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落第騎士

「キンッ」

「お前の力はそんなものか、それでは今年も落第だぞ!」


騎士学校の最終試験。それは実戦を兼ねた試験官との剣技試合だ。

私は2年続けて落第している。女性の私は剣筋が弱い。ただ、試験に受からない理由は他にあったようだ。


「お前の剣には殺気も闘争心もないんだ。騎士の真似事にしか過ぎない。女だからって特別視しないぞ。俺を恨め、殺す気でかかって来い。今年も落第になりたいのか!」



なぜ、私が女伊達らに騎士の道を選んだのか。力もない。剣技に優れている訳でもない。普通に結婚して子供を産んでって方が幸せになれると誰でも思うはずだ。

だけど、それは幸せな結婚相手がいた場合の話。私のフィアンセは蛇のような気持ち悪い男だ。ネチっこくて陰険な男だ。そう、この教官のように!


その蛇のような気持ち悪いフィアンセとは幼い頃から結婚が決められていたようなものだった。家柄が蛇男の方が良く、断ることなど許されない。

私は三女でありながら、貴族の娘という自覚もある。ただ、許せないのは『私の鼻ぺちゃ』を馬鹿にした事だ。父上も同じ鼻ぺちゃだけど、私の鼻ぺちゃを可愛いって言ってくれる。父親譲りの可愛いお鼻を馬鹿にするなんて「生かしておけん!」って気持ちもあったけど何より、結婚から逃れる為には騎士になるしか道が残っていない。


(そんな動機じゃ、騎士になれる訳ないってわかっている。教官に騎士の真似事って言われたのは当たってる)


だけど、私は何がなんでも騎士になりたい。

教官に向かって剣を構える。



「お前が騎士になりたいって気持ちだけは認める。しかし、相手はお前を殺そうと剣を振りかぶるんだ。今のお前じゃ、太刀打ち出来ない。おまえは女だ。騎士に向いてない。人を殺めたり出来ない。それでも騎士になりたいのか?」

「えいっ」

剣が簡単に弾かれ、尻餅をつく。

「弱い。弱すぎる。敵は女だと言っても容赦はないぞ。その小さな鼻がもっと小さくなるぞ!とっとと男と結婚した方がいい」


「あゝ?今、教官は地雷踏みましたよ。許せない。絶対許さない。後悔させてやるわ!」

「ガキーン!!」

「おまえ、やれば出来るじゃないか!おい、聞いているか?」

「問答無用!」「ガキーン」

「では、俺も遠慮なく相手をするぞ!」


「右だ!」

誰の言葉か知らないが、勝手に身体が動く。教官の剣を防御する。

「そのまま足を狙え」

返す刀で足を切る。教官はギリギリで避ける。


「ほう、危ないところだった。狙いが鋭すぎて避けるのがやっとだ。本気にさせてくれるな。来い!」

「首を狙って突け!」

「ガードしたところを腰の辺りを横一閃だ!」

私は言葉通りに教官の腹を斬ろうとする。

「そこまで!」


私は我に帰った。あれ?何があった?私、勝ったのかな?


「合格だ。セレア。今からお前は騎士だ。長年の努力が実ったな。命をかけて国の為に戦うのだ!」


「はいっ」


やった。やった。これであの蛇男と結婚しなくて済む。

私はやっと自分の職を手に入れた。私は自由よ。


でも、さっきの声、なんだったんだろう?

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