夢から覚めた夢
「殺そうとするとは何事です!」
「早く始末するべきだ。あんな力に頼る必要はない。かえって邪魔になる。」
「それなら他の者に見つかる前に手元に置いて監視するべきでしょう!」
大きな声が聞こえてきます。とてもうるさくて、さすがの私でも起きてしまいました。
相変わらず髪の毛は邪魔で、視界はとても悪いです。
声がしたほうをたどってみると、先程の広場で私に火をつけた美しい人がいらっしゃいました。
はて、なぜまだ目が覚めないのでしょうか。
たった今起きたはずなのに、目の前にいるのは私を襲おうとするAさんではなく、私を火あぶりにした銀髪美人さん。そして見知らぬ金髪美人さんもいます。この方もどうやら男性のようです。
それにしても寝ている人がいるのにあんな大声で話すとは非常識です。それに内容が物騒です。
「あの、少々よろしいでしょうか。」
とりあえず目が覚めたことを報告しようと、お二人に声をかけました。
お二人は、少し驚いたような顔をしてこちらを見ました。
私はのっそり上半身を起こして周りを見渡しました。火あぶりにされてたくらいですから、牢屋に入れられてもおかしくないと思うのですか、そこは西洋のお姫様のベッドルームのような装いです。
金髪美人さんがまぶしい笑顔を作り、私のいるベッドの所まで来ます。
「目が覚めましたか、お嬢さん。どこか具合の悪いところはありませんか?」
とても優しい声です。さっきの話を私が聞いてなかったと思っているのでしょうか。
「はい、大丈夫です。あの…。」
私はどうしても聞きたいことがあったので、金髪美人さんのほうをじっと見つめました。
なかなか私からは言い出しにくいことなので、悟ってくださるとうれしいのですが。
すると、金髪美人さんは笑顔を絶やさず、私に言い聞かせるように話しました。
「突然こんなところに寝かされていて、驚くのも当然です。
ここはこのアジュール王国の城です。広場であなたには大変失礼なことをしてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。
こちらでも内部で行き違いがあり、本当はあんなことにはならないようになっていたのですが…」
すると金髪美人さんが銀髪美人さんのほうをキッと睨みつけます。銀髪美人さんは眉をしかめましたが、何も言葉を発しません。
そんなことより、私にはもっと聞きたいことがあります。
「いえ、そうではなくてですね…」
私が控えめに言うと、間髪いれずに言葉が飛んできました。
「そうですよね、私の名を申し上げておりませんでした。
私は セイ・マティス と申します。この国の宰相を務めております。
そして、そちらに立っておられるお方は…」
「アルバート・ウェルス・アジュール。
このアジュール国の王だ。」
なんと銀髪美人さんは王さまでした。びっくりしました。びっくりしましたが、私が聞きたいことはそうではなくてですね、
「ご丁寧に自己紹介までしていただいて本当に申し訳ないと思っているんですが、あの…
おトイレは、どこでしょうか?」
目の前のお二人は固まってしまいました。
申し訳ないとは思いながら言葉を発したこちらの気持ちもくみ取っていただけると嬉しいなぁと。