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作者: 電悩過敏症

※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、地域は関係ありません。また、作中には現実と異なる貞操観念と価値観が設定されています。

 これは今から少し先の未来、より便利で快適な生活が保証されるようになったある国の話である。


『起きてくださいマスター』

「うーん」


 今日もいつもの朝がやってきた。健太郎はいつものようにベッドから起き上がり、部屋を明るくして歯を磨く。彼が住んでいるのはスマートマンションと云う狭いワンルームで寝室やダイニングへと合理的に変形する個人特化の高級住宅だ。ベッドは起きた瞬間に壁の中へと引き込まれ、代わりに洗面台が出てくる。健太郎自身は一歩も動く必要はなかった。


「歯ブラシそろそろ変え時じゃないか?」

『そうですね、新しいものを注文しましょう。同じ型番でいいですか?』

「ああ、たのむ」


 ホームヘルパーAIと話しながら健太郎は口の中でせわしなく動くロボット歯ブラシを吐き出した。ロボットアームに受け止められたそれはすぐさま洗浄・消毒されて壁の中に格納されていく。そう、さっきから健太郎は立ったまま何もしていない。朝の支度は全てAIとそれに操作されたロボットがすることになっている。口の中が綺麗になると、次は壁の一部が空いてトイレが姿を見せる。


『尿意指数が80を超えています。そして便意も』

「ああ、たのむ」


 健太郎がそこに入ると一旦扉が閉まり、暖色系の明かりの元でプライベートな場を提供してくれる。用が済んだら再び部屋への扉が開き、今度はシャワー室への扉が開いた。


『自動洗浄モードを開始します』

「む」


 それはまるで人間洗車機のようだった。きめ細やかなシャワーとブラシによって健太郎を隅々まで洗い、温風で爽やかに乾かしていく。彼は憮然とした表情でAIに文句を言った。


「やはりシャワーはリラックスして浴びたいなぁ。朝のこれは作業的で嫌だ」

『しかしマスター、朝はあまり時間が取れません』

「わかっているさ。ちょっとした男のこだわりってやつさ」


 AIのおかげで体がすっきりした健太郎はこれまた壁から出てきた朝食を食べ、"スーツ"を着せてもらって外出の準備をした。この"スーツ"はスマート素材でできており、肌を圧迫させず皮膚呼吸も阻害しない他、色やデザインが気分によって変えられ、筋肉繊維を刺激した自動歩行機能も搭載されている。


『行ってらっしゃいませ』

「うむ、行ってくる」


 準備が終わるとAIが妻のような口ぶりで挨拶し、健太郎も夫のような口ぶりで部屋を後にする。もっともホームヘルパーAIは彼の脳とリンクしているため、外出先でも会話はできたりする。一方、健太郎が居なくなった部屋では、すぐさま掃除と消毒が始められる。全自動のメンテナンスフリーなのだ。

 部屋の外は透明のセラミックドームで覆われていて、室内にいるのと同じ環境である。そのため防寒具の類は一切着る必要がないが、健太郎は顔以外を覆う“スーツ”の上にサラリーマンの名残りであるフォーマルスーツを着ていた。

 規則正しく勝手に動く足から意識をそらして健太郎は空を見上げる。人や物を運ぶ無数のクワッドコプターが高速で行き交っている。


「エアカー通勤ってあこがれるよな?」

『マスターの職場はエアカーで向かうには近すぎます。それに”パブリックカー”は乗りたくないからあそこを選んだのでは?』

「そうだよ、やっぱ”マイカー”がいいよね」


 昔と違い”マイカー”は少数派だ。ここは絶妙なタイミングで乗り合わせる公共の”パブリックカー”で目的にへ向かう。AIによって完璧に管理された空の交通は渋滞ゼロで無事故である。それ故市民はマイカーの所有を制限されており、取得するには厳しい国家試験が課せられる。一台当たりの価格だって馬鹿にはできない。


「よしついた」

『─就業中は私語厳禁です─』

「わかってる」


 職場に着くと彼と同じように“スーツ”を着た同僚と目が合った。性別は女性だった。“スーツ”には体形の凹凸を一定にそろえる機能もあり、女性特有の胸の起伏はわからなくなっている。その上衛生面の都合で頭髪を含めたあらゆる場所の毛は全て処理されているので、眉のない顔と声だけが唯一の判断基準だ。尤も個が重視されたここでは公共で男女の区別はされず、すべて個として扱われているので性別を知る必要はない。それでも、男である健太郎としてはどうしても気になってしまうところではある。


「よう、同志。今日も頑張ろうな」

「……」


 就業開始前ということもあり気軽に挨拶をしてみるが、無言で見つめられた後すぐに目を逸らされた。心の中でヘルパーAIに窘められる。


『─変な目で見てはだめです─』

「─わかっているよ─」


 この時代の都市では強い純潔思想が原則となっており、厳しい交際制限が設けられている。市民は皆仕事以外の無駄な交流をせず、したとしても浅いメル友程度の関係までしかならない。ましてや性的交際などご法度であり、例え本人にそのつもりがなくとも、それを匂わせる言動をしただけで罰せられるのだ。最悪の場合、都市に居られなくなる可能性もある。


『皆様、今日もお仕事頑張りましょう』

「「はい、ボス」」


 職場用の抑揚のないAIの掛け声に応えて健太郎は仕事を始める。この時代の人間の仕事はAIの指示を得ながらロボットでは至らない作業を遂行する。健太郎の場合はビッグデータにない、人間ならではのアイデアの入力である。とりとめのない文章を書いたり、頭に思い浮かんだ脈絡のない絵を描いたりする簡単な仕事だ。


「─静かだな─」

『─集中してください─』

「─集中しているだろ。手は止まっていないよ─」

『─む─』


 仕事中は当たり前だが私語は一切ない。定期的に与えられる休憩時間でも談笑することはなかった。これは規則で制限されているというよりも、皆健太郎のように心の中でヘルパーAIと会話して満足していることの方が大きい。


『─マスターは体格に優れていますから力仕事……例えば農業とかも向いていると思われます─』

「─農業ねぇ、ロボット農場があるじゃないか─」

『─人間が営む昔ながらの農業の方が質がいいと聞きます─』

「─何にせよ汚い仕事はヤダな─」


 田舎の方ではAIやロボットに頼らない農業や人の手を使うものづくりの仕事が残っているそうだが、健太郎は死んでもやりたくないと思っていた。所謂3K(危険、汚い、きつい)と呼ばれているし、ロボットにできる仕事をわざわざ人間がする意味が理解できないからだ。


「─それに結構他人と関わるんだろ?─」

『─はい、田舎の仕事は大勢で助け合ってするため、個より集団が優先されます─』

「─滅私奉公、とんでもない世界だ─」


 個が重視された世界では集団の為に自分が犠牲になる「滅私奉公」は否定的なニュアンスでとらえる人が多かった。健太郎もそのうちの一人だった。


『今日はここまでです。皆様お疲れさまでした』

「「はい、ボス」」


 仕事を終えて健太郎は無言で同僚と別れ帰宅する。昔と比べれば労働時間は少ない。多くの生産活動をAIとロボットが代替して人間の雇用が削がれたせいである。生活自体はベーシックインカムによる支給で保障されているが、より豊かで充実した生活を望むなら狭き門の”求人”を獲得しなければならない。健太郎はそんな狭き門を抜けた云わばエリートである。


「ただいま」

『おかえりなさいませ、マスター』


 部屋に帰ると健太郎は"スーツ"を脱がしてもらい、すぐにシャワーを浴びる。今朝とは違う、雨のように上から下に落ちる水滴に流れに、健太郎はうっとりと目を閉じる。


「やっぱりこれが一番だな」

『洗浄効率は落ちます』

「効率じゃないんだよ、これは。自然に浴びるという感覚が大事なんだ」

『せめて横からの水流も許可してください』


 健太郎が了承すると側面の壁からもシャワーが噴き出し、彼の体の隅々まで洗い流す。最後に温風で乾燥した後、健太郎は部屋に戻って壁から出てきたソファーに飛び込んだ。部屋では基本全裸で過ごすのが基本だ。部屋用の服はファッションとして市場に出回ってはいるが、健太郎にとっては邪魔でしかなかった。


『マスター、IVFパートナーのおすすめが来ています』

「どんな子だ」


 部屋の白い壁が画面となり、女性の胸像と簡易的なプロフィールが浮かび上がる。しかし個人を特定できないようにするため、女性の眼元と口元には黒帯がかけられていた。

 IVFパートナー制度。それは男女の体外受精(In Vitro Fertilization:IVF)を仲介する全国規模の”子作り”制度である。パートナーを決定すると、予め採取した性細胞がバンクから提供され、試験管での受精が行われる。勧められるパートナーの選定は原則無作為だが、ゲノム情報に基づく相性を逐次検証するオプションが備わっていた。


「ゲノム検証は?」

『最良の値が出ています』

「俺の上限と実績は?」

『マスターの生涯における遺伝子提供上限は二人。現在マスターの遺伝子を受け継ぐ個体は一人です』


 つまり健太郎は生涯で最大二人まで子供をつくることができ、現状は別の女性と一人の子供を儲けている状態である。個が重視されたこの時代、子供は大人にとって遺伝子を継承した他人に過ぎず、養育はすべて政府と保育ロボットが担当することになっている。そのため男女ともに養育に気を取られる心配はないが、健太郎はあくまで男のこだわりとしてパートナーを慎重に選びたかった。


「待てよ!ここに“自然出産希望”と付け加えられているぞ!?」

『あ……そうですね?』

「危ない危ない、この子はなしだ!〈拒否〉だ!」


 健太郎は飛び掛からん勢いで〈拒否〉のボタンをタップすると表示をすべて消した。多くの場合、造られた受精卵は人工胎盤で培養された後、バイオバッグと呼ばれる人工子宮で胎児の間育てられ、開封されて”出産”するのが主流だ。そのほうが女体と赤子の安全を守れるし、男女平等の観点からも最適だからだ。

 しかしその一方、都市から離れた一部の田舎には女体に子を孕み出産する行為は"性域"と言って自然出産を切望する者達がいる。彼らが支配する土地では自然妊娠さえ推奨されるほどで、その不健全な思想は都市では危険分子と見なされている。そのため自然出産に関わる人間は、発覚次第都市から追放される決まりとなっていた。


『一応、プライバシーの確保はされていると思いますが……』

「システムではそうだけど、女の中には男を特定してくる奴もいるんだよ!俺のSNS仲間の一人もそれで田舎に行かざるを得なかったんだ!」


 ここと違って田舎のほうでは先進的なインフラが整わず、スマートマンションも少ない。そのため昔ながらの住居で複数人数の同居を認めているのだが、そこは都市のような生活条例が存在しない無法地帯である。おまけにドームにも覆われていないから不潔で病気感染者も出ており、長く住んでると顔や体がしわくちゃに劣化していくという。同じ国なのにまるで発展途上国のようだ、と健太郎は思っていた。


「あそこは“野生化した人間”の生息地さ。自分だけの空間や時間を削がれる、不自由な場所だよ。自然出産の概念は教科データを見て知っているが、動物の出産とそっくりじゃないか!自然妊娠に至っては……」

『わかりました。今度からは自然出産希望者の相性係数を低めに設定します』


 健太郎の言葉を遮るようにヘルパーAIが要望を聞き入れる。興奮していた彼はほっと息をついて矛を収めた。


「たのむ、それと田舎出身もな」

『住所は無作為なのですが……』

「そこも相性なんちゃらで何とかしてくれ」


 健太郎が背もたれに体重をかけると、ソファーはベッドの形に変形し彼の体を優しく横たえさせてくれる。その感触にほっとして眠りにつこうとしていると、突然通信を知らせるビープ音が鳴った。


『職場からの連絡ですっ』

「なんだ?」

『住居者No.195M0L1さん、今日限りであなたはビッグデータ補完アイディア入力者の離職が決定しました。ではご機嫌用』


 職場用AIからの無機質な声が部屋に響き渡る。健太郎は少しの間呆然としていたが、すぐに気を取り直した。


「明日からここで君と一緒に居られる時間が増えたな」

『そうですね。私もマスターと居られてうれしいです』


 離職のショックはないと言えば嘘になる。しかし一人の人間から無限にアイディアが出ることはないし、他の市民にも”求人”を受ける権利がある。何より生活自体はベーシックインカムで保障されているから困ることはない。彼はAIに注文を出した。


「バーチャルワイフ起動。場所は開放的なあの場所で!」

『また、あの場所ですかぁ?もぉ、マスターは変態さんですねぇ?』


 突然甘ったるい口調になったAIが応えると狭い部屋が突然広い野外の草原に早変わりする。もちろんこれは床・壁・天井の画面に投影された映像で、プレジャー用にAIが作成した仮想空間である。"ベッド"もその一部になり、表面が柔らかい草の感覚を再現する。空調からも爽やかな草の香りが漂ってきた。


『お待たせしましたーますたぁー』


 甘いAIの声と共に現れたのは裸の女性のホログラム〈クリン〉である。健太郎の好きなところをすべて盛り込んで、AIが作成した仮想現実のカノジョだ。華奢な体に豊満な胸、顔は幼さが残る少女顔で衛生面上ばっさり剃られる髪が腰まで伸びている。


「今日も綺麗だよ〈クリン〉……愛してる」

『私もです、マスター』


〈クリン〉が草原に寝そべる健太郎に膝枕をする。ホログラムなので実際に触れ合うことはできないが、スマート素材が仕込まれた枕が変形して、膝枕を再現してくれるのだ。ロボットアームが彼女の手と連動して、彼に夕食を食べさせてあげる。


「俺は幸せだ〈クリン〉」

『私もです、マスター』


 健太郎は口に入れられたものをゆっくりと咀嚼した。彼が食べる食事は都市周辺のロボット農場で栽培された素材を使っており、調理もオートメーションで制御された工場で作られている。その味はほんのり甘い程度で苦みや辛味は一切ない。しかし、幼いころから食べ慣れている健太郎に不満はなかった。

 食後、口の中を綺麗にしてもらった健太郎は決意を新たにする。


「俺、明日から仕事を探すよ」

『おや?どうしてですか?』

「君のボディを作りたい。細部まで本物らしく」


 人間そっくりなヒューマノイドロボットはすでに実用化している。しかしとても高価であるために台数は少ない。ベーシックインカムで得られる金額では一生かかっても貯められない金額なのだ。


『道のりは遠いですよ』

「それでもやるさ」

『うれしいです、マスター』


 ロボットアームに優しく頭を撫でられ、健太郎はゆっくりと目を閉じる。こうしていると保育ロボットに育てられた頃を思い出す。あの時も〈クリン〉のような優しい声だったと考えているうちに深い眠りについた。


『おやすみなさい、あなた』


 忠実で愛らしい“パーソナル”ホームヘルパーAI〈クリン〉はあどけない表情の主人を見守り続けた。まるで本物の妻のように……。





 同じ頃、田舎のある集合住宅の一室では昔ながらの夫婦がベッドの上で語り合っていた。妻は愛する夫に微笑みかける。


「康太郎さん、ここにすっかり馴染んできたわね」


 康太朗と呼ばれた夫は、昔を懐かしむような顔をした。


「ああ、ここに来た時には考えられなかったよ」

「何度も"都市"に帰ろうとしていたものね」

「全くあの時はどうかしてた」


 そう、康太郎はかつて“自然出産希望”の女と子を成したために追放された都市の人間だった。田舎に放り込まれ碌に生活することもままならなかった彼を救ったのは子を身籠った妻だった。


「本当に大変だったわ」

「ああ、お前には迷惑をかけたよ」


 女は大きくなるお腹を抱えながらも康太郎に生活の知恵や常識を教えた。そのかいあって子が生まれる頃には一応の大人として生活できるようになったのだ。今も子育ての傍ら、仕事に赴く彼の生活を支えてくれている。


「今も都市に戻りたい?」

「いや、懐かしく思うことはあるが、あんな場所に戻りたいとは思わないさ」

「そう?何不自由ない生活ができると聞いているけど?」

「だからだよ」


 仕事や生活の全てをAIとロボットにやってもらう反面、健全さと孤独を強いられる都市での生活。食事も味気なく、生活に刺激と言えるものが一切なかった。それしか知らないうちは満足していたが、田舎に来て多くのことを知った今は違っていた。


「あそこは“人間の飼育箱”さ。機械に育てられて、機械に生かされて、機械に慰められる。人肌との接触のない地獄のような場所さ。その証拠にあそこに住む者は田舎よりも早く成長する上に寿命が短いんだ」


 都市で生まれた人間は高密度な栄養を投与されることで田舎の二倍の速さで成長する。そして30代のうちに“若い容姿”のまま生を終えるのだ。彼らは田舎のように人が100歳まで生きることをそもそも知らされていない。


「康太郎さん、うちの曽爺ちゃんの歳聞いてひっくり返っていたわよね?あたしも康太郎さんの年齢聞いて驚いたわ。まだ十代であたしより一回りも若いんですもの」

「全てAIが操作していたんだ。都市から出なければ俺は短過ぎる一生を過ごすところだったんだ」


 子供の時間が短ければそれだけ扶養期間を短縮でき、若くして寿命が尽きれば介護の必要もない。AIにとっては合理的な人生設計だが、人としての尊厳を踏みにじられた康太郎は都市の在り方に怒りさえ覚えていた。


「俺、お義父さんの〈性域同盟〉に入るよ」

「康太郎さん……」


 康太郎の義理の父、即ち女の父親はAIやロボットに頼らない農業をしており、栽培しているものもAIが不要と判断した香辛料や煙草などである。それで巨万の富を手に入れた彼は、男女が肌を重ねて次世代を育む伝統的行為を"性域"と訴え、反政府団体である〈性域同盟〉を設立した。彼の農地を借りて仕事をしている康太郎も常々誘われていたのだ。


「ついに決心したのね」

「あの子が大きくなるのを見て思ったんだ。人は皆人間らしく生まれ、成長し、恋をする権利がある」


 康太郎が目を向けた先にはこの地に来て授かった愛娘がすやすやと寝ている。また同時に彼の心の中には未だ都市に囚われているSNS仲間の存在が浮かび上がっていた。娘の未来のためにも、かつての仲間達のためにも、AIから"性域"を護らなければならない。


「うふふ、もう立派なお父さんね」

「それを言われると照れるな……おやすみ、経瑠子へるす


 明日も仕事で忙しいと考えているうちに康太郎は眠りについた。一方、妻は身体をゆっくりと起こすと、彼の頭に手を乗せてそっと撫でた。


「おやすみなさい、あなた」


 忠実で愛らしい妻はあどけない表情の主人を見守り続けた。正真正銘の妻として。

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