6人の消失
お久しぶりです。将軍です!
最近は、こちらのオリジナル小説のほうがさっぱりてにつかず、まったく更新していませんでしたが、これから定期的に更新したいと思っています。
今回は、正直不慣れな海外もののネタなので。銃に詳しい方などは不備に気づかれる方もあるかもしれません。ご了承ください。
その日、ロサンゼルスでは異常に霧が多かった。
霧の都といえばロンドンが有名だが、まさしくその日のロサンゼルスはアメリカ版霧の都といってもいいほど霧が多かった。
だが、その霧もさることながらロサンゼルス市内は異常な雰囲気に支配されていた。
その原因は2日前に流れた1つのニュースにある。
「えっと......史上最悪の犯罪者逃亡だったけか?そのせいで休暇中の俺たちまで呼び出されるとはいい迷惑だぜ 」
ロサンゼルス市警所属のパトカーの中では、一人の男が今日何度目かの愚痴をつぶやいていた。
「そうは言っても、この状況ですし......人手は多いほうがよいという判断は当然じゃないすか? ジョージ先輩、愚痴言っても仕方ないすよ? 」
「うるせえよソード。からといってわざわざ所轄の全員を出す必要はないじゃないか! 」
彼等はそれぞれロサンゼルス市警の巡査部長と巡査である。
ソードは、1年前に所に配属された新人で、配属した時の教育係だったジョージとペアを組んでいた。
「で、その後続報はあったのか? うっかり寝ちまって無線聞き漏らしちまったんだが 」
「それ、一警官としてどうかと思うっすけど........一応入ってるっすよ。ええと....容疑者は護送車から脱出するさい銃器を奪った可能性が高いという報告と、2時間前に銃器店が強盗にあい、その時の犯人の特徴が容疑者と一致しているらしいっす 」
「また、厄介な話だな...... 銃器を所持してるのはほぼ確実じゃねえか。だいたい何で死刑囚のせた護送車から容疑者がにげんだよ? 」
「なんか、飛び出してきたやつを避けようとして事故ったらしいっす 」
「そいつのおかげで、呼び出されたんだから、文句の一つでも言いたいところだぜまったく! 」
ジョージの不満ももっともで、彼等を始め休暇中の警官たちのほとんどがたった一つの事件のために呼び出されたのだ不満の一つも言いたくなるわけである。
だがそれは同時に今回の事件の深刻さを物語ってもいる。
「容疑者が容疑者ッすからね.....名前はジョン・プレスリー、元アメリカ陸軍特殊部隊に所属。イラク戦争において民間人虐殺容疑をかけられ本土に強制送還され裁判では正当防衛で無罪となったものの軍を退役。その後犯罪に走るようになり、放火、殺人、強盗、テロ未遂などの事件で名前が挙がるようになり、昨年二月逃亡先のイギリスで国際刑事機構により拘束され先週、裁判で死刑が確定し、3日目に留置所から刑務所に移動するための護送車が事故を起こし、脱走。その際に護送車の見張り役の武器などを奪った可能性があり武装の可能性が高いとして、ニューヨーク市警の総員招集令が発令されたとのことっす 」
「アメリカ陸軍特殊部隊と言えば俗に言うグリーンベレーって奴か? 」「そこまでは知らないっすよ。でも軍人崩れってだけですでにやばいと思うっすけどね...... 」
ため息をつく2人。しかも軍人だけでもやばいというのにそこにさきほど入った『銃器店が襲われた』という情報である。完全武装した可能性がある元軍人に警察官が太刀打ちできるだろうか?
「まず、死ぬな。数で押せばなんとか抑えられるかもしれんが......死者出ることは確実だろう。相手が武装していたらの話だが 」
「そう甘くない気がするっすけどね.......SWATぐらいでないと太刀打ちできないんじゃないすか? 」
「どこに出るかわからん相手だ。あらかじめSWATを配置することはできんしな.......俺たちにできるのはせいぜい撃ちまくって奴の気を引き、その場にとどめておくことぐらいだろうな 」
パトカーの後部座席にはべネリM3オートマチック式ショットガンが立てかけてある。(余談だが、ロス市警では2014年現在、レミントンM870かべネリM3のどちらを備えるかは自由とされている)
一警官が持てる銃の中では最大の威力を誇るが、軍人相手のドンパチではこれだけではらちが明かないだろう。
後頼りになるのは、腰にさした拳銃M92Fベレッタだけだ。もっとも最近になってグロック17などを持つ者も多い。かくいうソードもグロック拳銃の一つであるグロック21を所持している。
「ソードの奴はわざわざ45口径弾打ち出すタイプの奴を選びやがってさ......こんなもん当たりゃあいいだけののによ..... 」とはジョージのセリフである。
2人がそろってため息をついた瞬間だった。
「こちらベルナルド! 7番通りを巡回中に容疑者を発見! 現在容疑者はバンにのって逃走中! ナンバーは×××145だ! 」
無線から聞こえてきたのはジョージたちの良く知る声だった。
「当たりを引いたのはベルナルドたちか.....たしかアイツのペアはハンニバルだったな。お前の同期の 」
「ええ、軍事マニアのハンニバルっす。その知識を少しは役立ててくれればいいんすけどね 」
「まあ、とりあえず応援に向かおう。7番通りだったな?あそこならここからそう遠くはない。助太刀にいかにゃならん 」
お互いうなずきあった2人は7番通りに向けてパトカーを走らせる。
「くそ! あのバンについてるロゴ、襲われた銃器店のものじゃねえか! となるとまさか大量の銃火器をあのバンの中に詰め込んでるんじゃないだろうな? 」
「その可能性は高いですね。ていうか俺たちが見たときにすでにショットガンで武装していましたし 」
「ち!厄介な話だぜ! 」
容疑者を追跡するパトカーの中で、ベルナルドとハンニバルはじりじりとしていた。
なにしろ容疑者が武装していることは確かなのだ。いつ座席の窓開けて撃ってくるか分からない状況で平然といられるわけがない。いっそこのまま逃げ続けてくれればいずれ駆けつける同僚たちやSWATたちと連携できるのだが........
「おい、くそ! 路地に逃げ込みやがった!自分から追い詰められに行くようなもんだぞ? なんのつもりなんだ 」
「誘いこむつもりじゃないですか? それだけ自信があるってことじゃないですかね 」
そんなことを言い合いながら路地に向かった2人の前に、容疑者ジョン・プレスリーが立ち塞がった。その手にはごっついショットガン。SPAS12が握られている。
「まずい!降りろ! 」ベルナルドの叫びと、銃声が重なった。それと同時にパトカーのフロントガラスが砕け散る。
「くそが! 問答無用かよ! 横にコイツを置いといて助かったぜ 」ベルナルドの手にはM870が握られている。ロス市警の一員となってから使い続けている愛用のショットガンである。
その横では、ハンニバルが震える手でグロック23を構える。
目の前の警官たちを見て、ジョンは薄く笑った。
「わざわざ追跡御苦労さま。だがそれは無駄に終わるだろう。たかが職業警官が俺を倒せるわけがない。いいか、俺を逮捕できるなんて甘い考えを持つな、殺るつもりで向かってこい。でなきゃおめえらミンチになるぜ? 」
不穏な言葉にベルナルドは銃口を即座にジョンに向け引き金を引く。ほぼ同時にハンニバルの拳銃からも銃弾が放たれる。
だが、その銃弾は何もない空間に吸い込まれとっさに移動していたジョンの放った銃弾がパトカーの車体をえぐる。
「まだ、仲間はこないのか? 」孤立無援な上に器量は相手の方が上となると数で押すしかないが、2名だけでは不利すぎる。
「おらおら! どうしたロス市警の誇りはどこに行った? この腰ぬけめ! 」馬鹿にされ続けるのは腹立たしいがここで挑発にのればアイツの宣言通り一撃でミンチにされるのがおちだと判断し。車体を盾にしながら移動しようとするベルナルドの肩を誰かが叩いた。
「!! 」肩を震わせ後ろを振り返るハンニバルはそこに黒いタキシードを着た日本人を見た。
「どうもお困りのようですが、助太刀しましょうか? 」
「あ、あんたはいったい? というか民間人は危険だ! はやくこの場から離れて.... 」
「私は民間人ではありません。というか普通なら貴方がたの『敵』と言えるでしょう 」
「な? 」「私は日本の『虎狼組』からの使節としてここを訪れた暴力団員です。ですが、そこの奴にはつい1時間前に友人を殺害されてましてね。協力させてください 」
「そんなことできるわけ......だいたい友人って...... 」
「強盗にあった銃器店の店長ですよ 」
ベルナルドの制止を振り切り、男は前に出る。
「あんた一体? 」
「さっき言ったでしょう?カズユキ・ヤマモト。しがない暴力団員ですよ 」
カズユキはその手にもった鞘から刀を抜く。ジョンがその独特の形状を珍しそうに眺めるのを見ながら和幸は刀を水平に構える。
「私の友を殺めた罪を一生後悔させますよ 」
瞬間、滑るようにカズユキの体が前に動いた。その刀が彼の胸を掠め、防弾 防刃兼用チョッキを切り裂く。
「ツッ! 」舌打ちをしてとっさに下がるジョンに再び刀が振り下ろされるが、ジョンはその刀を腰から抜いたサバイバルナイフではじき返す。
「手前、なかなかやりますね 」「てめえこそな! 」刀とナイフがぶつかり合い火花を散らす。
そのすさまじい白兵戦をぼーと眺めてしまっていたベルナルドだったが、ハンニバルの叫びが彼を現実に引き戻した。
「民間人1名があの2人の近くに! まるで気づいていないかのように向かっています! 全身真っ黒のやつです! 」
ベルナルドは目を凝らした、確かに白兵戦を繰り広げる2人の近くに黒衣の男性らしき影が動いている。
だが、ここから向かうのでは間に合わない。
だが、その時路地の反対側にパトカーが駆けつけるのが見えた。その座席に座っているのは遠くてよくは見えないが。自分の信頼する同僚、ジョージに見えた。
「頼む!ジョージ、間に合ってくれ! 」
「くそ! 民間人が巻き込まれちまう! ソード!署に応援を要請しろ!俺が民間人を救助する 」
ジョージはすさまじく焦っていた、連絡を受けて現場に駆けつけてみればタキシードサムライと容疑者が白兵戦を行っているのに驚かされたが、その場に民間人がいるのは完全に想定外だったからだ。
「おい!あんた早くこの場を離れ..... 」ジョージの言葉はそこで切れた、なぜなら彼の体は黒衣の男によって吹きとばされ壁に叩きつけられていたからだ。
「!! 」その異常事態に唖然とする男たちの方に黒衣の男はゆっくりと向き直り、次の瞬間男の手から衝撃波のようなものが放たれる。
そこでその場にいた者のうちソードを除くすべてが吹きとばされ意識を失った。
「先輩? みんな? いったい.... 」あまりの異常事態にぼうぜんとするソードに向けて黒衣の男は右手を向ける。次は自分の番だ。そう覚悟してかなわぬまでもせめて一撃でもと銃を向けた瞬間だった。
突如、路地を眩い閃光が包んだ。周り一面が明るい金一色で染め上げられ。同時に黒衣の男の姿がかき消えるように消えた。ソードの意識はそこで途切れた。
その閃光が消えた後、現場には何も残っていなかった。バンもパトカーも。
ジョージ・ライアン、ソード・モーガン、ベルナルド・フォン・フリードリヒ、ハンニバル・ジェファーソン、ジョン・プレスリー、カズユキ・ヤマモト。
この6人は忽然とこの世界から姿を消したのである。