プロローグ 『始まりはツミ』
――あぁ終わった。
教会で告げられる話を両親は青ざめた表情で聞いていた。
冷たい汗が流れ、呼吸が乱れる。
まるで誰かに頭を殴られたようなそんな衝撃を受けていた。
「――の加護を授かっています、大罪の加護です。」
大罪という言葉だけが頭に残った。
6歳になったばかりの自分でも簡単に理解できてしまう。
意識が朦朧とし絶望感に潰されそうになる。
――僕の加護は悪い加護なんだ
物語に出てくる英雄達は決まって特別な加護を授かっている。
さっきまでそんな英雄達に憧れ、特別な加護を望んだ少年が授かっていたのは『逆』だった。
物語に出てくる悪役達が決まって授かっている忌み嫌われる加護であった。
「…な、なんで」
普段は優しい母の声がこの時だけひどく悲壮に聞こえた。
「そんな大罪聞いたことがない、ふざけるな!!!」
生まれて初めて聞く父の怒号に何処かへ彷徨っていた意識が戻る。
何かの間違いであってほしいと叫ぶ父の横で妙に納得している自分がいた。
最近の自分は理由もなく気分が落ち込んだり何に対してもやる気が出ない事があった。
同じ年の周りの子供といえば日々を全力で楽しく過ごしているというのに自分は明らかに違っていたからだ。
理解した瞬間すべてから逃げ出したい衝動に駆られる。
――あぁもう
「死にたい」
古の大罪、憂鬱の加護 シャルル・フォン・ホーエンツは嘆いた。