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Wings' Karma  作者: cape
第一章 風の前奏曲
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Ⅰ 出発?

 ――次の日の朝、セダはカラスの声で目が覚めた。

 ……不吉だな。

 空はまだ夜の群青色の幕が引いていない。そんな時間だ。

 セダはとりあえずくるまっていた寝袋をしまうと、近くに生えていた木から実を適当にもいで食べた。口の中に飴のような甘い味が広がる。

「ラウダの実だな」

 味で木の実の味を当てると、他にも寝ている二人のために実をもいでゴム製のポーチの中につめておいた。それからしばらく森の中を散歩し、そろそろ夜明けだという時間になると、セダはシェルラたちを起こしにかかった。

「おーい! そろそろ朝だ! さっさと起きて出発すんぞ! オラ起きろ~!」

 最初に起きたのは、やはりシェルラ。このお姫様は、『早寝早起き』がモットーらしい。一方、ハユのほうは全く起きる様子が無かった。そこで、セダがハユの耳元に近づいて「ハユのマヌケ~」だの「おまえが昔好きだったあの女の子……」だのと叫びまくったが、ハユは「ふぅん」と寝返りをうっただけで相変わらずである。

 が、そんなことではあきらめず、セダは一旦荷物をあさってフライパンとおたまを持ってくると、それをハユのすぐそばで打ち鳴らし始めた。

 ガンガンガンガンガンッ!

 辺り一面にけたたましい音が鳴り響く。しかし、それでも彼が起きないと分かると、それに『セダのうるっさい怒鳴り声』が追加された。

「起きんと朝ごはん抜きやで~!」

 起きない。

「ゲットアップ! グッモーニン、ハユ! グッモーニン!」

 起きるはずも無い。

「起きろっつってんのがわかんねぇのか、このゴリラ型ピープル!」

「るっせぇ、誰がゴリラだ、このチンパンジー型半魚人!!」

 起きた。

 ―――はいいが、起きるなり二人でけんかを始めた。

「あ? ンだよその『チンパンジー型半魚人』っつーのは? 言っとくけど『半魚人』ってのは『半分人 間、半分魚』って意味だし、ンな五対五の比率のどこにチンパンジーが入れるんだよ!」

「黙れ半魚人! 半魚人よりゴリラのが強いんだよ! てめーは池でぴちぴちはねて」

「半魚人なめんなよ! マーメイド・キーック!!」

「ギャァッ! 蹴りやがった、こいつ!」

 賑やかなのはいいことだが、朝っぱらからこんな様子の人たちと一緒にいていいのだろうか、と思ったシェルラは「あの」と声をかけてみたが、この男同士の醜い争いに彼女の声など届くはずも無い。彼女のことなど気にもとめず、ずっと言い合っているだけである。

 こんなけんかを見ていれば、いくら温厚な性格のシェルラだって頭にくる。

「いい加減にしてください! カヌレスに行くんじゃなかったんですか? おいて行きますよっ!」

 すると突然辺りはしぃんと静まり返り、さわさわと風になびく梢の音しか聞こえなくなった。

 と、その直後。

 シェルラに怒鳴られた男二人は、急に地面で頭を割りたいのかと思うほどの勢いで土下座しだした。

「すみませんでした! 俺達が悪かったです! ごめんなさいっ!」

 ――シェルラは一瞬唖然としてしまった。……何をやっているんだ、この二人は。

 しかし、二人が本気で謝っているのだと判ると、元の弱気な少女に戻り、どちらが本当は悪いのか? という事実が永遠に戻ってこないのでは(要するに『解らなくなる』という意味だ)かと思うぐらいの彼らへの謝罪の言葉を並べ始めた。

「こ、こちらこそ本当にすみませんっ! 置いていきますよなんて、セダさんたちが一緒についてき てくれると言って下さったのに……。何が何でも、あんなにきつく言うことないですよね、すみません」

 まじめな顔で「すみません」を二回も言われ、どう反応すればよいのか。

 そのことについてハユが悩んでいると、そんな彼の前にあのもう一人の男(『男』の上に(あほ)と付け足してもらえば幸いである)が歩み出た。

「いや、まぁ確かに君は悪かったかもしれない。でも僕は心が広いからね、そのくらいの事は気にしなく ていいよ」

「……」

 何を言ってるんだ、このアホ――!!

 ここにいるセダ以外の人、あるいは物がそういうような表情をした気がした。

 だが、しばらくして彼もその気まずい雰囲気に気づき、シェルラへの謝罪(というより言い訳だ)を始める。

「あ、いや、あのっ、もちろん冗談だからね? 心が広いも何も……。全部俺達が悪いからさ、ごめんね……?」

 とにもかくにも、結局はシェルラがさりげなく「出発しなくては」という話題へと進め、荷物をまとめることになった。途中、セダが荷物の中身をぶちまけてしまい、全員でそれを拾う羽目になったこと以外は案外スムーズに進んだ。

「それではいざ、カヌレスへっ!!」

 ……、沈黙。

 ハユがぽつりと呟いた。

「馬は……?」

「……忘れてた」

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