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灰色の憂鬱  作者: ma saki
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夢の中の夢

 髪の毛が邪魔、だなぁ。


私が起きてまず思ったことです。





 私は今、とある人の家に居候させてもらってます。その人は私の両親ではありませんし、兄弟でもありません。叔父でも叔母でも従兄でもない、全くの赤の他人の家にいます。


なぜそんな人の家にいるか。


面倒なので省略してもよろしいでしょうか。

とにかく私にはそういったことが多くあるんです。





 私の名前は東雲夢(しののめゆめ)。17歳で、もうすぐ高校卒業です。


私には血のつながった家族がいません。

だから、いわゆる、赤の他人の家にいます。今回の人は、偶然町で知り合った画家さんです。その画家さんは有名な人らしいのですが、残念ながら絵を見ても良さが全く分かりません。


その人との出会いは語るに値しない陳腐なものなので省略させていただきます。

とにかくその人は変態さんで、絵のモデルとしておいてもらっているのですが、一日中私をなでまわしている日もあれば、わき目も振らず一心不乱に絵を描いている日もあります。


私はいつもその人の言うとおりにします。その人に限らず、今まで置いてもらったどの人対してもそうしてきました。

だって、そうすることをその人たちが私に望んでいるから、私は何だってするんです。



 以上が、私の生活です。

情報が少なすぎる?いいえ、これに尽きてしまうのです。




 さて、では現在の状況をご説明しましょう。私も訳がわかっていないので、冷静に状況を分析していきたいです。


目の前は真っ暗です。なぜなら、私自身の髪の毛が私の顔を覆っているからです。

私の髪の毛はとても長いです。真っ黒な髪が腰辺りまで伸びています。そして、前髪も目をすっぽりと覆ってしまうくらいの長さです。(この髪の毛も、変態画家さんが望んだことですので、文句は言いたくありませんが、邪魔なものは邪魔です。)


次に感じたのは、頬に触れる冷たさ。目を向けると、そこには石畳。


はて、なぜ私はこんなところで寝転がっているのでしょうか。私はさっきまで変態画家さんの知り合いと思われる人物に変態画家さんの部屋で襲われるところだったのですが。


 冷たい風も感じます。どうやら外のようです。そしてとても騒がしいです。大勢の足音が近付いている気がします。


むくりと私は体を起こしました。


髪の毛の隙間から見えるのは、見知らぬ風景。ヨーロッパのような街並みでしょうか。行ったことはないので本当のところはわかりませんが。ここは比較的開けた場所です。


そして、大勢の鎧をまとった人たちが私の周りを囲んでいます。

初対面で皆さん剣を向けるなんて礼儀がなってませんね。というか、そんな物騒なものをなぜ持っているのでしょうか。襲われそうになっただけで妄想の世界に逃げ込むようなやわな性質じゃありませんが、私はどこかおかしくなってしまったのでしょうか。



 状況が飲み込めずポカンとしている私の前に、ひときわ目立つ人がやってきました。男性なのか、女性なのか分からないほど美しい人です。軍服を上品に仕立て上げたようなその人が来ている服が、かろうじて男性であることを示しています。


そして、その人が言いました。



「死んでもらおう。」


すぐさま答えました。

「遠慮します。」



そう言った矢先に、目の前が真っ赤になりました。



これって炎でしょうか?木に燃え移るそれはまさしく炎のように思われます。目の前の銀色の髪を持つ美しい人は、私を火あぶりの刑に処すつもりなのでしょうか。




 でも可笑しなこともあったものです。全く熱さを感じません。

やっぱりこれは夢なのでしょう。夢の中の夢、何だか小説のタイトルにできそうですね。

面倒になってきたので、眠ることにしました。炎の中ですが。

目がさめれば、きっと私は変態画家さんのところを出て、また他の人との出会いを求めてさまようでしょう。


願わくば、起きた時に変態画家さんの知り合いと思われる人が目の前にいないことを。


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