Ⅱ
電車に揺られながら海は、美樹に今回の趣旨について簡単に説明をした。
「その牧村研究所に行ってメールを送って来た人に会えば良いのね?」
「そうだ、会って話を聞く。それだけだ」
「それなら早く終わりそうね」
「‥‥‥そうであって欲しいが」
海は本当の事を美樹には話さなかった。
電車に揺られる事二十分、目的地近くの駅に二人は降り立った。
改札口を抜け駅の外へ一歩出れば、空は薄暗く人影も疎らだった。
「この街って、こんな感じだったかしら?」
「中心街に新しいビルが出来て皆がそこへ進出して行く、残った街は寂れていくだけだ」
「なんだか寂しいわね」
「そうでもないさ、この地に残って頑張っている人だっている」
「そうね‥‥‥処で、本当にここで合ってるの?」
「えっと‥‥‥確かこの辺りのハズなんだが‥‥‥あ!有った、ここだ」
二人の前には薄暗い路地の片隅に地下へと通じる階段、人気は全く感じられず、一度中へと踏み込めば出て来る事が不可能に近いくらいに空気が重い。
「こんな廃墟みたいなビルとビルの間に階段‥‥‥これだけでも見付けにくいのに、更にこの下に研究所があるなんて信じられない。それに、とてつもなく薄気味悪いわね」
「誰でも最初は疑うし、来る事自体を嫌がる。それに、ここは一般の研究員が来る事はまず無い。特別な資格を持った連中しかここには来ないさ」
「そうなの?じゃあ、何で海はそんな事知っているのよ」
「俺は、この研究所の所長と顔見知りだから入れる」
「‥‥‥?」
「この階段を降りて突き当たりに大きな扉がある、
こにメールを送って来たヤツが多分居るハズだ」
「多分って何よ! それに、この研究所は何をしている所なのよ!」
「正直、俺も本当に来ているのかは分からない。まぁ、中に入れば自ずと答えが分かるさ、それに何をしているかは言葉で説明するより見て貰った方が早いし分かりやすい」
二人は地下へと通じる階段を降りて行き、突き当たりまで歩いて行った。