Ⅱ 再開
「おお、よく来たな、エルトゥ!」
「久しぶり」
そう言って、滅多に見せない笑みを浮かべる。エルトゥは、死の巣に足を運んでいた。世界中で唯一彼女が安心して過ごせる場所だ。
一番に迎えてくれたのは、ヴェリン。リュグ族の青年だ。
「何ヶ月ぶりかしら」
奥の小さな池で泳いでいるのは、ラーヴェ族のレキ。
「や」
「おう、ディエル」
そして、ひらひらと手を振るディエル。ゲージュ族の少年。
一見ただの友達同士に見えるが、彼らにはある共通点があった。
同族からの追放、人から忌み嫌われ、人間界から追放された者たち。つまり、なんらかのことから追放されたというのが主な共通点だった。追放された理由はそれぞれだったが、全員こうして仲良く集まっている。
ヴェリン。彼は、リュグ族の中でもずば抜けて武術に長けていた。しかし、それ故に他者から疎まれ、反感を買うことになったのだ。ある日彼がリュグ族の集落を歩いていると、突然何人もの戦士が飛びかかってきた。そして、その中には、彼の親友も加わっていた。
裏切りと失望で怒り狂った彼は、仲間の戦士たちに刃を向けた。それこそが、同族である戦士たちの策略だったのだ。その策略に騙されたヴェリンは、彼らに追放された。
レキ。彼女は、ラーヴェに属していた。だが、純血のラーヴェではなかった。父が人間の魔導師、母が人魚族。つまり、俗に言う雑種だったのだ。
ラーヴェ族の間では、雑種は不幸を呼ぶと考えられており、彼女は牢に入れられることになった。鋼鉄製の扉は一筋の光も通さず、辺りは闇一色に染められた。しかしレキを牢に入れたものは、あることを見落としていた。レキは、父と母から受け継いだ強力な魔力を持っていたのだ。そんな彼女の前では、鋼鉄の扉など、一枚の紙切れに過ぎなかった。彼女は扉を吹き飛ばして脱走し、結果辿り着いたのがここだった。
そして、ディエル。彼はゲージュ族のしきたりや掟にうんざりしていた。そんな古いもの、いい加減に捨てたらどうなのか? ……そう思った彼は、ゲージュ族が守り続ける世界、ラルダの地を抜け出した。昔から憧れていた冒険というものがしたかったのだ。一度ラルダを出た者は、再びその地に戻ることを禁じられる。そこを出た瞬間、たとえその者がどんな重役だろうと部外者としてみなされる。帰る場所を失った彼は、レキと同じくここに辿り着いた。
最初にヴェリンが見つけたこの小さな岩穴は、今は同族に見放された彼らの家のようなものになっていた。
「ここも使い始めてからずいぶん経つな……。何年目だ?」
「うん、五、六百年ってとこかな。よく壊れずにここまでもったものだと思う」
「当たり前でしょ、私が魔法をかけてるんだから」
久々の再開をし会話を楽しんでいると、ふと岩穴の入り口に一瞬邪気が感じられた気がした。
「見てくる」
……エルトゥはそう残すと、すっと立ち上がり入り口へと向かった。
大したことでなければいいのだが――……。




