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戦国武将がはんなり京都に転生とか、聞いてませんけど?  作者: 澄田こころ(伊勢村朱音)
第三章 すまう

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第十六話 犬のアル

 階下へ降りると、コート姿の母が居間にいた。荷物は少ない。日帰りの予定だろう。


「お母さん、いいかげんおじいちゃんに連絡させて」


「おじいちゃんには、私から連絡したから」


 この家に父と兄は滅多にこない。お正月も私は雅子ちゃんと二人ですごした。母は私のようすを見張るため、今日きたのだろう。


「おじいちゃんの声が聞きたいの。元気な声聞いたらそれでいいから」


 食い下がる私に、母はしぶしぶスマホをかえすよう多江さんに言った。雅子ちゃんの寝室から一番離れた部屋でかける。後ろにはお母さんがたっている。めったなことは言えない。


 コール三回、おじいちゃんはすぐに出た。


「雪深元気にしてるか? 今どこにいるんや。いったい何がなんやら。市香もあるはんもみんな心配してんねんで。おまえがこの家、出たいなんて言うわけないのに、貴美子がそういうんや」


 居場所を教えたら、無理やり押しかけるとお母さんは思っているのだろう。愛知にいるとは言えない。おじいちゃんを巻き込むわけにはいかない。


「ごめんねおじいちゃん。そうだ犬のアル元気?」


「待ちや、あるはんもここにいてはるから、かわるわ」


「雪深、大丈夫だよ。かならず迎えにいくから」


 切羽詰まった声が胸にいたい。私あなたにひどいこと言ったのに。許してくれるの?


「おじいちゃん、このあいだアルが粗相しちゃって、私頭たたいたの。ごめんね、アル」


 私の懺悔に電話の向こうで何か言っていたが、もう何も言わずに切った。


「犬なんて飼ってたの?」


 母がすかさず探りをいれてくる。


「うん。捨て犬拾ったの。雑種なのにすごく毛並みのいい犬なんだ。金の目をしてて」


「そう、ここで犬を飼いたかったら、飼ってもいいわよ。おばあちゃまも喜ぶかも」


 私は首を振りながら、スマホをかえした。


「それから、大学もやめなさい。おばあちゃまもあなたのこと気にいってるんだからここにずっといるといいわ。一色さんと結婚するまでここで花嫁修業もできるし」


「一色さんは、ここから大学に通ったらいいって言ってたよ!」


 冗談じゃない。大学までやめたら、ここに完全に閉じ込められる。


「結婚相手も決まったんだから、もうお勉強はいらないでしょう。お母さんのいう事を聞いていたら大丈夫よ。雪深は昔から不器用なんだから、失敗しないようにお母さんがちゃんとしてあげる」


 話がまったく通じない。一色さんと結婚したくないとはっきり言っても聞いてくれないだろう。母の理想を振りかざされ、ねじ伏せられるに決まっている。


もう母との意思疎通は無理なのだ。黙った私をみて、肯定したと判断した母は多江さんを呼びこの家の差配を命じる。


「来週に、植木屋さんを頼んであるからお茶とお茶菓子お願いね。それからお母様の病院の付き添いと……」


 そう言いながら、多江さんと共に台所へいってしまった。母は雅子ちゃんが起きる前にそうそうに帰っていった。


「あのおばさん、もう帰った?」


 寝起きの雅子ちゃんは不機嫌そうに言った。帰ったというと鼻の上にしわをつくる。


「あのおばさん、笑顔でしゃべっとるけど、えらい嫌そうにしとるのがわかる。あとめったに会わんけど、おじさんと顔のいいお兄さんも、みんな嫌い」


 そう言って、私に抱きついてくる。もうみんなおばあちゃまの家族じゃなくなったんだね。白髪の頭をなでてやると、しわがれた声で言う。


「この家にいれば、何にも怖にゃーで。ずっとここにいようね」


「もうすぐ病院にいかないとだめだって」


 私がそう言うと、何かいいことでも思いついたのか、ぱっと顔をあげニコニコと笑う。


「ゆきみちゃん、病院ついてきて。いっつも一人でいくの怖いわ」


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