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プロローグ
「今、何と言った?」
月が雲に隠れた深い夜、暗闇の中でその冷たい声が響いた。
「前兆がございました。」
問いかけに対し、しわがれた声が淡々と答える。
透き通るような銀色の髪を持つどこか神秘的な雰囲気を纏うその男は、何かを考えるように黙り込んだ。
前兆があったということは、数日以内には彼のものが現れるだろう。その時、自分はどのような判断を下せばいいのだろうか。
望んだことが実現する、というその力。
吉と出るか凶と出るか。
生かすか殺すか。
男の中で答えが出ることはなかった。