第6話 「予想できたぜ」
「ん?なんだよ?」
アルスはエクスに振り向いた。
その瞬間、アルスの頭にビビッと来た。
(この顔は俺を驚かせようとする時の父さんの顔!!……そういえば母さん最近食欲がないとか吐き気がするとか言っててめちゃくちゃ心配してたんだが、まさかあの症状は…ふっ、何を言われるか予想がついたな)
「実はな…つい先日エレノアの妊娠が発覚した。医者が言うには今で3ヶ月らしい」
「父さん…そんなこと絶対言い忘れるわけないだろ。まぁでも、また兄弟ができるのは素直に嬉しいよ」
「なんだ、もっと驚いてもいいんだぞ?」
「父さんは俺をびっくりさせたかったんだろうが、最近の母さんの様子から予想できたからな」
「やはりお前は賢いやつだ。そのまま成長すればすぐにでも俺を超える王になるだろう」
「俺は天才だからな」
(まぁ父さんの顔に出てなかったら予想できなかったんだが…顔に出てることは今後のためにも黙っておこう)
「まぁ俺が天才なのは置いといてだな…その子の性別とかって分からないのか?」
「あぁ、医者の固有魔法によれば、女の子らしい。良かったな、また妹だぞ」
「そうか妹か!別に弟でも良かったんだが、正直妹の方が良かったから嬉しいぜ! って父さん、今何魔法って言った?」
「ん?固有魔法って言ったんだが?」
「固有…魔法…?おい!なんだよそれ、本にはそんなの乗ってなかったぞ!」
「当たり前だろう、その名の通りその人が生まれた時から持っているオリジナルの魔法ってことだ。ちなみに俺の固有魔法は"身体能力倍化"だ」
「俺のは!俺のはいつ分かるんだ!?」
「悪いが分かるのはまだ先だな。10歳になると教会で儀式を受けて、儀式が終われば自分がどんな魔法が使えるようになっているか、どうやって使うのか、がなんとなく分かるようになってるんだ」
「10歳って…まだまだじゃねぇかー!!
それに、なんとなく分かるようになってるって随分と都合がいい儀式だな」
「俺もそれは思ったが…古い文献によると神が直接魔法を選別して与えているとも言われている」
「神が直接、ねぇ…」
「選別方法はその人が10歳までにやってきたことに依存するらしい。俺は昔はヤンチャで剣を振り回してたからな。古い文献の言うことは案外あっているかもしれないぞ」
「ふーん…。まぁ一応覚えとくよ。 ……っ!」
「ん?どうしたアルス?」
「あぁ、いや。なんでもない」
「む?そうか?」
(なんだ…?少し右手の甲が疼いた気がしたが…って、この変な痣しかないか)
(転生する前につけられたこの痣…あまり気にしないようにしてたんだが、やっぱり何かつけられた理由があるのか?)
(うーん…今は考えても分かんねぇな。少し気になるしこの痣の謎もハーレムを作るついでに探すとするか)
「ま、とりあえず2人目の妹が生まれるってことを頭に入れといてくれ」
「分かったよ。じゃ、今度こそ俺は部屋に戻るからな」
「あぁ。あ、待てアルス最後にもう一つだ!」
「だぁぁー!もう、なんだよ??」
「お前、ダンス踊れないだろう?披露会で踊れないと恥をかくだろうと思って先生を呼んでおいたからな」
「ダンス踊れなくちゃなんねぇのか。先生はいつ来るんだ?」
「一週間後だ」
「一週間後な…分かった。披露会までには完璧に仕上げてやるから任せとけ」
「あぁ。お前の能力は疑っていないさ、自慢の息子よ」
「性格は疑ってるみたいな言い方すんじゃねーよ、国王様?」
「「ははははは」」
この2人、これで国王と王子なのである。