Ⅶ
隠し通路を出た先‥‥‥そこは実験室だった。
床には無数に飛び散った血の痕と、何かの形を残した肉片。実験に使われたと思われる器具などが散らばっており、腐敗臭を漂わせていた。
「うっ! 何ここ‥‥‥」
「手術と称して実験を行っていた部屋だ」
「毎日こんな所でやっていたの?その‥‥‥牧村って人と研究員達は」
「そうだ、ここは他の部屋と違って特殊で一歩入れば牧村の許可無く出る事は許されない。出て行く時は記憶も消される」
「そこまでして研究したい事なの?」
「そう言う事だ。くそ!ここの扉を開けるパスワードが分からない!」
『早くこの地下研究所から出ないとヤツが来る。
俺でヤツを止められるか‥‥‥』
その時ふと思い出したのは、先程の部屋で見た研究員の死体。あの手帳の内容からすれば彼は確実にここの施設で働いていた。そうなれば、必然とここを出る何かを所持していてもおかしくはない。
「美樹、俺は今からさっきの部屋に戻り、あの死体からここを出る手掛かりを探してくる。ここで待って居てくれ」
俺はそう言うと、美樹を残し急いで戻った。
「私をこんな所で一人にさせる気なの?」
ブー! ブー!
危険を報せる音が大きいせいか、海に美樹の叫び声は聞こえてなかった。
!!!
突然、何かの視線を感じた様な感覚になった。
美樹はその視線を感じたと思われる実験台がある方向を見て‥‥‥
「‥‥‥何かの視線を感じたのだけれど、誰か居るわけじゃなさそうね。気配も感じられなくなっているわ」
美樹が感じていた気配‥‥‥それは海が言っている“ヤツ”が動き出したからだ。
暫くして海が美樹の元に戻って来た。その表情は何か別人の様な感じがしたが、今はそんな事を気にしている場合では無い。
「脱出方法は見付かったの?」
「ああ」
「これで脱出出来るのね」
美樹は安堵の表情を浮かべたが、海は何か別の事を考えていた。
“ヤツ”とは一体何でしょう?
答えは次話に出ます。