めぐみVS桐島銀子
姉弟子の秋田一二美に負けてから1週間後、第3回戦、第4回戦が行われた。
敗北のショックを引きずらずに2連勝を勝ち取り、通算3勝1敗とする。
「あっくんや意外じゃったな」
「ばあちゃんどういう事?」
「正直、一二美に負けてずるずる行ってしまうと思ってたさ~」
「まぁ、敗けには慣れているからね」
「敗けには慣れてる?」
「ああ、何でもないよ、こっちの話」
「?まぁ、何にしても長丁場じゃし、上手くやりんしゃい」
「ありがとう」
「それと、学校の方は慣れたかの~?」
「うん、天王寺めぐみさんが対局無い日は毎日お昼誘ってくれたり気にかけてくれてるよ」
「ほう、あの小わっぱやりよるの~」
「ん?」
5月の某日、将棋会館の一室
第60回玉位挑戦者決定リーグ戦
下座の位置に天王寺めぐみ七段が座り対局者を待つ。
「おはようございます」
「うむ」
対局が始まる。
「早かったの、もう七段になったのかの~」
「はい。お陰様で」
若手棋士は対局中喋る事は殆ど無いが、ベテランの棋士は喋りながら対局する事もあるそうだ。
「絶好調じゃの。将棋も恋も」
「恋も?」
「あっくんに聞いておるぞ。毎日一緒にランチを楽しんでいるらしいの~」
「た、た、ただの可愛い後輩です」
すっかりと心理戦に負けてしまっている。
「ただの後輩かの~」
「そ、そうですよ」
「勿体無いの、あっくんはもしかしたら、もしかしたらじゃぞ、めぐみちゃんの事を……まぁ対局に集中するかの」
「もしかしたら何ですか?気になるじゃないですか」
「にしし」
~天王寺宅~
「はぁ~、全く集中出来なかった。なんてこすいやり方なのよ。それに簡単には引っ掛かる私もよ……」
天王寺めぐみは簡単な心理戦で負けてしまった。
「めぐみ、今日は銀ちゃんに負けたそうだね」
「あ!おばあちゃん」
「バカだね。銀ちゃんに遊ばれたそうじゃない」
「返す言葉もありません」
「まぁ、次は気をつけなさい」
「はい」
「それで、あっくんとはどうなの?ちゃんとゲット出来そうなの?」
「い、いえ、そんな関係じゃ……ナイデス」
「あんた次も負けそうだね……」




