Ⅵ
『牧村、最近調子はどうだ?』
『ああ、榊原か。大して変わらないな』
『でも、無理するなよ』
『分かってるさ』
何処か懐かしむ様な海の表情、そこには二人にしか分からないやり取りがあったのだろう。
「話の続きだが、俺はこの後に教員免許を取って教師となってからは、この研究所に来る事は無くなった。
牧村自身も人と連絡を取るのを嫌がったのも原因なんだが、それでもたまにメールのやり取りはしていた。その時に一度だけ、ヤツが言ってた台詞を今でも覚えている。 “いつか、人の体からバンパイアを造り出してみたい”と‥‥‥」
「そんな経緯が隠されていたのね」
「そして、夢は現実になっていく‥‥‥強力なバックを得てな」
「強力なバック‥‥‥?」
「そうだ、この話しはここから出てからにしよう」
「そうね、ずっと居たら私達までおかしくなりそうだわ」
二人共最初に来た部屋に戻り、研究所を出ようとした瞬間
ドッゴーン!!
「「???」」
『ブー、ブー、緊急事態発生。緊急事態発生』
何処からか爆発音がし、緊急事態を報せるブザーも鳴り出した。
「やられた! 俺達ここに閉じ込められたぞ!」
「え?」
「この研究所ごと俺達を殺す気らしい」
「海、他に出口は無いの!?」
「牧村の事だ、壁の何処かに隠し通路くらい作ってあるはず。美樹、探すのを手伝ってくれ!早くしないと厄介な化け物が来るぞ!」
「まさか‥‥‥バンパイア化した化け物が来るとか?」
「そんな生易しいモノじゃない!もっと危険な化け物だ!早く隠し通路を見付けるぞ」
壁に飾られている額縁やら造形品を壊していく。
そのうちに、一つの大きな額縁が動かなこ事が判明する。
「海!この大きな額縁、他と違って中々外れないわよ」
「美樹、そこをどけ!」
海は机の上にあったガラス製の灰皿を、何個も額縁に向けて投げ付ける。最初は軽いひびが入る程度だったが、次第に破壊されて奥から隠し通路へと繋がると思われる扉が見付かった。
「行くぞ!他に逃げ道は無い、俺が先に行って確かめる。美樹は後から付いて来い」
「分かったわ」
二人は扉を開け、急いで隠し通路を通り次の扉を開けた。
無事に脱出出来たかと思ったらそこは、先程とは別の実験室だった。