第1話:せかい
やっつけ。
ここは都市から少し離れた、言ってしまえば田舎の村である冨丹生。
初夏の日差しが青々とした苗を照りつける中、
草が生い茂る空き地の中から2人の少年の声が聞こえる。
「空が青いなぁ」
彼は空を見つめ、そう言った。それを聞いて俺も空を見上げ答える。
『ああ』
「どうして、空って青いんだろうな」
『さぁな』
「海の青は空の青が反射してるんだろ?」
『らしいな』
「じゃあ、空は海の青が反射してるのか?」
『海にそんな力はないだろう』
軽く笑う
「じゃあ、何でだろうな」
『俺らには到底わからねぇよ』
そう、俺らには分からない。
何で空が青いのか。
そして、
何で世界中で殺し合いをしているのか。
斎城国暦201年6月10日 第5次世界大戦勃発。
原因は様々言われているが、
一番は俺が今住んでいる斎城国が他国に対して情報開示しなくなったのが原因だろう。
一概に言う鎖国状態というヤツ。
それが学生にまで影響が出て、というか学校自体なくなっちまった。
中学生は中学を卒業後高校に入れず、みんな彷徨ってる。
俺らもその中の一人。
仕方がないから俺、新川 昴は彼、鶴巻 春の郷里である冨丹生に一緒に避難している。
俺と春は完全な幼馴染で唯一無二の親友だ。
俺が春に会ったのは生まれて間もないころ、俺らの親も仲が良かったらしい。
それからはずっと一緒に育ってきた。
時には殴り合いの喧嘩も交えたが、そのたびに信頼が増していったと思ってる。
だから俺にとって春は3本の指の中に入るほど大切な存在だ。
「・・・あれ、敵軍か?」
春が手に持っていた草を空に向けて指す。
『・・・そうだな、あれは敵の戦闘機だな』
「撃つか?」
そう言って彼は手元にあった対空用ライフル銃をつかむ。
この国では2年前から銃の携帯が認められた。ライフルは国から支給された。
『やめとけ、冨丹生まで焼け跡にしたいか?』
構える春を俺は止めた。
「そうだな」
春はそう言って構えを解いた。
「ところで、だ」
ニヤニヤしながら言う
『なんだよ、気持ち悪い』
「新しい銃が手に入ったんだ」
『またか、っていうかお前はどっから手に入れてるんだよ』
「それは言えないね」
人差し指で口を押さえる仕草をする。
『で、どんなヤツだ』
「ああ、今見せる」
春は持っていたカバンを探る。
「これだ」
出したのは中型の銀色に輝くハンドガンだった。
『ふーん、なかなかじゃん』
「だろ」
春はぐっと笑う。
『・・・・・・・・・・・』
「ん、どした」
春が俺に問う。
『いや、なんかさ・・・・・』
『馬鹿馬鹿しいよな、この風景って・・・』
正直な感想だった。
本当に馬鹿げてる、この国は。
子供に銃を持たせるなんて、何のメリットもない。
「・・・そうかもな、でも・・」
そっから春が何を言いたいのかは分かる。
(殺されるなら、殺せ。か)
楽に推測できる結論。
ただ、それに尽きた。
「なぁ、空って青いよな」
唐突に言われる
『なんだよ、今日はそればっかだなお前』
「そうだな、でさぁ」
『ん?』
「この空はいつまで青いんだろうな」
いつまで、か
いつまでも、というわけには多分、いかない
だから、その答えに俺は
『いつまでもって思うのが大切なんじゃないか?』
そう言った。
続く気がしない