小隊長 大勝利
私は戦場で小隊長に出世した。しかも、補佐としてバケモノの様に強いケイト君がいる。もう、安泰かな。
出立前に演説だ。なんたって100人もの部下がいるんだ。私には多過ぎるぞ!よーし演説だ!
みんな、よく聞いて欲しい!
我が隊の目的は、敵中隊を打破ること!実に簡単明確ではないか!
私はここに誓おう!
敵中隊長の首をとるのは我が小隊であると!
みんな。私に恥をかかせないでくれ!我らには女神の加護と鬼神が付いている。自信を持て!やれば出来る!
『おおおおおーーー』
私の小隊は異常に士気が高い。なんなんだろう。希望通りの隊に入れて喜んでるのかな。私だって100人の名前を全員覚えるのとっても大変だったんだからね。私が苦労した分、頑張ってもらわなきゃ!
戦闘が始まった。目的の中隊は丘の上に陣を敷いている。分かりやすくていい。
「みんな目標が見えるぞ!なんと運の良いことだ。あそこまで全員でたどり着くんだ。脱落は許されない」
「おおおおお」
「弓来るぞ!盾を構えろ!その後、ゆっくり前進だ。急ぐな、慌てるな。全員でたどり着くんだ」
(プリちゃん、お願い。私を導いて!)
「良かろう」簡単に言うなぁぁ。大丈夫なのか?
「鬼神を中心に左右に展開。トミー。もっと鬼神から離れて良い。ひとりでやらせておけ」
「助かる。動き易い方がいい!」
「ケン以下五人は右側の援護だ負傷した者は、後方に待機しろ!」
「みんな今は耐えろ。敵は必ず崩れるぞ!私達の強さを見せてやるんだ!」
私は隙を見て味方を癒す。100人の中隊だと忙しいや。みんなゾンビの様に這い上がって頑張っているよ。恐怖感は薄れ勇気溢れんばかりだ。
大分押して来たな。もうひと頑張りだ。敵本陣も近くに見えて来たぞ!ただ、私が目眩がして来た。癒しの力を使い過ぎたのか!やばいな。意識が遠のく。
あっ、脚をやられて倒れてる。助けなきゃ。助けたのはいいが、私が倒れちゃ意味ないのに、隊長失格だね。みんな、ごめん。
私は意識を失って倒れてしまった。
誰よ。私の顔に水掛けてる無礼な奴。は!鬼神だ。怖い顔してる!こんなの地獄の訓練以来だよ
「立て!おまえは俺らとあの地獄の訓練を潜り抜けた同志だ。これくらいじゃヘコタレないよな!当然だよな」
この鬼神も熱い炉に入れてやろうか!
「女神様、これは妻が作ってくれた薬です。きっと元気になります。飲んでください」
「俺のも」「ワシのも」
こんなに飲めないよ。山になってるじゃないか!
「みんなすまぬ。これからは肉弾戦だ。死ぬ気で戦うぞ!付いて来い。倒れた者は放っておく。倒れるな!」
「おおおおおおお」
一段と士気が増した。兵達の薬は苦かった。苦くて涙が止まらなかった。絶対勝つんだ。中隊長の本陣はもう目の前じゃないか!
「ウォン、左に敵がいるぞ!リンは援護に回れ。サリーは後方で息を整えろ!全員の力で辿り着くんだ!」
私はひとりひとりに声を掛けて指示を出す。100人いるとキツイな。小隊長って大変なんだ。よくわかったよ。
その頃、後方の中隊長は我が目を疑っていた。
なんだあの小隊は!全く崩れる気配がないぞ!あれだけ、敵に囲まれているのに脱落者がいない。
「全軍、第5部隊の援護に回れ!」
死闘が続く。後方から援護が来たようだ。
鬼神のケイト君はとうとう、敵中隊長と向かい合ってる。やっちゃえ!ケイト!
「みんな!ケイト!って叫んで!」
「ケイト!ケイト!」
疲れきってるケイト君。やったよ!敵中隊長を仕留めた。我が小隊の勝利だ。
戦局は大きく動いた。中隊ひとつが消滅したため、敵軍が撤退を始めた。
私達の勲功は、誰もが認める最大のものとなった。
ケイト君、良かったね。これで君は英雄だよ。出世も思いの儘。くれぐれも私への感謝の決闘だけはしないでね!