地獄の訓練
騎士になって最初の10日間は基礎訓練。という名の地獄のシゴキが待っていた。
新人騎士は、全部で20人。最初の1日で早くも2名が脱落した。私は脱落するタイミングを逸しただけだ。いなくなった事を後から知ったからだ。脱落するなら私を誘ってくれればいいのに!って真剣に思った。
1日目が終わった時点で倒れて、気づいた時は翌日になっていたんだから。
2日目、3日目とキツくなった。何度も挫折しそうになった。なんせ、こっちは普通の女子。男子と同じ事が出来る訳ない。途中で倒れ意識がなくなる。水をかけられてまた、訓練再開って感じだった。
「なぜ、私リタイアしないんだろう」って自分を呪った。父上の顔が想い浮かぶからだ。「やればできる子」って信じてくれてる。期待を裏切れない。死んでも頑張ってやる。3日で5人がいなくなった。
6日目で死んだ方が楽かもって思い始めた。
死んでも頑張ってやるなんて意気込みはない。ただ、無心だった。7日目に疲れのピークが来た。意識が遠のく。
「おい!鼻ぺちゃ。負けるのか?ダメだなお前!」
「ちっ」
「舌打ちするな。乙女だろ」
(この剣を熱い炉に入れるまではやめられない)
7日目に20人が半数の10人になった。
私には、熱い熱い燃え盛る炉しか想い浮かべられない。父上の顔なんか忘れていた。
(この剣を炉で溶かしてやりたい。チクショウ!)
話す剣は事あるごとに憎まれ口を叩く。悔しい。
8日目以降は、みんな口も聞かないが黙々と訓練をこなしている。
10日目になった。半数の10人が訓練という名のシゴキを耐え抜いた。
「おめでとう。お前らは晴れて騎士となった…」
何かその後も言っていたようだが、私は気を失ったようで記憶にない。3日間も寝込んだようだ。
騎士の先輩達は勝手に好き気ままに新人騎士を評している。
「あのケイトってヤツはすごいな。難なくこなしてたぞ。バケモノだな。あと、ビジーとカズトってのも大したものだ。期待出来る」
「俺、あの女の子が最後まで残るとは思わなかった」
「最初の1日で倒れたしな」
「なんか、炉に入れてやるとか、呪いの言葉吐いてたぞ!」
「怖えな。その子!」
「根性があるってより操られてた様に見えたが?」
「恐ろしいな。敵にしたくないタイプか?」
私はたくさん寝て、スッキリした。もしかして、あの剣は私を助けてくれたのかも。名前をつけてやろうかな。
「あなた、名前あるの?」
「以前はプリフィンガーって呼ばれてたぞ!」
「プリちゃんか?それでいいや。プリちゃん、これからもよろしくね」
「我をちゃん付けで呼ぶでない。剣であるぞ!」
「プリちゃんって可愛くていいじゃない」
プリちゃん、恨みは忘れてないからね。いつでも、燃え盛る炉に入れてあげるからね!