女は度胸
本格的に夏に突入した8月の某日の将棋会館。
~三段リーグ13回戦~
将棋盤の前で攻める手と守りの手に迷う一人の棋士、金城やまと。
難しい選択だが選んだ手は
「女は度胸よ」
前節、いやここ数年踏み込め無かった一歩を踏み込む。
数手が進み89手目
「ありません」
「ありがとうございました」
連敗を2で止めてホッとした金城は隣で指す棋士を見る。
棋士は自軍を見ている。
どうやら攻め込まれている様だ。
守りを壊されもう玉が危険に晒されている。
その隣で対局していた小学生は既に対局を終えて桐島歩の対局を食い入る様に見ている。
あたしの感情は複雑だ。
彼には勝って欲しい、どうしてだか彼としか分かち合えない将棋の感情がある。
しかし昇段を争う直接のライバルだ。負けて欲しいと刹那に思う。
三段リーグ13回戦終了時
秋田一二美 12勝1敗
天王寺ひとみ 12勝1敗
星野キララ 12勝1敗
桐島 歩 12勝1敗
金城やまと 11勝2敗
ミアワトソン 11勝2敗
武者野ひかる 10勝3敗
13回戦と14回戦の間のお昼休憩控え室
「王子、美味しそうな物食べているね」
「妹の手作りのお菓子なんですよ。金城さんもどうですか?」
「一つ貰うよ。……うん美味しいね」
「将来パティシエになりたいみたいで」
「へぇ~、良い妹を持ったね」
「普段は元気過ぎて困ってますけどね」
元気過ぎるのはもう一人居ているが……
「金城さん連敗脱出おめでとうございます」
「ありがとう、王子も粘り勝ちだったね」
「お兄様の受け最高でした」
「カッチカチだったね」
「あっ、一二美君もこんなに堂々とセクハラするんだ」
「ちっ、違います!」
「一二美さん……」
「本当に違うよ。もう対局始まるね、先に行くね」
顔を真っ赤にしながら対局室に向かう。
「しっしっし、これで一敗だな」
「ですね」
「二人とも悪い顔です。でもそんな表情のお兄様も素敵です」
昼休憩が終わり三段リーグ14回戦が始まる。
桐島歩 対 天王寺ひとみ
秋田一二美 対 武者野ひかる
星野キララ 対 ミアワトソン
金城やまと 対 愛媛五月




