運命の日はいつも雨
【桐島歩四段、遂に無敗のままタイトルに挑戦!】
竜玉戦の挑戦者決定戦を制した桐島歩は、遂にプロ入り無敗のままタイトル戦に挑戦することが決まった。
名人を下しての挑戦権獲得なので文句なしである。
「桐島四段、遂にタイトルに挑戦ですが、意気込みをお願いします」
「ちょっと自分でもびっくりしています。全力を出せる様に頑張りたいと思います」
勢いとは不思議だ。
自分の持っている力以上を発揮する事がある。
その為に立ち止まる事をしてはいけない、一度でも立ち止まると勢いを失ってしまうからである。
現在の桐島歩は正にその状態である。
知識アドバンテージは確かにあるが、トップ棋士に連戦連勝出来る程の力があるというと、無いと言い切れるぐらいである。
「あゆむ君、凄いことになってるね」
「めぐみさん、お久しぶりです。自分でもびっくりですよ」
「う~ん、まさか私より早くタイトル戦に出場しちゃうとは……」
「めぐみさんも、殆どの棋戦勝ち進んでいるじゃないですか」
取材を将棋会館で受けていたあゆむは、研究会を終えた天王寺めぐみとエレベーターの中で偶然に乗り合わせる。
「じゃあ、ちょっと隣寄って行かない?お互いの健闘を祈って」
「良いですね」
二人は将棋会館のすぐ近くにある、神社にお参りに行く事にした。
二拝二拍手一拝をし、二人は必勝祈願をする。
(どうか、あゆむ君がタイトルを獲得出来ます様に)
(どうか、めぐみさんがタイトルを取れます様に)
「ちゃんと神様にタイトル取れる様にお願いした?」
「もうばっちりです」
そういうと、めぐみはポケットから何かを取り出す。
「あゆむ君、これなんだけど」
「?駒?歩?」
「うん、お守り」
「ありがとう」
この歩の駒にどんな思い入れがあるのか、あゆむにはわからないが大切な駒だっていう事はなんとなくだがわかった。
「あちゃー、雨降って来ちゃったね。傘持ってきている?」
「いえ、天気予報では雨降らないって言ってましたので」
「あはは、私も。あのお天気お兄さんの予想って結構外れるよね」
「ですよね」
「駅まですぐだし、このまま走っていっちゃおうか」
「そうですね」
二人は駅に向かって走り出す。
「あゆむ君、遅いよ」
「はぁ、はぁ、ちょ、待って下さい」
「濡れちゃうよ」
「っ!めぐみさん!信号!信号!」
その瞬間、キキキーー!!!とブレーキ音が響き渡る。
迫り来るトラックに、硬直して動けないめぐみに対して、一目散に駆け寄るあゆむ。
トラックがめぐみに襲いかかる直前に、何とかめぐみの体を押してトラックからめぐみを助けて出せたが……
「あゆむ君?……い、い、嫌ー!!!」
雨の音にも負けずに、めぐみの悲鳴が響く。




