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戦国武将がはんなり京都に転生とか、聞いてませんけど?  作者: 澄田こころ(伊勢村朱音)
第三章 すまう

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第九話 兄と弟

「食べ物を持ってきてくれた時、ドアスコープからのぞいてたら、袋を置くだけですごく悩んでるんだ。かわいくてかわいくて。ドアを開けて抱きしめたい衝動をおさえる……」


「もうそういうの大丈夫なんで。話が長すぎるっての」


 アルはまだ雪深への愛をせつせつと語りたかった。

 それなのに憐憫の情を雪深の顔ににじませた勘十郎が、口をはさんでくる。雪深への愛が本人に拒否された心持ちになるが、中身は弟だと肝に命じ無視する事に決めた。めげずに口を開きかけた途端、またしても弟に邪魔をされた。


「黙ってようかと思ったけど、やっぱ言うわ。雪深あの家を出るつもりだ」


「なぜそれを早く言わない!」


 四百五十年ぶりに弟をどなりつけた魔王の迫力におされ、勘十郎はしぶしぶ雪深の事情を話し出したのだった。


 ドン! カッティングボートに果物ナイフが突き刺さった衝撃が、瀟洒しょうしゃなリビングに響き渡る。


「今なんて言った……」


 すごむアルの怒声に蹴落とされ、珍しく勘十郎はその顔色をうかがっている。


「だから、兄上の残虐行為のネガキャンを……」


「そこじゃない!」


 するどい声を飛ばすと、勘十郎は肩をすくめた。


「あー、雪深に今の方が自然で好きって言いやがった」


「僕でさえまだ、雪深に好きだと伝えてないのに。なんなんだその垂れ目は!」


 怒りにまかせ、突き刺した包丁を勢いよく引っこ抜く。抜かれた包丁はカランと華やかな音をたて床に落ちた。


「いや、順番すっ飛ばして告る前にプロポーズしたの誰だよ」


 まだ衝撃から立ち直れず、うなだれシンクのへりを握り締めているアルに、勘十郎はさらに追いうちをかけてくる。


「いまは雪深の人生なんだからだれを選ぼうがかまわないし、いやむしろ、兄上以外なら大歓迎。口出す道理はないんだけど、あの垂れ目たぶん転生者。それも、兄上に恨みを持つ奴だ」


 その言葉を聞き、正気にもどったアルは胸に手をあて言った。


「心当たりがありすぎて、誰かさっぱりわからん」


「だよな。俺も知らない奴だ。だけどなんとなく気配でわかる。戦国の気配を色濃くしょってやがるんだあいつ。すごい偶然だけど」


「偶然とは言い切れまい。あの戦乱の世に覇道をゆくものはみな、この洛中を目指していた。そんな土地に転生するのは道理だろう」


「なるほど、そうかもな。だからここで出会うのか……」


 勘十郎はアルの言葉に納得し、何か考えでもあるのかあごをつまむ。そんな勘十郎を横目にアルは、ハッとして早口でしゃべり出す。


「まてっ。その垂れ目名は何と言った?」


「一色だよ。府会議員の親父の秘書してるって」


「それは、一色利夫さんのことか?」


「そうそう、なんかそんな名前だった」


「一色さんはお茶のお連れだ。僕の顔を知っているし、親しい間柄といってもいい。それなのに写真を見て何も言わないわけがない。雪深にくぎをさす前に僕に言うはずだ」


「どんなけじじいのウケがいいんだよ。てか兄上、斎藤のじじいにも気に入られてたよな」


 尾張の隣国美濃の領主であった斎藤道三。一介の油売りから、戦国大名にまで上り詰めた下克上を体現したような人物。信長の正妻お濃の方の父であり、支援者でもあった。


「そいつ、一色さんにだまって単独で動いてるんじゃないか。息子には会ったことはないが、何か裏があるな」


 アルの恋バナに退屈しきりだったの勘十郎は、何やら不穏な雲行きに身をのりだす。


「おもしろくなってきたな、兄上」


 智勇を競う戦国武将の血が、時をへて騒ぎだしたようだ。


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