勇者さまと駆けっこ 其の三
な、な、なんなんだぁコイツはぁ!?
そう思っていると、新たな言葉を追加注文した覚えも
ないのに押しつけがましく吐いてきたのだ。
「君の今の生活は全て相対的な幸福で、いずれ崩れ去る
だろう。食料は皆、子分がかき集めてきたものか……。
子分の結束がままならない今、自給自足の生活で何とか
飢えを凌いでいる始末だな」
大きなお世話だよ!
誰のせいでこうなったと思っている。
上から目線でえっらそうに!
「天下と有頂天は別物でね、それを天下と錯覚した地位は
すぐに果てる。仲間を子分と称し、他を見下す自分勝手
な性格。もうすぐだ、本当の不幸という壁に当り、自分
を見つめ直す時が来るのは」
おいらが!?
このおいらが不幸だとでも言うのかぁ?
「何を根拠にそんなコトを言ってんだ?」
「性根が深くまで歪曲していなければ、近い内にまた出会
うだろう。縁を以て春の理を知るのだ。まずは、冬の理
を知る事になるだろう……」
ことわり?
今のおいらが不幸で真冬のように寒い存在だと言うのか?
「どうして再び出会うとか言い切れるんだぁ? おいらは
おめぇなんかにゃ用はねぇんだよ!」
「仏の顔も三度までと言うではないか……ふっふっふ」
なんなんだ?
「畑のカゴにもサンドマメ? なんなんだ……」
そう言って、デカい図体のソイツはどこかへ行ってしまった。
数か月後、おいらは以前よりもデカい態度を改める様になっ
ていた。
おかげであれだけ盛んだったおいらの暴走族「金銀一家」は
解散寸前だった。少数の親衛隊と共に、今日も縄張りで朝っ
ぱらから「ブーン、ブーン」と、ひとっ飛び。
朝飯前の当たり前運動会だ。
昼飯前には、エサを求めて食卓の笑顔に急接近だ!
(……読んで下さってありがとう)