ケイト君と勝負
商人護衛任務が無事に終わり、慰労会が始まった。私は未成年だし、ジュースで乾杯。ケイト君はお酒を飲んでいるよ。悪い子だね。
「ケイトは凄かったな。鬼神のように強い!」
「ケイトが戦線離脱した時はダメかと思ったヨ。ヒヤヒヤしたぜ!」
「あの娘のおまじないみたいなの、なんだったんだ。突然ケイトが復活したよな?」
「ケイト君!頑張ってぇってか?」
「わはは わはは」
「やめろ!殺されるゾッ!」
ケイト君がいきなり立ち上がった。仲間を殺しちゃダメだよ。なんで私の手を掴んで外に連れ出すかな?
剣を持って勝負っていきなりなに?
「私の負けです。すみません」
「まだ、戦ってないだろう。舐めているのか!」
プリフィンガーが私の前に投げられる。
「剣を大切にしない者にはお仕置きをしてくれようぞ!娘。我を持て!」
(やだなぁ。相手はバケモノの様に強いんだって!)
「来るぞ!上段。我を持ち上げガードだ」
すごい剣撃だわ。プリちゃん大丈夫かな?
「我のハラの部分で受けてどうする。傷つくではないか?」
(だって、私の手が切れちゃうよ。)
「剣を斜めに当てて、かわすのだ。剣技の基本だろう」
上段からの力押しにやっと耐えてたのに、ケイト君私を蹴った。女性を足蹴にするとは、恥を知れ!
「オイ!横に避けろ!」
連続して上段から攻撃してきたよ。私を殺す気か!
「おまえ、自分の怪我も治せるんだろ。手を抜く必要もない」
「殺すんだったら、さっき笑った人にして!」
さっき笑ってた人達がギョッとしてる。いい気味だわ。
「中段から、脚を狙って来るぞ!」
「おまえ、どうして俺の剣筋が読めるんだ。予備動作が大きいのか?」
「私、トカゲじゃないんだから、脚切られたら生えてこないよ。私の美脚どうしてくれるのよ!」
私は防戦一方だ。剣を払う感じがつかめてきた。始めはジンジンして痛かった手も握力がやっと戻ってきた。
「奴の隙は右側だ。次に上段から攻撃が来るから、それをかわして右目を突け」
上段から来るってわかっていれば、避けるのは容易い。ただ、掠っただけでも怪我しそうな恐ろしい上段だ。
私は、上段をかわし、右目めがけて突きを出す。
うまく避けてね。当たったら、プリフィンガーを恨んでね!
避けたけど、こめかみから血が流れている。
「私のせいじゃないよ。剣がいけないのよ。そうよ。一緒に剣に仕返ししましょう!」
ケイト君。怒っちゃったよ。目が血走ってる。ヤバイよ。
「逃げろ。娘。今のヤツではおまえに勝ち目がない。殺されるぞ!」
私は一目散に逃げた。50mダッシュして振り返るとみんながケイト君を押さえている。
「早く逃げろ!」
私はその場で土下座をして振り返ることなく逃げた。
(次に会ったらどうしよう。でも、私足蹴にされたし、脚も斬られるとこだった)
ビリーが私のとこに来た。
「ケイトは君に助けられて感謝の気持ちで剣を交えたかったんだよ。まさか、自分があんないいのを貰っちゃうって思ってなかったんだろうな。僕も肝が冷えたよ」
「ケイト君真剣に私を倒しに来たよ。すごい怖かったんだから!」
「それが彼なりの御礼なんだよ。もう気にしないで」
いやいや無理だから。感謝の気持ちで殺されかけたら、いくら命があっても足りないわ。絶対、間違ってるからね。それ騎士道じゃないよ!
次の日、私達は呼び出された。怒られた。なんで私まで怒られるの?
「おまえら、命のやり取りは戦場で敵とやるものだ」
(そうです。その通りです。このバケモノに良く言って聞かせてください。)
そんなに戦いたいなら、戦場に送ってやる。自分の腕を試せ!」
「はい。ありがとうございます」
ケイト君はいいけど、私はイヤだよ。ケイト君恨むからね!
私達が去った後、上官達が私達について話している。
「ケイトは良いとしてあの娘、戦場に送って大丈夫か?」
「地獄の訓練を残ったんだ。生き残れるよ。おまえ知らないのか?」
「なにが?」
「ケイトとの勝負の勝者は彼女だぞ!」
「あのケイトに勝ったと言うのか?」
「ああ。大勢が見ていた。それだけじゃないぞ。護衛任務でも一番の手柄を立てたのがあの娘だと言う話だ」
「普通の娘にしか見えないがな。なんなんだろう?」
「良くわからん娘だが、期待出来る」
上官の思惑はさておき、私は近く戦場に送られる事になった。