凱旋帰国
王都への帰路。私は馬車を準備してもらった。「女神は神秘性があった方がいい」と申し出たのだ。
「国の英雄が、お前じゃイマイチ盛り上がらないし、民の期待を裏切ってなぁ。」と言ってケイトが賛成してくれた。
(ケイト君。正直すぎるよ。また、踏んづけてやろうか!)
王都に入った。私の馬車には女神の旗印がなびいている。大勢の人々が歓声を上げている。
「女神様!バンザイ」って声が聞こえるよ。いくら叫んでも私は顔を出さないよ。
「白銀の騎士」ケイトは人気だ。いつも美味しいとこさらってくよね。ケイトってなんかずるい。
アクシデントが起きた。少女が花束を持って近寄って来た。
「危ない!」馬車は急停止。少女は転んだ時に足を痛めたらしい。私は、我を忘れて少女を癒した。
少女はにっこり笑って
「この花、私が集めたんだ。女神様に渡したくて!」
「そうか。じゃあ、お姉ちゃんが渡してあげるからね。馬車は危ないんだぞ!」
「うん。わかった。おばちゃん。ちゃんと渡してね」
「お姉ちゃんだからね」
「優しいお姉ちゃん。ありがとう」
「おい!今のまさか?」
「でもよ。普通の娘ぽかったぞ!替わりに渡すって」
「あの少女、怪我したのにピンピンしてるぞ!」
「女神だぁ!女神が現れたぞ!」
ちょっとしたパニックになった。やっぱり、馬車の中に隠れてて正解だ。女神なのに、おばちゃんって言われたけどね。くっ。
軍師曰く、
「女神に会えなくて民は残念だが、会ったら会ったで残念な気持ちになるな」
この軍師は私をまだ恨んでいるのか?軍師に言われると最もらしく聞こえるじゃないか?そんなに残念なのか?
とうとう、王城に着いた。私達は軍師の言われるままに謁見の準備に取り掛かる。気が重い。貴族出身の私でも、王様に会うのは緊張するよ。ケイト大丈夫なのか?絶対、口を開いちゃダメだよ。
謁見の順番が来た。もしかして最後かもしれない。
「騎士セレナ、騎士ケイト。その方の忠誠見事であった。褒美をとらす」
「まず、ケイトには勲章を授ける。受けよ」
「はっ!」
「次にセレナ。貴様は貴族の出だ。よって爵位を与え領土を持たす。その忠誠を国に捧げよ!」
(えっ?爵位?領主?父上と同じ?)
「はっ!」
(気になるのは軍師と宰相の笑顔?嫌な予感がする)
そんな事だろうと思ったよ!絶対そうだよ!
領土って言っても、敵国との国境じゃないか!
しかも、半分以上は敵国にとられているじゃん。
(南の島でゆったりと暮らすなんてないとは思ったけど、どうして激戦区の領土なんて誰も要らないよね)
「あー。のんびり暮らしたい!悔しい!あの軍師のニヤけた顔、忘れないよ。宰相も策士だね。くっ」
まあいいや。とにかく、父上に報告しなきゃ。
実家に帰った。父上は大歓迎してくれるって感じではなかった。もの静かに父上の自室に呼び寄せた。
(えっ?私が領主になったから)
ドアを閉めると、父上は私に抱きついた。
「我が娘。セレナ。よくぞ、よくぞ無事に帰って来た。私はこれほど嬉しい事はない。良かった。良かった」
「父上。私は女神として我が国を…」
「そんな些細な事はどうでも良い。セレナが無事に元気でいてくれる事が私の悦びだ」
「父上が預けてくれた剣のおかげなのです」
「セレナ。おまえは私の娘だ。私にはよくわかる。苦労したな。誰よりも頑張った事は私が一番知っているぞ!セレナ。私の家では、気を抜いて良い。私の可愛い娘でいておくれ。父に存分にワガママを言って良いのだ」
「父上…私。頑張ったんです。父上がやれば出来るって」
「そうだ。おまえはとても頑張った。 私にはよくわかるぞ!」
「父上、ありがとう。」
私は泣いた。私は女神じゃない。普通の父の娘。家族が理解してくれる事が嬉しくて。
私は王様より爵位と領土を授けられた事を話した。
「セレナ。私はセレナさえ元気にしていれば、それでいいんだ。忘れないでおくれ!」
父上は優しい。私よりも女神に相応しいと心底思う。




