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灰色の憂鬱  作者: ma saki
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お望み通りすっきりしました

おトイレの場所も教えていただき、現在はすっきりとした気持ちでお二人の前におります。

ちなみに、おトイレは部屋から続いた所にありました。この部屋であれば、誰にも会わずに生活することができるかもしれないと思うほど、なんでも備え付けてあるようです。うらやましい限りです。


ごほん、という咳ばらいが聞こえたので顔をあげると、私を凝視していたらしい銀髪美人さん、もとい王様と目が合いました。目の色は灰色なんだなぁ、とぼんやり思っていると、王様が口を開きました。


「…その鬱陶しい髪の毛をどうにかできないのか。」


第一声がそれとはどうかとも思いましたが、確かに私も髪には辟易しておりました。だから、尋ねました。いつも他の人に尋ねるように。


「どうにか、ということは、私が髪の毛を整えることをあなたが望んでいる、ということでしょうか?」


この言い方は、私の癖、みたいなものなのでしょう。相手が私に何かをすることを求めていると感じた時、自然と口から確認をとるような言葉が出てきます。


私の言い様に不思議な顔をしましました。

「ああ、そういうことになるな。」



その言葉が王様の口から出た途端、開いた窓から強い風が入り込み、部屋の中をかき混ぜるように吹き荒れました。あまりに強い風だったので、目を開けていられませんでした。

ただ、目の前から、「何事だ!」と叫んだ王様の声と、「なんてことだ…」とつぶやく宰相さんの声がしました。



風も止み、うっすらと目を開けると、このごろ感じていた煩わしさが消えています。前髪が目を覆っていないのです。

手で触って確認してみると、まゆ毛のあたりで綺麗に切りそろえられているよう。どことなく全体的に毛先もそろい、毛並みが良くなった気がします。

私はふっと微笑みました。


いつも通り、満足してもらえるはずです。王様が望んだとおりになったのですから。


王様も風が止んだ後、周りの状況を確認しようとあたりを見回しました。そして、私を視界に入れると、ぴたりと固まってしまいました。

宰相さんは、何やら深刻そうな顔をして私を見つめています。



何か、気に入らないことをしでかしてしまったのでしょうか。

いいえ、そんなことはないはずです。私はただ、王様の望みを叶えただけですから。




この時の私は、驚く人々の胸中なんて知るはずもなく、そして、その行為がどれだけ可笑しなことであるのかを認識することもなく、ただただ憤りを感じるだけでした。


そして、初めて見た王様の微笑みの意味も、この時の私は知る由もありませんでした。


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