表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

勇者さまと駆けっこ 其の九


「私も、あなたに似ているのです。この立派な翼を広げ


 て大空を手に入れようとも、ご覧……」



 鶴はそう言って一番松の頂きを指差しながら、その思い


 を語り出した。




「──あの一番松の気高きことを。と言っても雲の上に(かす)


 んで見えやしないが。私は鶴に生まれた以上は、世界一


 の松の頂に住んで見せると、仲間の止める声も聴かずに


 故郷を後にして来たのです……」




 そして、まさしく世界一の松の木に巡り逢えた事を鶴は、


 わたしに感慨深く打ち明けてきた。




「でもね、その喜びも束の間だったよ」



 束の間? 


 生涯かけて求めたものに巡り逢えたのに、その喜びに何ら


 かの障害があったように哀しい目を見せる鶴にわたしなど


 がかける言葉もなかった。





「あの一番松の頂上へと急上昇しました。時には翼を休める


 為に大きな枝に(つか)まり呼吸を整え、また天空を目指しました。


 次第に空腹に見舞われて、仕方なく地上に舞い戻り、腹ご


 しらえをして飛び立ちましたが、中腹部に来るとまた同じ


 ことの繰り返しでした」




「……」


 夢への道のりは鶴たちが思う程、平坦では無いと言う事か。




「ここに来て、出会った仲間と協力し合って同じ夢を追いま


 した。仲間の存在は一筋の希望となり、励みとなった。ど


 うにか雲の中へと姿が消えた仲間達でしたが、仲間の姿を


 再び目にしたのは、私が空腹を満たしに舞い降りた川の(ほとり)


 でした。


 息絶え絶えになった仲間は私にある言葉を託して、夢半ば


 で私の腕の中で逝ってしまった」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ