先生と呼ばれる様になる。
『桐島歩四段』『桐島歩先生』何度聞いても良い響きだ。
家でこっそりサインの練習もした。
「書道習おうかな~、名刺も作らなきゃな~」
浮かれて鼻歌を歌っている。
「お兄ちゃんって結構歌下手だよね」
「そう?私には天使の歌声に聞こえるけど」
母と妹もいつも通りだ。
「ねぇ、お兄ちゃん!それでプロ初戦の日程は決まったの?」
「決まったよ。12月24日だよ」
「「ええー!!」」
「どうしたの?」
「どうしたの?じゃないよ。クリスマスじゃん!イブじゃん!」
「別に彼女居ないし、関係無いよ。それより香は彼氏とか居ないの?」
「えへへー、お兄ちゃん彼女居ないんだ~。お母さんやったね」
母は無言で天に拳を突き上げている。
何やってるんだ、この人は……
「お兄ちゃんの初戦奪うピーって誰~?」
「竜玉戦6組で加藤貴子9段だよ」
「竜玉っておばあちゃんが持ってるタイトルだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ、もし勝ち進んだらおばあちゃんと戦うの?」
「そうなるね、そのときはどっちを応援す『お兄ちゃん!『あっくん』る?」
「おばあちゃん聞いたら泣かない?」
「あのおばあちゃんなら大丈夫」
「でもお年玉貰えないね」
「うがー!」
頭を抱えて机に突っ伏している。
今年はプロになったしお年玉あげるか。
「ああ、お兄ちゃんのプロマイド買えないよー」
やはりあげなくていいや。
「あっくん、加藤貴子9段って確かかなりご高齢よね?」
「うん。将棋界最高齢で確か72歳だったかな」
「ならいっか!」
「何が?」
「だってクリスマスイブにあっくんと1日中過ごせるなんて、世界一の幸せ者じゃない。若い女だったらって考えただけで」
何だかオーラの様な物が見えた気がする。
「25日はみんなでゆっくり過ごそうよ」
「「あ・た・り・ま・え・だよ(じゃん!)」」
プロになっても相変わらずの桐島家でした。
~天王寺めぐみ視点~
あゆむ君デビュー戦決まったんだ。え~と12月24日……イブじゃん!
いやいや、落ち着け、24日に対局って事は他の女とデートの線が消えただけでも良いよね……
25日は用事あるのかな?
前の日の対局の検討しようって誘ってみようかな。
いやいや露骨過ぎるだろ……
おうふ。
プロ棋士編も宜しくお願いします。
皆様のちょっとした時間潰しぐらいにでもなれれば幸いです。
のんびりがんばります。




