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1 9人のカノン

 最初のストーリの主人公は、前作の最終編で登場したラスボスのカノンです。

 

 エリックに敗れたカノンは、盲目で全身傷だらけ。

 そしてレベルは3。

 更には闇の権力者チート大王にも命を狙われている。

 まさに絶体絶命の四面楚歌。



 だが、カノンはきっとこう言うだろう。

 


 私は決して正義になどには屈しない。

 知っている?

 勝てない悪は、悪って呼ばないの。

 人は何故、悪いことをするのか?

 それは勝つためよ。

 負ける悪なんて、ただの間抜け。

 私はカノン。誇り高き悪女。

「何よもう! 何も見えないじゃない!」



 ここはアイゼンハードを158キロ程度南下したエルヴァストルの谷。

 我々はここをアジトにしている。


 前任者は相当無茶をしたようだ。

 この肉体は傷だらけだし、目まで見えない。

 まぁ私にとって、この状況は逆境でもなんでもない。

 単に快適な空間になっただけだ。



 今、カノンを動かしているのは、通称二番目――。カノン=ゴールデル

 


 このカノンの肉体――

 幼少期の頃、目の前で両親が殺され、精神分裂した。

 カノンをよく知るものはそのように言っているが、実は違う。

 それは無能な医者が判定した、いわば誤診。

 

 もし当時、伊藤クラスの医者が存在し、この体を診察していたら見破られていたやもしれない。



 カノン本体は長く眠っている。

 私は脳髄から顔を出す、少女の頬を撫でた。

 まだ6歳の容姿のままだ。目を閉じたまま、眠っている。

 こやつがオリジナルカノン。

 もし我々を見破れる奴が現れたら、我々のことをどういうだろうか。

 

 

 もっとも適当な言葉が、寄生虫……だろうか。

 

 

 ふ、きっとそう言われるだろう。

 だが、違うのだ。

 我々9人のカノンが、こやつ(オリジナル)を守ってきた。



 こやつを見ると、いろいろ思い出す。



 まぁ良いか。

 そのような昔話は。



 そうそう――

 どういう訳か、さっきまで我々は強力な肉体へ転送されていた。

 私にとって最悪の事態が起きたのだ。


 強い肉体を手にしたが為、8人のカノン達は、私を頼る必要がなくなったのだ。


 自我の強い、二番目のゴールデルと、傍若無人な四番目のフレイヤが完全に仕切ってデタラメをやってきた。

 その挙句が、たかだかニート如きに苦戦を強いられ、危うく命まで落としかけた。


 この肉体はレベル3。

 肩書は偽勇者。

 


 ――そういうことになっている。



 だが関係ない。


 

 勝利するのに必要なものは、肩書でもレベルでもない。

 完全悪に徹する精神のみ。

 すべての悪を超越した私に、粉砕できぬものなど皆無。



 ゴールデルはかんしゃくを起こして桶を蹴ったようだ。

 愚かなな。

 あとで掃除をする羽目になるだけなのが、こやつには分からぬのだろうか。



 私は脳波の管を使い、ゴールデルに指示を送った。


「一番目に変われ」

「嫌よ!」


「この無能、消すぞ!」




 一番目――カノン=アクアが立ち上がるとにっこりほほ笑んだ。


 ちなみに我々はそれぞれが持っている性格を、天体の名にちなんで呼び合っている。


 二番目のゴールデルは、物欲が多く、我がままである。やりたい放題するが、平気で他人を蹴落とするから使える。

 四番目のフレイヤは、烈火のように熱い性格をしており、攻撃性が強く、平気で他人を蹴落とするから使える。


 そして私が9番目。

 陰からカノンを支配する、冥王の星を持つ者。

 カノン、ハディス。

 


 一番目のアクア。

 彼女は物静かで無口な女である。


 カノン、アクア。

 水星の定めを持つ者。

 私ともっとも距離を置く天体。

 一番、奇妙な存在だ。


 何を考えているのかさっぱり分からぬ。


 だが、私の指示には的確に従ってくれるから使える。


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