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第二話(3) ヤベーやつが仲間になった

「ところで、どこに行こうとしてるんだ?」


 酒場から出た俺はジェシカと離れ、そして不本意にもベルナーと合流することとなり、荷物を持って王都外の馬車ターミナルへ向かっていた。

 王都の中にも馬車ターミナル自体はあるが、王都の街の外周に住む住民たちのために外にも設置されている。

 俺は歩きながら、頭一つ以上も上にあるベルナーを見上げて、動揺を隠せなかった。


「君、本当に何も考えずに俺とパーティ組んだんだな」

「そりゃそうさ、行き先なんざ重要じゃないからな。大事なのは、戦えるかどうかってことな。んで? 結局どこへ」

「一応今のところは帝国へ。武器屋だったら別にダンジョンが近いところだったらどこでも仕事できるけど、調整屋は場所を選ぶからな」


 自慢げに言う彼に呆れつつ、俺は再びそう言いまっすぐ前を向いた。

 なんだかかすかに笑っていたような気がしたが……さすがにそれは気のせいだろう。

 そう思いつつ、内心でふう、とため息をついた。


 結局、ベルナーの押しに負けた俺だったが、一つだけ条件を付けることができた。

 まず、俺といる間はダンジョンをわざと通るようなことはしない、ということ。

 戦いが好きなのは結構だが、俺自身戦いに慣れているというわけではない。

 それに可能であればとっとと帝国に行ってお店を開きたいので、途中でどうしても通らないといけなかったり、この間のようなモンスター襲来だったりを除き、戦いはなるべく避けること。


 しかしなぜか、ベルナーからも条件がついた。

 それは至極簡単。

『必ず調整スキルを俺の武器に使うこと』だそうな。

 まあ、俺とパーティを組んだ理由が、魔法砲の快感が忘れられないってことだし、その条件を付ける理由はわからないでもない。

 別に彼一人でダンジョンに行くのは止めないから、ダンジョンに一人で行く前に調整スキルを使うのは構わない、と思い俺はそれに頷いたのだった。

 なんだか、よくわからない帝国への道中になりそうだ。

 再び内心でため息をつき、俺は馬車ターミナルへたどり着いたのだが――


「へ? 帝国行きの馬車は、全部お休み!?」

「そうなんだよ、兄ちゃん」


 馬車ターミナルの案内係のおじさんは、残念そうに頭を横に振りながら言った。


「この王都と帝国を結ぶ街道に橋があるんだが、一番王都側の橋の機構がイかれちまったんだとさ」

「またなんでそんな急に……」

「そんなに詳しく知ってるわけじゃあないが、最新の技術を使った橋で雷魔法の力で上げ下げするらしいんだが、昨日のモンスター襲来でその仕組みが壊れちまったんだと」


 本当に困ったよなぁ、とかぶりを振るおじさんを前に、一気に背筋に冷や汗が流れる。

 俺もその橋の話は聞いたことがある。

 王都にほど近く、ここからでも見られる広い橋に最新鋭の橋ができたのは数年前。

 もともと上流からの土砂や木々の量が結構多く、季節が変わるときの大雨などで橋が数年に一度崩れてしまっていた。


 それを解決したのがいわゆる可動橋だ。

 単純に土砂が橋げたに溜まらないようにする、というのもあるが、おそらく帝国と何らかの諍いになったときに、すぐに大きな街道を通行止めにできる、というのも採用理由だろう。

 広い橋に架かった大きな可動橋ということで、当時はかなり話題になったものだ。

 そして、たしかにそのときも言っていた。

 人力で動かすにはあまりに重すぎるので、最新鋭の技術を使った、と。

 ……そして、それが壊れた理由が、昨日のモンスター襲来だと。


「これ、俺たちの魔法砲――」

「ベルナー、ちょっと黙ろうか」


 ベルナーがなんとなしに言おうとするのを必死に止める。

 たしかに、昨夜の魔法砲はかなり広い範囲にまで広がっていたはず。

 何せ、王都の南に広がる広大な森、ピエトリの森の全域をカバーするくらい、雷魔法を行きわたらせたのだから。

 だとすると、ほど近いところにある橋は余裕で範囲内だ。

 そしてその雷魔法を発動したのは――俺たちだ。

 衝撃の事実に到達し頭を抱える俺。


「出だしから、困っちまったなぁ……」


 その隣でベルナーも腕を組んでそう呟く。


「本当に困ったもんだよなぁ……王都の上の連中に聞いたところだと、どうやら直すのには1か月くらいかかるそうだよ」


 1か月!?

 1か月もあれば帝国の中心都市である帝都と、ここ王都は馬車ぐらいなら余裕で往復できてしまう。

 でもその1か月封鎖になるのは、おそらく、十中八九、確実に、この間の魔法砲のせいなのだ。

 だってそんなことになるなんて思わないじゃん!

 それにとっとと帝国に行こうとするので精一杯だったし、王都に戻れるんだったらこっちだって王都に戻ったよ!

 だけどあのアホが王都からの追放を王族特権で発令させたから、できなかったんだよ!

 じゃあもう全部あのアホのせいじゃねえか、あのアホーーーー!!!!


 …………と、心の中で悪態をつきまくるが、そんなことをしている場合ではない。

 帝国に早く行って調整屋を再開させなければ、常連の冒険者の人たちの迷惑になってしまう。

 俺はアイテムバッグから地図を取り出し広げ、おじさんに縋りついた。


「お、おじさん! どこか迂回できる場所とかってありますか? なるべく早めに帝都に行きたくて!!」

「あー……そうだなぁ……」


 帝国はこの国の北に位置し、王都のすぐ北には大きな川が流れている。

 だとすると、東か西に行って別の街道にかかる橋を渡る、もしくは流れがもう少し狭いところまで行って川を渡るということになる。


「だとすると西だな。さすがにあの大河が渡れる程度まで上流に行くにゃ、時間がかかりすぎるぜ」

「西か……たしかに、それが一番早く着くところだろうな。だが……」


 ベルナーが首を突っ込み、それにおじさんが頷きながら答える。

 さすが冒険者ギルドの副統括長!

 このあたりの地図は頭に入っているようで、助かった!

 俺は嬉々として王都の西を地図で見る。

 たしかに川の上流である東に行くと、結構な距離を迂回することになってしまう。しかも上流に行くとかなり山のほうになるから、おそらく馬車は使えない。

 それに対して西のほうは、なだらかな土地が広がるのでおそらく馬車まで行ける――と思ったところで、その道中にとあるものがあるのに気がついた。


「…………ん?」


 西のほうに行くためには、一つやや大きな山脈を越えることになる。

 とはいえ少しばかり南に進めば山脈が途切れるところがあり、そこを突っ切る経路があったのだが……


「ここから西に行くには、そのダンジョンを通らないと凄まじい遠回りになるんだよ。それこそ東でも西でも変わらないくらい」

「…………ベルナーさん?」


 おじさんがため息をつきながら言い放つ。

 それを聞くなり俺は、西の経路を提案した彼に、ギギギとゆっくりと首を動かしながら視線を向けた。


「ん?」


 端的な返答ではあったが、その表情は非常に雄弁だった。

 さきほどの酒場で見せた以上に、楽しそうな笑顔を浮かべていた。

次話→3/28 22:00ごろ。

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