騎士団長の教え
私が落とし穴を掘ったのは西の砦。残りの南の砦を潰せば、我が国は国の領土をほぼ回復した事になる。
ガゼフ騎士団長率いる1000の大隊が南の砦を囲む。
私の中隊は、手出しは許されない。
「みんな。よく聞いて!」
「たまには、こういう事もある。今回は見学が任務だ。あの騎士団長のオヤジを穴に落とした腹いせと思ってくれ。気に食わない奴は、また穴を掘って奴を埋めろ!以上だ」
これって演説する必要なかったかも。
戦いは平凡だった。突撃する訳でも無く少しずつ砦が自軍の兵士で埋まっていく。当然だけど、犠牲者は共に出ている。なぜ、この戦いを見せたかったんだろう?
ガゼフのオヤジ、まさか失敗したとか?そんな訳ないよね。だって、ケイトよりも強いんだから、ひとりでどこまでも突っ込める。それなのに兵士の中心で指示出してるだけだよ。
うーむ。わからないこの地味な戦争を見させて何を言いたいのか。ケイトなんか、今すぐでも戦いの真っ只中に入りそうだよ。戦いたくてうずうずしてる。そんなに死にたいのか?
(ん?なんか、私達、誤解してたぞ!激戦しかしてこなかったから!今までは運が良かっただけじゃないか!激戦は勝った時はいいけど、負けた時は全滅しちゃうぞ!この落ち着いた戦いに大きな負けはない!)
(団長のオヤジ!わかったよ!あんたの言いたい事)
私とケイトは団長に呼ばれた。
なんかケイトと一緒だと怒られるイメージしか湧かないけど、気のせいであって欲しい。
「どうだ。わかったか?」
「私は今まで、運に恵まれていた事がわかりました」
「どうやら、女神は理解したようだが、ケイトはわかってないようだ。ケイトはそれで良い。若い内は存分に暴れるのが後の自分の為になる。ただし、ケイトには教える事がある。剣を持て」
(決闘?ケイトはバケモノの様に強いよ!オヤジ、大丈夫なのか?)
ケイトはバケモノじゃなかった。オヤジがバケモノだった。ケイトが子供扱いってマジか?ケイトよりも数段強いじゃないか!ケイトが惨敗。いい気味だ。
「次はセレナ!お前だ!」
(ちょっと待て!オヤジは命の大切さを教えに来たんでしょ。それはスジが通らないよね)
「主人、早く構えろ!」プリちゃんまでやる気出してるよ。
「ほほう。俺の剣スジを読んでるじゃないか!だがな、いつまで経っても俺の隙は出来ないぞ!待ってるだけじゃなくて、隙を作るんだ」
「無理です!」
「お前は、敵じゃないと闘えないのか?さっきは俺の事をクソオヤジとか穴に埋めろ!とか言っていたじゃないか!」
「げっ。聞いてたの!人が悪いオヤジだなぁ」
「俺も埋められちゃかなわんからな。いくぞ!」
剣を絡めてプリフィンガーが飛ばされた。今の私は只の娘だ。なにも出来ない。
「こういう技もある。気をつける事だ。俺も穴に落ちない様に気をつけるがな!」
私は鎧の上から突きの一撃で気を失った。
「やはり、予想通り良い鎧を纏っている。どうやって手に入れたんだ?」
私もオヤジに惨敗した。
次の日から、騎士団長は精力的に動いていた。カズトに砦の強化を教えている。
「ありがとうございます。ただ、これだけやると費用がかさむのではないですか?」
「知らん。それは借金女神に任せろ!少しくらい借金が増えてももうどうって事はない」
「借金女神か?ウチの女神に合ってます。なるほど」
(クソオヤジめ!なんて事言うんだ。あの宰相からお金借りるの大変なんだよ。団長が交渉してよ)
ビリーも先輩騎士から教えを請いているな。これは助かるかも、私達って何気に素人同然だったかも。足軽だけじゃなく、騎馬隊も弓隊も必要だしね。
私も中隊長の仕事しか出来なかったけど、領土が大きくなって、領主として1000人単位の大隊を率いらなきゃならなくなるんだものね。
オヤジのお陰で隊がレベルアップ出来たよ。穴に落としちゃってごめんなさい!




