第21話 「とんでもない話」
俺は表の城下町へと向かっていた。
貧民街…それにローゼ、か。
詮索しないのが常識っていうから詮索はしなかったが…あいつ、普段どうやって生活してるんだ。
やっぱり色々なところに働けるよう頼み込んでるのか…?
保護者もいないみたいだしな。
父親は亡くなったって言ってたし…母親は?
ダメだ。分からないことが多すぎるな。
それに、女ってことがバレたらあいつの貞操が…!!
救ってやりたい。だが…。
王子の俺がそんな贔屓をしていいのか?
王族は本来、民を贔屓してはならない。
でも…俺は…。
柄にもなくうじうじ悩んでいると、いつの間にか表の城下町についていた。
フードを被りながらぶつぶつ言いながら歩く子供が不気味だったのだろう、周りの人間は俺を避けて通っていた。
(やばい…いきなりミスったか?
そりゃフード被ってぶつぶつ言ってる子供がいたら不気味だよな。
どうする…。
おっ、あの小さい裏路地にいったん隠れるか)
そこは大通りから大通りへの抜け道なのか周りは建物に囲まれ、薄暗いところだった。
(ふぅ。俺としたことがミスったな。
顔をさらけ出せば不気味がられることはないんだろうが、今度は逆に人が集まりすぎちまう。
ちょっと時間あけてもう一回行くか)
そんなことを考えていると男2人の話し声が聞こえてきた。
「最近また魔物が活発化してるらしいじゃねぇか。
この前俺の知り合いが魔物に襲われてケガをしたんだ。
上のやつらはちゃんと俺たちのことを守ってくれるんだろうな…?
お前、歴史書とか好きなんだろ?
何か魔物が活発した原因とか分かんねぇのかよ?」
「俺もそんなに詳しいことは知らないぞ?
関係あるのかは分からないが…
はるか大昔、そうだな…5000年以上前か。
この世は魔王ビブリザードに支配されていたらしい。
魔王ビブリザードは魔物の大群を引き連れてあらゆる国を自分の傘下にいれ、世界を征服しようをした。
と書いてあったな。
魔物の大群を引き連れる魔王と魔物の活発化。
似てなくはないだろ?」
(魔王ビブリザード…?)
「確かにな。
ていうかその後はどうなったんだよ?
もしそのままなら今もこの世は魔王に支配されたままのはずだろ?」
「たしか…ヘイムダルと名乗る勇者が現れて魔王を封印したんだ。
魔王の闇の力は強大で、魔物はその闇の力が抑えきれずに発生したのではと言われている」
(勇者…?)
「お前その仮定で考えるなら、最近の魔物の活発化…。
あれは魔王が復活しようとしてるってことじゃないのか!?」
「分からない…もしかしたらそうなのかもしれない。
でも、俺たちみたいな平民にどうすることもできないだろ?」
「勇者は…勇者は現れないのか?」
「それも分からない。
勇者ももしかしたら現れているのかもしれない。
ていうか、俺にそんなこと分かるはずがないだろ?」
「それもそうだな…。悪い。
はぁ、こんな辛気臭い話俺たちの柄じゃねぇよな。
あ、そうだ。お前あの店行ってみたか?めちゃくちゃ美人の姉ちゃんがウェイトレスしてたぞ」
「まじか、行ってねぇよ!今度行こうぜ」
「奢れよ?」
「ははは、やーだね」
と言いながら男たちは去っていった。
(…………………。
こんな変なところでとんでもない話聞いちまったな。
この世界には魔王がいた…。
それに勇者も…)
俺は右手の甲にある紋章のような痣を見た。
(思い出せ。あの時の夢のエロ美人がなんて呟いていたのかを。 たしか…)
ま…うがも…すぐ…ざめそうです。
信じ…いま…よ。健人。
(だったか? 今なら分かる。
魔王が目覚めそうなんじゃないのか?
それに俺を信じてるって…。
もしかしたら俺がこの世界に呼ばれた理由は…)
俺がまさに答えを出そうとしたその時、
「おいそこの子供。こんなところで何をしている。親とはぐれたのか?」
若い黒髪の貧乳女騎士が現れた。
(ってこの人…たまに父さんの玉座に報告しに来る人じゃないか。
いつも貧乳だけど美人だなーって思いながら見てたんだが、まさかこんなところで会えるとは。
この人になら顔を見られてもいいし、こんなところにいる事情を話すか)
「うん…。僕親とはぐれちゃったの。
だからとっても心細いんだ…。
美人の女騎士さん、僕を抱っこして…?」
「だ、抱っこだと?
しかしだな…わ、分かった。
そんな目で見つめないでくれ。
この後ちゃんと親を探しに行くんだぞ?」
「うん!!」
俺は貧乳女騎士に抱っこされた。
幸い服は柔らかめで、少し胸の感触を感じとれた。
俺は少しの間胸を楽しんでから、フードを外した。
「よっ、美人の女騎士さん」
「え…。
金髪の髪に緋色の目、それにその口調…
も、もしやアルス王子ですか!?
なぜこのような場所に!?」
「しっ!声がでかい」
俺はこんなところにいる事情を貧乳女騎士に話した。
「そ、そうだったのですか…。
あの、ところでこの抱っこはいつまで…?」
「そうだなー…。俺ちょっと整理したいことができたから城に帰ることにするよ。
このまま城まで送ってくれよ」
「こ、このままですか?
その…ちょっと恥ずかしいのですが…」
「こんなことで恥ずかしがって騎士になんてなれるのかー?
父さんにもあんたが頑張ってるって言っといてやるからさ」
「むむむ…分かりました。
それに、アルス王子の命令なら断れません!
騎士リーシャ、頑張ります!」
(あ、リーシャって名前なんだな。
それに俺の命令なら断らないの?
だったら…)
「じゃあ俺はリーシャのお胸で少し寝てていいか?」
「わ、私の胸でですか?
私胸に自信はないのですが…」
「胸の大きさなんて関係ないって。
俺はただ美人の女騎士さんに甘えたいだけ」
「噂通りの女好きなのですね…。
私は大人だからお世辞だと分かりますが、そうやって誰にでも美人だとか言ってるんですか?
アルス様はただでさえ見目麗しいのですから、勘違いする子が出てきてしまいますよ?」
(大人って…リーシャもまだ16くらいだろ。
それにお世辞じゃねぇし。
あー、ダメだ…今日は色々ありすぎて眠い)
「お世辞じゃないんだが…。
まぁ今日はもういいや。
色々あって疲れたからお休みー」
「ア、アルス王子?見境いなく女に手を出しては…もう寝てしまわれた。
全く…世話の焼ける王子だ」
というリーシャの言葉をかすかに聞きながら、俺の意識はまどろみの中に沈んでいった。




