家宝の話す剣
騎士試験に受かった。
私は、喜び勇んで父に報告するために家路を急ぐ。
父上、喜んでくれるかしら?心配するかも。その前に信じてもらえないかな?
ただ、「鼻ぺちゃ」って言われてキレたら受かったとは言えない。
「父上。私は遂に騎士試験に合格して参りました。私は今日から騎士です。これは偏に父上のおかげ。感謝しております」
「セレア。おめでとう。遂にやったか。お前は、やれば出来る子だ。父はお前の事を誇りに思うぞ!セレア。自信を持て!お前はやれば出来る。努力を怠ってはならない」
「はい。父上のお言葉は私の励みになります。ありがとうございます」
「ワシもお前に我が家の家宝である剣を持たせて良かったと思っている」
「家宝?この剣が家宝でございますか?」
「そうだ。持主と心が通じると言葉を話すと言われている。剣が話すなど信じがたいがな。ワシの祖父が仰っていた」
「それが父上、言葉を発したんです。敵からの防御方法や横一閃に切れと剣技のアドバイスを剣がしたんです」
「それはまことか?我が先祖の言い伝えが本当だったとは」
「ですが、今は声は聞こえませんし、私しか聞こえないようです。証明するものが何一つございません」
「よい。ワシは娘を疑う訳はない。ただ、他人に漏らす必要もないな。セレアよ。その剣を大事にせよ」
「はい。大切な剣を預かり、光栄に存じます」
「剣よ。私と共に!」
(応えないわね。この剣)
「答える訳なかろう。この鼻ぺちゃめ」
「父上、失礼します。この剣には礼儀という物を教えなければならないのです」
私は部屋を出るなり、剣に向かい「ペッ」って唾を吐きかけた。
「汚いであろう。何をする。貴様は年若き乙女ではないか!家宝である我を大切な品と言ったばかりではないか」
「私を鼻ぺちゃと言ったな!許すまじ!」
「わかったから。な。落ち着こう。どう。どう。お前に協力するのでな!」
「それは騎士である以上、剣は命の次に大切だけど。私の命がかかっているからには協力は是非欲しい」
「我も久しぶりに封印が解かれ、言い過ぎたようだ。貴様は前の我が主人の血を色濃く継いでおる。我が力が必要とされ目覚めたのだろう。恥じぬ行いをせよ」
「だけどね、私、蛇男と結婚したくないから騎士になっただけだし。これからどうしようかな?」
「我が今感じている不安はなんであろう。さっき己の父がやれば出来ると言っておったろう。」
「でも騎士になって何やるの?私に続けられるかなぁ」
「騎士なら、人の命を守れ!当然ではないか?」
「仕方ないなぁ。嫌だけど、頑張って見るかなぁ。嫌だなぁ」
「お主は騎士であろう。騎士とはもっと崇高なものではないのか?」
あーあ、変な剣がまとわりついちゃったよ。