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04 不協和音

 男はシド・ヤクタというルルティアの家の近所の青年だった。

 ルルティアは素養がある村人に簡単な魔法を教えていて、シドはその村人の内の一人。アル・アリソンもその魔法教室参加者の一人らしい。





 騒動は収まったがなぜか三人で次の被害者の家を訪問することになり、今現在ルルティアを先頭にして男二人肩を並べて一緒に歩いている。





 視線が痛い。

 すれ違う村人からもだが、何より真横から。


 シドはわたしを見張ると言い張った。

 何を勘違いしているのかこいつはわたしを目の敵にしているらしい。


 頭半分ほど低いシドの顔を見下ろす。

 シドがたじろいだ。


 なんでこんなに怖がられるんだ。

 別にいいけど。


「シドだったか?」

「っ、勝手に呼び捨てにするな!」


 警戒している猫みたいだ。毛を逆立てて威嚇している。

 わたしは声をひそめてシドの耳に囁いた。


「ルルティアに気があるのか?」

「ななななな何をっ!!!」


 突然大声に驚いたルルティアが振り返った。


「ど、どうしたの?」

「いや、シドが「うわあああああ!!!」


 シドの叫び声で掻き消される。


「な、何でもないんだ!気にしないでくれ!」

「う、うん」


 必死の言い訳に、ルルティアは深く問わないことにしたらしい。よかったな。

 このまま誤解されていると後から面倒なことになるに違いないからな。

 ここではっきりさせておこう。


「わたしとあの子の間に、お前が気にするようなことは何もないぞ」

「だから、な、何を言ってるんだ!俺は別にっ!」


 顔を真っ赤にして否定しても説得力は全くない。


「安心しろ」

「うるさい!だから!俺は!」

「もう!二人とも静かにしてください!」


 わたしは叫んでないぞ。









 いつの間にか次の被害者の家に着いていた。

 ルルティアがドアを叩いた。


 出て来たのは男で、ルルティアと話すと中に入れてくれた。





 ベッドに横たえられていたのは女とまだ小さい少女だった。


「三日前いきなり家内が…。しかも娘まで…」


 俯きがちの顔には濃い疲労があった。

 妻と娘が倒れてから一睡もしていないのかも知れない。

 伏せっている二人よりも彼の方が顔色が悪く今にも倒れそうだった。


「お体は大丈夫ですか?」

「私のことはいいんです。それより家内と娘を…」


 ルルティアは魔法で体を調べ、首を振った。


「二人とも眠っているだけです。悪いところはありません…」

「なら!何故二人は目を覚まさないんですか?!」


 男がルルティアに掴みかかるのをシドが阻んだ。


「落ち着いてくれよ!」

「魔法で何とかできないんですか!?そのための魔法でしょう!?」


 ルルティアは男から目を逸らし手に気付け薬を握らせた。


「これを飲ませて上げて下さい…」

「気付けならもう飲ませました…っ。でも二人は目覚めなかった…!」



 部屋に沈黙が流れた。



「聞きたいんだが、」


 今まで一言も話さなかったから忘れられていたのか、全員の目が一斉に向けられた。


「二人が倒れる前に何か気づいたことはないか?」

「…いえ、特には。…ああ、見間違いだと思いますが何か黒いものを見ました」

「黒いもの?」

「ええ。倒れた家内の近くで見たんですがすぐに消えてしまいましたし、娘が…苦しみだしたので…それどころではなくて…」

「……」



 再び沈黙が流れた。



「そうか。邪魔をしたな」


 聞くべきことは聞いた。被害者はアル・アリソンとこの二人だけだ。もう回る場所もない。つまり後は考えるしかない。


「おい待てよ!他に言うことないのかよ!」


 さっさと家から出ようとすると、後ろから呼び止められた。


「ここにいてすることもない。言うこともない」

「お前っ!」


 掴みかかろうとしたシドの手をかわす。

 睨まれたが流した。


 これ以上ここにいても、彼が辛くなるだけじゃないか。

 支えるなんてことは赤の他人のわたし達にできることじゃないし、彼だって望んでないだろう。



「いえ、いいんです…。取り乱して、すみませんでした」

「いえ!あの、お気になさらないでください…!」


 家主の許可も貰ったので家から出る。


「お前っ!」

「シド!」


 ちょうど家から出た所でシドに胸倉を掴まれた。

 シドとわたしはほぼ同じ身長だが、掴まれると首が詰まって苦しい。


「お前!人を気遣うこともできねぇのかよ!」

「…」

「やめて!」


 ルルティアに縋られシドの手が離れた。

 服がシワになってる。これ借り物なんだぞ。もっと大切に扱ってくれ。

 服を直すとシドの視線がますます強くなった。何故だ。


「ルルティア」

「は、はい!」

「軽率な行動は慎め」


 空気が凍った。だが続ける。


「魔法を万能だと思わせる態度はお前に他者からの信頼だけじゃなく、責任をも与える。お前には信頼に応えられるほどの力があるのか?」

「私は…っ!」

「てめぇ!」

「ただの忠告だ」


 ルルティアは俯き、シドは肩を怒らせ、わたしはただ彼らを見ていた。





 誰も声を発さなかった。









久しぶりの更新です。申し訳ない。

書き方について悩んでました(笑)

もうこれについてはこのまま一人称+三人称もどきで行きます。

三人称になんて直してやんない。

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