396話 落ち着きの初詣
「じゃあ、私は帰るね。何かあったら電話してね。」
「ありがとう。」
また一人の静寂がそこにはあった。結花が帰ってくるのは1月30日…そこまでまだ3週間もある。卒業試験を受けた人が落ちると、学校で授業をする。受かると学校で論文を書く。論文は学校ごとに違うもののたいてい1.5万文字が普通らしい。しかし…卒業者はどうするのだろうか。今年は3月まで暇だ。
「暇なときは料理するより、どこか出かけた方がいいのだろうな。」
こうして暇になってしまった飛翔は、バスに乗って見知らぬ街で降りる。
「これ読めないな…浄水公園から北に出て…府…馬?」
「ふまって読むんだよ。」
「ありがとう…って初音さん!?」
「やっぱり飛翔だったか。どうした?こんな街に来て。」
「あぁ…暇なんですよ。」
「論文、順調なんだろうか。」
「…初音さんも知ってるのですか?」
「府馬と言ったら神社だよ。学問の神様が祀られているさ。」
「へぇ、神楽阪だけじゃないんですね。」
「そうだな。ここで天使たちが無事であることを願ってるんだ。」
「ここって天使ゆかりの地なんですね。」
「そうなんですよ。」
「…あれ?ここの神主じゃないですか。」
「申し遅れました。府馬神社神主の能登路縁と申します。」
「はい。こちらは神崎飛翔、そこそこ有名人だ。」
「わかりました。本日はお参りで帰るのですね。」
「そうだ…そうだが、折角だから先代の天使長の話をしたい。」
「えぇ、いいでしょう。」
先代の天使長は、天使と悪魔の仲を取り持ち、現代の関係を築き上げた偉大な人物である。
「彼女が好きだったのが、この府馬という街でありこの府馬神社だったのです。あの日、あの人が全て奪いましたが。」
「それって…誰ですか?」
「一人…一人静です。」
「…花の名前ですよね?」
「そう、花の名前だ。本名はわからない。ただ、先代の天使長は彼女に殺された。これだけは真実だ。」
「…まぁ、彼女がいたからここは天使にとってのメッカと言えるのでしょう。」
「そうだな。天使になったものは人生で一回はここに来るべきだと思う。まぁ、来たのは魅華子だけだがな。」
「そうですね。でも、今年は天使から二人も卒業生が出ましたよね。」
「遥希と結花だな…そうだ、縁は天使は増えると思うか?」
「はい。今年の転生予定の人数は100を超えるみたいですし、学生もそれ以上に増えますもの。魅華子さんと宏さんが魔王と一緒に面接をやってますよね…神の方は誰がやっているのだろうか。」
「帆花さんとかじゃないでしょうか。麻依さんの姉で…」
「伏見家じゃないですか…まぁ、おそらくあの人でしょうけどね。」
「そうですね…あの神様は…」
「それって平民の僕たちは会えますか?」
「会えるよ。きっとね。」




