ハチャメチャ姉妹はペルーへGO!
「あ〜。働くのってめんどくさいですわぁ」
労働は悪のようですわ。悪は労働のようですわ。
違うようで同じですわ。背中合せですわ。
なぜ、人は働くのでしょう。生きるためですの?
ならば、働かない科学技術を築き上げるために、数百年前の人類に馬車馬のように働いて欲しかったですわ。
ええ。
眠い目を私はこすります。時計を見ますと、すでに時刻は七時を回っておりましたわ。
そろそろ仕事に行く準備をしなくてはなりませんわ。
おっと、自己紹介がまだでしたわね。私の名前は関取風夏。
今年で二十四になりますわ。大手と言われるところで働いているものの、毎日九時に出社し、午後五時に帰る日々。
八時間労働なんて、うんざりですわ! もう、こんな生活耐えられませんわ!
いつか、私は宝くじで一発当選し、働かなくてもいいくらい稼いでやりますの。
そういうわけでロト8の番号をチェックですわ。
「三、五、七……チッ! 外れてますわ!」
全く、なんで当たらないのかしら。
金運の神よ。少しは私に力を与えくださっても良いではありませんの。
すると、タタタと階段からかけ音が聞こえてきましたわ。
「オネエチャーン! 大変だよ!」
セーラー服姿の我が妹、関取風冬が二階から降りてきましたわ。
雪のように白い肌で顔立ちは私に似て、とても美人。将来有望ですわ。
胸が小さいのと頭が少々よろしくないのが玉に瑕ですわ。
「どうしましたの? 風冬」
「見て見て、これ! ジャンジャーン!」
風冬は可愛らしい笑顔を振りまき、ロト9のクジを見せてきましたわ。
「これはロト9。まさか、当たりましたの?」
「そうだよカッコ便乗。なんつって!」
どこで覚えましたのその言葉は。うちの可愛い妹にそんなおぞましい言葉を覚えた奴に、制裁を下す必要がありますわね。
「やりましたわ。風冬。ちょっと見せて欲しいですの!」
私は今日の朝刊と風冬が持っている数字を照らし合わせて見ることにしましたわ。
な、なんと! 全て一等の数字と一致しておりましたの!
総額なんと十億円!
「夜は焼肉ですわーーーーーーーーー!!!」
私はそのまま勢いで会社をやめ、風冬と一緒に海外旅行に行くことにしましたの。
こう見えてわたくしは外国語に詳しいですのよ。
向かうのはペルー。マチュピチュを見に行きますの。ついでにナスカの地上絵も見に行きますの。
「お姉ちゃん。海外旅行楽しみだね!」
「そうですわね。それにしても、さすが私の妹ですわ。こんなに運がいいなんて、私に似ましたわね」
「お姉ちゃん。宝くじで当選したこと一回もないよね? それにパチンコも競馬も毎回負けてるよね?」
「き、気のせいですわ!」
すると、突然『パン』という発砲音が機内に鳴り響きましたわ。
前を見ると、横○緑みたいな覆面を被った男が銃を持って、私たちにこう告げましたの。
「お前ら! おとなしくするんだな! さもなければ撃つぞ! オラァ!」
ちなみにこれ、外国語で喋ってますのよ。ええ。私が通訳して皆さまにお伝えしておりますわ。
「お姉ちゃん。あいつ、なんて言ってるの?」
「飛行機まじ興奮するー! っておっしゃってますのよ」
「へー! そんな理由で拳銃持ってるんだ」
この子、大丈夫かしら。冗談だって気づいてますわよね?
ハイジャックの男に飛行機に乗っている方々はプルプルと震えておりましたわ。
銃って厨二病心をそそられる割には銃口を向けられると怖いですもんね。ええ。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。あの銃のモデルって分かったりする?」
「もちろんですわよ。風冬。あれはコボルトM1911ガバメント。45口径の銃ですわ。なかなか性能のいいやつ持ってますわね。あの覆面。まさに豚に真珠ですわね」
その諺の通り、覆面男の体型は醜く太っておりましたわ。
すると、その覆面男がテクテクとこちらに近づいてくると、わたくしの頭に銃を突きつけましたの。
「てめぇら! 何、ぺちゃくちゃとくっちゃべってやがる」
「申し訳ありませんでしたわ」
ここは大人しく従順そうに振舞うことに決めましたわ。
私は両手を上げて、降伏するように見せかけましたわ。
「いいぞ、そのまま立ち上がれ。いいか? 絶対に手は動かすなよ」
「分かりましたわ」
私は立ち上がると――奴の股間に強烈な蹴りをお見舞いしてやりましたわ。
脚は動かすなとは言われてませんでしたからね。ええ。
「ぐ……!」
ハイジャック犯は痛みに悶絶したことでコボルトM1911ガバメント――めんどくさいから、コボルトと次から言いますわね。
コボルトを落としたので、私はすぐにそれを拾いましたわ。
すると、乗客のみなさんが「おおー!」という歓声をわたくしに浴びせてきましたわ。
「てめぇ!」
右胸のポケットから隠し持っていた拳銃を取り出そうとしたので、わたくしは容赦無く奴の右脚に発砲しましたわ。
「ぐぎゃああああ! 痛いー! し、死ぬーーー!」
あららら。中々の威力ですわ。ハイジャック犯の脚に大きな穴があき、そこから大量の血が流れてますわね。これは止血した方が良さそう。
まぁ、わたしくは手伝いませんけど。うふふ。
「わー! お姉ちゃん! 超かっこいい!」
「そんなこともありありですわ!」
風冬に褒められるとやっぱり気持ちいいですわね。
「それじゃ、ハイジャック犯さん。そのまま大人しくしていてくださいね」
「ぐ……!」
ハイジャック犯はそれはそれは悔しいそうで、それでいて痛みに耐えようと必死な顔をしておりましたわ。
わたくしはペルーに着くまで寝ていることにしましたわ。
眠ること、およそ二時間。いつの間にかペルーに到着しておりましたわ。
ちなみにさっきのハイジャック犯は縄で縛られて後ろのほうで体育座りしてましたわ。
さながらその姿はチャーシューのように見えて、実に滑稽でしたわ。
飛行機から降り、空港を出て、ペルーの空気を吸い込みましたわ。
真新しい空気はいつも吸っている東京の空気よりとても美味しい気がしましたわ。ええ。
私たちがいるのはペルーの首都であるリマのホルヘ・チャベス国際空港というところですの。
空港の周りは歴史的建築物が少なく、あまり海外に来た実感が湧きませんでしたわ。
「それじゃ、風冬。早速、マチュピチュに行きますわよ! まずはクスコへ!」
「うん、クスコへGO!」
ペルーでの旅はまだ始まったばかり。
きっとこの先に、面白い出来事が待ち受けているはずですわ。
何があっても大丈夫!
なぜならわたくし達には十億円あるのだから。
※※※
作者からのメッセージ:
勢いだけで書きました。良かったら評価とブックマーク、感想をよろしくお願いします。