第4話「じいさん」
セリカを可愛がり続けていたらいつの間にか1年が経ち、俺は4歳になった。
今でも少し王族の教育を受けているが、5歳になると本格的に教育をし始めるらしいから、自由に遊べるのはあと1年ということになるらしいが…
幸いというかなんというか、この俺ことアルス・ヴァーミリオンはとても賢い頭をしているのか少し習っただけで要領をつかめてしまう。
本格的に始めるつったって、この俺にかかれば自由な時間が少し減るくらいのものだろうな…。
俺、完璧すぎ。
「……ちゃま……スぼっちゃま……アルス坊っちゃま!聞いておられるか?」
「おっと、悪いセバスチャン、少し考え事をしていた」
「アルス坊っちゃまは聡明でいらっしゃいますが、たまに人の話を聞いていらっしゃらないことがありますな」
「あぁ、俺って欠点らしい欠点がないと思ってな。自分に酔ってたんだ。セバスチャンもそう思うだろ?」
「確かに坊っちゃまは神童とも言える天才でいらっしゃいますが…強いていうならその考え方があまり好きませんな。何事も謙虚に行くべきですぞ」
「はいはいまたそれか。まぁ俺も傲慢になるつもりはないが、謙虚ってのも俺の性格じゃないだろ」
「ダメですぞ、坊っちゃま!いいですか、王族たる者上に立つ者としてですな…」
(はぁ、また長い説教が始まったか…。この癖だけはなんとかしてほしいもんだなこのじいさんは)
セバスチャンは父上が子供の頃からの教育係りで地理、帝王学、政治などなど色々な分野を教えることができ、なおかつ王族に意見することができる数少ない人間の中の1人だ。
さらに執事としても優秀で、こいつの入れた紅茶は本当に美味しい。
性格も温厚で親しみやすく、皆からの信頼も厚いじいさんだ。
(本当にこの説教癖がなければ文句ないんだがな…。)
「つまり、王族たる者気高くあれ!ということですぞ、坊っちゃま」
「はいはい、分かったよセバスチャン」
「こら坊っちゃま!また話を…」
コンコンッ
「アルス様、ミラです。お伝えしたいことがあって参りました」
「おぉ、ミラか!入ってくれ!」
「失礼します」カチャ
ミラが部屋に入ると、そこには何かを言いかけているセバスチャンと、助かった〜とでも言いたそうな表情のアルスがいた。
「あの…なにかお取り込み中でしたか?」
「いやいや!そんなことないぜ!ミラが来てくれて嬉しいさ!」
「坊っちゃま……はぁ…さきが思いやられるわい」
セバスチャンはアルスにバレないように小さくため息をついた。
アルスは部屋に入ってきたミラを見て思ったことをそのまま口にする。
「ミラ最近さらに美人になったよな。もう10歳だろ?おっぱい大きくなってきた?」
「いえ、その…すみません、まだ小さいです。 あの!私ちゃんと大きくなるように努力するので、見捨てないでくださいね…アルス様に見捨てられたら私…」
「俺がミラを見捨てるはずないだろう?まぁ巨乳好きの俺からすれば、努力はしてほしいけどな!はははは」
「アルス様……はい!私、頑張りますね!」
ミラは天然なのか4歳児との会話にしては異常なのに、なにも気にしていないし、そしてこの男、完全に傲慢王子そのものである。
「あぁ、そうだ、そういえば伝えたいことがあって来たんじゃなかったのか?」
「そうでした!国王様がお呼びです」
「父さんが…? また何か企んでるんじゃねぇだろうな…。 まぁ、とりあえず行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃいませアルス様」
そうしてアルスは部屋を後にして行った。
アルスが行った後の部屋で…。
「のぅ、ミラよ。お主は坊っちゃまのことをどう思っとるのじゃ?」
「アルス様のことですか?もちろん尊敬していますし、大好きです!」
「そういうことではなくての…とても4歳児には見えんと思わんか?」
「そうですかね?アルス様が賢すぎるせい、とかでは?」
「そうなのかのう…なにか違う理由があるような気がしてならんのじゃ。なにかは分からぬがの」
「違う理由、ですか?」
「いや、まぁ、わしの考えすぎじゃ。気にせんでくれ」
「そうですか…?分かりました。それでは私、アルス様のお昼食を作ってきますので」
「うむ、ご苦労じゃの」
「いえ、アルス様の世話をするのが生きがいですから!」
「そうかそうか、ミラは本当に坊っちゃまのことが好きじゃのぉ」
「はい!大好きです!絶対に私が世界で一番好きです!!」
「ほっほ、若いのはいいのぉ。 邪魔して悪かったの、坊っちゃまの世話、頑張るんじゃぞ」
「はい!」
こうしてこの部屋での会話は終わった。