上位混戦
誕生日を迎え16歳になった数日後。
三段リーグ第9、10戦が行われる為に将棋会館に訪れた桐島歩。
「あゆむお兄様、調子良さそうですね。一緒に昇段しましょうね」
お兄様と慕ってくれている星野キララ12歳だ。
三段リーグ対局表を確認する。
金城やまと 29歳 8勝
秋田一二美 19歳 8勝
天王寺ひとみ16歳 8勝
ミア ワトソン16歳 8勝
武者野ひかる16歳 7勝1敗
星野キララ 12歳 7勝1敗
桐島 歩 16歳 7勝1敗
上位7名が勝ち星の1差で競いあっている。
「今年は凄い事になってますね」
「黄金世代ですかね」
「安定感抜群の秋田君に、あの天王寺家のひとみ君、元チェスの世界王者ミア君、天才キララ君、アイドル武者野君、そして男性棋士桐島歩君」
「金城君はもうこれが最後ですからね」
奨励会は26歳で退会だが、勝ち越しを続けると29歳まで延長出来る。前の世界の桐島歩は勝ち越しが出来ず退会。
「立場的にこんな事言っちゃ不味いけど、金城君には頑張って欲しいですね」
「ええ、金城君は間違いなくトッププロレベルですからね」
「どうして、抜けれないのか本当にわからないです」
「去年も天王寺めぐみや秋田君等強豪に全て勝ったのに……三段リーグの魔物から抜け出せずにいる」
「そういう意味では折り返しの中日、今日がターニングポイントになりそうですね」
「ええ、何の因果か、上位人通しの対局だからね」
~控え室~
「あゆむ君、今日はミアさんとですね。外国人初のプロ棋士と男性初のプロ棋士誕生どちらも話題ですね」
「あゆむお兄様が勝つに決まってます」
「キララちゃんは?」
「私ですか~、私は天王寺家の暴れ馬です」
「ははは。暴れ馬って」
「ひふみさんは?」
「私は金城さんです」
「無敗対決ですね。頑張って下さい」
「ありがとう。あゆむ君もキララちゃんもね」
「行きましょう」
「おー!なのです」
「何それ?」
第9局が開始する。
「宜しくお願いします」
「オネガイシマス」
戦形は角換わり、相手は桂馬を早く跳ねて来る。4五桂早仕掛けだ。攻撃力抜群で対応が難しい。
あゆむが前にいた世界でプロが対局中にコンピューターによるカンニングを疑われた戦法だ。
「大丈夫、充分対策を知っている」
(ツヨイ、セメがキレル)
猛攻を受けきる。
「マケマシタ」
「ありがとうございました」
あゆむが隣の対局を見ると、
「ありません」
「ありがとうございました」
金城三段と秋田一二美三段の対局は金城三段に軍配が上がった。
「ありません」
「ありがとうございました」
その奥で、星野キララ三段が天王寺ひとみ三段に勝った様だ。
午後の対局は上位人全て勝利し、さらに混戦になった。
金城やまと 10勝
秋田一二美 9勝1敗
天王寺ひとみ 9勝1敗
ミアワトソン 9勝1敗
星野キララ 9勝1敗
桐島 歩 9勝1敗
武者野ひかる 8勝2敗




