

「おい、もういい加減帰ろうぜ。何時間探すつもりなんだよ! 随分昔に干上がったんじゃねえの?」

 俺が呆れながらアホ三人組に帰るように呼びかけたが――。

「御門くん、だらしがないわよ! あと、二、三時間探しなさい」

「そうだぞ、(しゅん)。諦めるのはまだ早いぞ!」

「ハルくん、早く人魚さんのお家を探さないとかわいそうだよ!」

 予想してたが、聞く耳を持つ気はないようだ。つうか、俺がここまで付き合う義理なくね? このまま帰るか。

 俺は踵を返して帰ろうとした瞬間――。俺の真横を鋭利なものが飛んできた。

「うわぁ!!」

 驚いて振り返ると、大きく振りかぶった格好をした千がいた。手には第二陣の鋭利な石を持っていた。

「て、てめぇ、なにしやがる!! 危ねえじゃねえか! 頬が切れたぞ! 殺す気か!?」

「ととっと帰ろうとした君が悪いのよ。ここに私の人形がないから仕方なく鋭利な石にしたんじゃない。有難く思いなさい」

「仕方なくってなんだ!? 全然有難くもねえ!!」

 大きく振りかぶって投げようとするのを避けようと一歩後ずさったが、ぬかるんだ土に足を取られて落ちた。

 ドッボン――。

 落ちた先がまさか探していた湖であったことを理解した。と同時に足をくじいた為か上手く泳ぐことが出来ない。

 遠くから麻美(まみ)、理人、千の声が聞こえる。

息ができない……。意識が遠のいていくなか、どこからか緑色の腕が俺を抱きかかえた。俺の意識はそこで途切れてしまった。


 目が覚めると、そこは見知らぬ民家の天井が見えた。意識が混乱するなか起き上がると――。

「おう、目覚めたか。坊主」

 目の前に河童がいた。ちょっと待ってくれ。頭を一端冷静にさせてくれ。俺の目の前にゆるキャラの着ぐるみを着たおっさんがいるんだが、どういう状況だ!?

「あっ! ヒロくん、部長! ハルくん、目を覚ましたよ~!」

「なに、本当か! 心配したぞ、(しゅん)

「御門くん、無事で良かったわ。ごめんなさい、私があんなことした所為で……。やっぱり、呪いの方が効率がいいわ。あんな怪我なんてさせないもの」

 次々と俺を心から心配した言葉をかけてくれて嬉しかったが、最後の言葉!!

「千、てめえ、反省の色が見えねえぞ! それは確実に息を止めてやるってことか!?」

 俺が食って掛かろうとすると、着ぐるみのおっさんが止めにかかってきた。

「まあ、落ち着けや、坊主。命が助かっただけでも良かったやんけ。嬢ちゃんも、そな恐ろしいこと言っちゃあいかんよ」

「ああ、すみません。もしかして、俺を助けてくれたのってあなたですか?」

「せやで。わしにも感謝せえよ。ちなみに頬っぺたの傷もわしが治したさかい」

 着ぐるみのおっさんは俺の疑問に答えてくれた。そこで俺は慌てて礼を言うのと同時にもう一つの疑問を尋ねた。

「ああ、それはどうも。あの、一つ尋ねてもいいですか?」

「ん? なんや? オッチャンに言うてみい」

「あの、なんで河童の着ぐるみを着ているんですか?」

 すると、着ぐるみのおっさんは慌てて答えた。

「えっ? わし着ぐるみちゃうで! 正真正銘の河童やで!! 今は見た目がプリティーだけどもな、信じられんかもしれんけど!? 昔はめっちゃイケメン河童だったんやで!! ほんまよ!」

 はあ? なに言ってんだ、このおっさん。訝しげな目をすると理人が着ぐるみの頭を引っ張りながら答えた。

「いや、これは本物の河童だよ。証拠に力を込めても頭がもげないだろ?」

「痛たったた!! も、もげる! やめんかい!!」

 ものすごい音を軋ませ、首筋に血管が浮かび上がっているところを見て思わず言った。

「うお! 気持ちワル!」

「気持ち悪いとはなんや!? 無礼すぎるで坊主ども!!」

 しまった……。つい率直に口に出していた。だって、マジで気持ちワルかったし……。つうか――。

「え? マジで本物?」

 俺が尋ねると、おっさんは涙目になりながら答えた。

「せやから言うてるやろ? 正真正銘の河童やて! なんならここの住民票見てみるか?」

 おっさんは家の引き出しから住民票を俺達に見せた。待て待て待て!! 本物の河童が存在したってだけでも現状が追い付いていないのに! てか、なんで証明表示が住民票!?  ていうか、ここに住んでんの!? 住民票、マジで登録されてたわ。

「わあ~。本当だ! 河童さんでも住民票って取れるんだね~」

のほほんと麻美(まみ)が感心する。いや、そもそも河童が住民票を持ってるっておかしいだろそこ。

「へえ~。名前が河野カワタロウなんて、昔話に出てくる河童にありふれた名前ね」

 千はあまり興味なさげに棒読みで答える。たしかに昔話でカワタロウって出てくるけれども!? 目の前に本物がいてそんなうすいリアクションてあるか普通。どんだけ興味がねえんだよ!

「逆になんで気付かなかったんだろうね。まさか、僕らの通う学校の目先の家に河童が住んでいたなんてね。空き家だと思っていたよ」

 確かに理人の言う通りなんで気付かなかったんだ? てか、ここあの空き家なの!? マジか。

「ん。そりゃあ、わしが町中で釣り仲間と釣りに行ったり、パチンコに競馬にカジノに行っているからな。出かけっぱなしやさかい、うちを留守にしてることが多いしな~。鍵しめしんとかずにおるわな!」

 おい。いま町中って言ったか? えっ? まさか堂々と姿を現しているのか!? しかも後半ギャンブルしかしてねえ!

 嗜めるように麻美はおっさんに突っ込みを入れた。

「ダメだよ~。ちゃんと鍵を閉めなきゃ~。泥棒にはいられちゃうよ~」

 いや突っ込むところそこじゃねえだろ!

「な~に、うちには金目のあるもん無いさかい。しょっちゅう開けっ放しにしといても大丈夫や!」

 お前もおまえで人目を忍べよ!

「カワタロウさん、最近の空き巣を侮っては駄目だ。身体の一部でも漁って金を得ようとしているかも知れないぞ。気を付けた方がいい。というか一部を僕にくれ!」

 最後、欲望が溢れてんぞ。

「メガネの坊主、なんや恐ろしいこと言うな」

 おっさんが若干震えている横で千の目がきらりと光って言った。

「それなら私にもくれないかしら? 河童の身体の一部で呪いが出来るかどうか試したいわ」

 恍惚とした表情で試そうとすんな!

「このお嬢ちゃんがいっとう怖いわ!」

 尋常じゃない震えを見せるおっさんに、まあ、そこは同意するわ。

「ていうか、お前ら順応力高すぎるだろ!」

 俺が叫ぶ勢いで突っ込むと同時に、縁側からいつもおいしい茶菓子をくれるご近所の釣り好きの渡辺のおじいちゃんが声を掛けてきた。

「おお、ちょうど家にいて良かった。カワタロウさんや、今日の釣りでこんなに大漁の魚が釣れたんですわ! カワタロウさんの言う通り、釣り場のポイントを変えて良かったですわい。これはそのお礼ですわ!」

「な~に礼には及ばんさかい。魚、あんがとうな。まあ坊」

 渡辺のおじいちゃんが魚を渡していると、今度は町を巡回していた交番勤務の雪嶋さんが声を掛けてきた。

「カワタロウさん、この間の夏野菜ありがとうございました! あれとってもおいしかったです! また頂いてもいいですか?」

「もちろんええで! その代わり賭博(ギャンブル)で職質や逮捕を見逃せて欲しいんやけど……」

 職質!? 逮捕!? うおい! 河童の口から犯罪者のような言葉が出てきたけど!? 

 雪嶋さんは笑顔でおっさんの言葉を一刀両断にした。

「あっはっは。それは駄目ですよ。べつに賭け事をするなとは言いませんが度を越した賭け事を見つけた場合は容赦しない主義なので。夏野菜をくれなきゃ問答無用で逮捕しますよ?」

 おい、河童。度を越した賭け事ってなんだ!! 犯罪の匂いがすんだけど!? てか、あの温厚な雪嶋さんの目が笑ってないんですけど!?

 危険を感じたのか、おっさんは震え声で庭に生えているトマトやナス、きゅうりなどの夏野菜を雪嶋さんに渡しながら答えた。

「と言うんは冗談や。ちゃ~んと、夏野菜だけやのうて魚も秘伝の薬もあげるに決まってるやないか~」

 すると、雪嶋さんはいつもの表情になり、カラカラと答えながら夏野菜を受け取った。

「あっはは、冗談ですよ。そんなことで逮捕なんてしませんから。夏野菜ありがとうございます!」

「めっちゃくっちゃ、ご近所付き合いが良好ってどういうことだ! 近所のみんな知ってんの!? 知らなかったの俺達だけ!?」

 俺の突っ込みに渡辺のおじいちゃんと雪嶋さんはそれぞれのんきに話した。

「おっ、シュンちゃん達、カワタロウさんちに遊びに来てたのかい? やっと会えたんだねえ。なにせ、学校にいる間はギャンブルか釣りに行っているからねえ、びっくりしたろう?」

「ああ、本当に驚いたよ。存在していたこともだけど、この場に溶け込んでいることもね!?」

 俺の発言に雪嶋さんは懐かしむような目で俺達に爆弾発言を投下した。

「僕もこの町に来たばかりの頃にカワタロウさんに出会った時は度肝を抜きましたしね。しかも、カワタロウさんだけじゃなく、他の妖怪もたくさん住民として暮らしていることも知ったときも二度驚きましたよ」

「はあ!?」

 俺が思わず叫ぶと、問題児三人は叫びはしなかったが目を見開いていた。

更に渡辺のおじいちゃんは俺にもっとも衝撃的な発言をした。

「あれま? りっちゃん達はともかく。シュンちゃんは知らなかったのかい? シュンちゃんのおばあさんのフミさんがおキツネさまなんじゃがのう?」

「え? ええぇぇええぇえ!! ちょ、ちょっと待って!? き、キツネ!? ウソだろ!!」

「ウソぉちゃいますよぉ。(しゅん)

 かつてないほどの絶叫に近い叫びを出したあと、不意に聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り返ると、そこには日本酒を持った俺の祖母がいた。

「ば、ばあちゃん! ま、マジで?」

 俺はぎこちなく問うと、ばあちゃんは軽く溜め息を吐いてくるりと宙返りをすると、一瞬でキツネになった。

 茫然とする俺にばあちゃんは呆れた表情で答えた。

「これでうちがキツネちゅうことが、分かりはりましたか? 春? というか、キツネやということ教えはりましたのに、忘れるなんてばあちゃんは悲しいぃわぁ」

「いや、初耳なんだけど!? 一度も教えられてないよ!?」

「いいんや。教えましたよぉ。生後三か月の頃ぉに」

 覚えてるかあぁぁああぁ!

「赤ん坊が覚えてるとでも!? ていうか、よく理解できると思ったね!? ふつう記憶にないからね!?」

「そ、そういうもんなんどすかぁ!? その頃はぎょうさん(あやかし)が来て張って(しゅん)はたくさん遊んでもろうってたから、見えてはるし、てっきり覚えていはると思ってましたわぁ。うちが陰陽師の家系っていうところも覚えてないんどすなぁ? うぅ、失敗やったなぁ。小学校ぐらいの時に話した方がええかったんかぁ」

「そうだね! そんくらいの時に話してくれた方が心の傷が浅かったよ!! ってええ!! 陰陽師の家系!? しかも妖怪にあやされてたって!? ちょっと、脳が計量オーバー起こしてんだけど!! 十六年間普通の人間だと思ってたのにショックだわ!」

 新たな事実に混乱していると、ばあちゃんは事も無げに言った。

「まあ、その話しは家に帰ったらおいおい話しますわぁ。今日はそこの賭博(とばく)狂いの河童に頼まれてはったこの酒を届けに来ただけどす。あんさん方、遊ぶんはいいどすけど、あまり長居しいひんで早う家に帰りぃなぁ。ほな、うちは早う夕食作らなぁあけませんと、お暇しますわぁ」

「おや? もうこんな時間ですか? 私もお暇しますね。カワタロウさん、今度の日曜日にまた釣りに行きましょう! でわ」

「僕もまた巡回に戻りますね。カワタロウさん、賭け事を程々にしてくださいね! それじゃあ」

「おおう。またな~、お三方!」

 呆然とする俺を無視して三人ともこの場から去って行った。

「まさか、フミちゃんの孫がこないに大きゅうなってたとはなあ。時の流れは速いなあ~」

「へえ、カワタロウさんは御門くんが赤ん坊の時を知っているのね。あやしてたのかしら?」

「せやな、おむつも替えよったよ」

 マジか!

「おむつを替える河童ってなかなかシュールだな。まあ、そんなことより、早く人魚を復活するところが見たいんだけど、まだ沸かないのか?」

「おい! 友達がショックを受けているってえのに、言葉を掛けるとかしねえのかよ!」

 憤慨する俺に問題児どもは声を揃えてふざけたことを言いやがった。

「いや、別にないな」

「御門くんの秘密なんてどうでもいいわ」

「それよりも~、人魚さんを助けるのが先だよ~」

 お前らには通う血がないのか!!

「坊主、気い落とすなよ。オッチャンは味方やで」

 河童に同情された!? その生暖かい目、やめろ! 腹立つ。


 小憎らしい顔をする河童に腹ただせていると、どこからかピーピーとお湯が沸いた音がなった。

「あっ、カワタロウさん! やかんが鳴ってるよ~。これで人魚さんが甦れるね~」

 お湯で戻すってインスタントか!

「おお、やっと沸いたかあ。ミイラのお嬢ちゃん、ちょっとそこの鍋にわしの友達を入れてといてや。ちょっくら、お湯を持ってくるさかい」

 そう言っておっさんはすぐにやかんを取りに行き、麻美が鍋に人魚のミイラを入れた。そして、おっさんは勢いよくミイラに熱湯をかけた。

「ふう。やっと、生きた人魚が拝めるな」

「待ちくたびれたわ」

「楽しみだね~」

 キラキラとした目で思い思いに言う三人に俺は半信半疑に声をかける。

「いやいや、こんなんで人魚が甦るわけが――」

「ぷっはあ~。ようやく生き返ったよーー」

 本当に甦った。ムクムクと膨れ上がったその姿は絵本で出てくる人魚そのものだった。すると、おっさんは、鍋の中に人参や大根、ゴボウ、しいたけといった具材を何の躊躇もなく入れやがった。

「うおおい!! 何してんだ、おっさん!!」

 俺が驚いて叫ぶと、おっさんは涎を垂らしながら平然と答えた。

「なにって、今夜の夕食やよ。坊主達も腹減ってるやろ? 喰うか?」

 お前、人魚のこと友達って言ってなかったか!? 完全に食料として見てるだろ! つうか――。

「喰えるか!!」

「え! いいんですか? ちょうどお腹が減ってたんだ。お言葉に甘えて頂きます!」

「あら、気が利くわね」

「私も食べる~」

「喰うんかい!」

 お前ら、散々助けるとか言っておいて。人魚が可哀想だろうが! 

 人魚に謝れよ。

すると、人魚は赤い尾びれをビチビチと(はた)きながら笑顔で言った。

「三百年ぶりに故郷に帰れたからねえ。どうぞ。遠慮なく食べていってね~」

 いいのかよ! 俺の気遣いを返せ。

「坊主も遠慮せんと喰え!」

「誰が喰うか! 食欲失せるわ!」

 喰うことを拒否すると、不意に理人が人魚の出汁を飲みながら人魚に尋ねた。

「ところで、人魚さんは三百年間ミイラになっていたんだ?」

 途端に人魚は憂いを帯びた表情でそのわけを語った。

「それは、ですね。今から三百年前――」


~~回想~~


 私が迷い森の湖で鯉の姿でゆうゆうと泳いでいた時でした。

顔なじみの河童さん――カワタロウさんが人間に追いかけられて私の住処に逃げ込んできたんです。

「待ってゴラァ! 河童ぁぁぁ。金返せや!」

「堪忍してや~」

 私は驚き、二人の前に出て理由を尋ねました。

「そこの人、何故カワタロウさんを追いかけるんですか!?」

「こいつ、金を返す期限を守らずに貸した金を賭博に費やしやがったんだよ! 金を返せねえなら、見世物小屋に売ぱらう約束なんでな。嬢ちゃん退いてくれや」

「堪忍や、堪忍してや~」

 みっともなく泣くカワタロウさんに同情した私はその金貸しの男に私を代わりに見世物小屋に売って下さいと。

 絶対、カワタロウさんはお金を返してくれますと、カワタロウさんは泣きながら必ず私を助けに行くと約束してくれました。こうして私は借金のかたとして見世物小屋に売られ、いつしかミイラになっていたと言うわけです。


~~回想終了~~


 人魚の回想が終わったところでます、突っ込んでいいか?

 おっさんの所為じゃねえか! おっさん、屑すぎるだろ!! 

 なにしてんだよ! 早く助けに行けよ、おっさん絶対忘れてただろ!!

 人魚はにこやかな顔つきでおっさんに向けて尋ねた。

「もう幾度、待てども、待てども、カワタロウさんが来てくれないので、もしや、忘れて賭博や酒におぼれているんじゃないかとか、そもそも裏切るつもりだったんじゃないかと思ってました。それは杞憂でよかったです」

 人魚の言葉におっさんは目を彷徨わせながら、苦しい言い訳を始めた。

「いや~。あ、当たり前やないか。わしが大事な金づ……友達を売った金でさらに賭博や酒に手を出したりしいひんよ! ホンマよ! 全然忘れとったりしてへんからな! ほら、わしの夏野菜喰ってみい、うまいで!」

 完全に黒じゃねえか!! そんなんでごまかせると思ってんのか!

「ああ、おいしい!」

 って誤魔化されてるし!? それでいいのか人魚!?

 ふと、麻美(まみ)が首を傾げながら人魚に尋ねた。

「あれ、人魚さんってあの湖に住んでたんだよね~?」

「はい、そうですよ。それが何か?」

「たしか、工事で湖が埋め立てられる予定になっていて、あそこにテーマパークが建っちゃうから、人魚さんのお家が無いよ?」

「ええ!? そんな!」

 これには、俺も目を丸くしたが、約一名、びくついたのを俺は見逃さなかった。

「おい、おっさん。まさか、アンタが売ったんじゃねえよな?」

 すると、おっさんは白状した。

「すまんかった!! わしにはどうすることも出来んかったんや!? 町長の権力に逆らえなかったわしを許してくれ! 決して欲に眩んで売ったわけやないで! ホンマに!」

 寝言はその左手に隠した目薬を出してから言え。

 それまで黙っていた千が突然言った。

「住むところが無いなら、うちの部に来る?」

「へぇ?」

 思わぬ誘いに人魚は間の抜けた声を発した。

「ちょうど、ここに金魚鉢があるわ。貴女、金魚に化けられる?」

「は、はい。化けられます!」

 人魚がそういうと千は金魚鉢に水を入れて人魚に入るように促した。人魚は勢いよく金魚鉢に飛び込んだ。

 ドッポン――。

 人魚が飛び込んだお蔭で生まれた激しい水しぶきの中から赤い金魚が姿を現わした。

「どうやら成功ね」

「あ、ありがとうございます!」

 金魚になった彼女は慌てて千に礼を述べた。すると、千は目をきらりと光らせて堂々と言い放った。

「よし、これで非常食は確保したわ!」

「部員じゃねえのかよ!」

「部で飼うんなら、名前を決めなきゃだね~。何にする~?」

「一番、人魚に親身になってた奴が飼うとか言うなよ!!」

「ロドリゲスはどうだ?」

「乗るのかよ! てか、その怪獣みたいな名前はなんだよ!? 無難に小紅(こあか)でいいだろ!」

「そういう坊主も名づけにノリノリやで!」

「ていうか、名前になんも捻りもないわね。もっとましなものはなかったの? たとえば、ノロイとか」

「お前のほうが無いわ! 捻りもない俺のほうが一番無難だわ!」

 人魚の名を決めるのに騒ぎつつ、人魚の名前が俺の『小紅(こあか)』という名前に決まって、ようやくこの場は収まった。


 こうして我が部に新たな部員、人魚の小紅が加わり、うちの部でゆうゆうと泳ぐ姿が見られることになる。

 トリプル災害を止める使命に加え、その暴走によって小紅を守るという使命を新たに誓う羽目になった。

 ますます、胃薬が手放せない状況に陥る日常が始まってしまったのである。

――解せぬ。



あとがき

 どうも、鬼灯(ほおずき)と申します。小説家になろうでは検索しやすいように「鬼灯きちょう」とさせています。

 この小説は文芸部にてあみだくじで引いた三つのテーマを織り交ぜるという鬼畜な所業で書いたものですWW その引いたテーマとは「妖怪」「都市伝説」「エジプト」の三つです。

都市伝説と妖怪はともかく、エジプトの要素はどうしたらいいんだと思い悩んだ末、エジプト要素はキャラクターがエジプト好きにしてしまえってことで落ち着きましたWWW ちゃんと盛り込められたか不安ですWW

 一人称でラノベのような文体がこの作品で初めて書いたんですが、読みづらくて全然面白くなかったらすみませんWW

こんなものでも面白いと言ってくれたら嬉しいです!

 ここまで読んでくれた方、ありがとうございました!


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