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あべこべ世界で~プロ棋士として生きる~  作者: 田中悠平
第1章 あべこべ世界で~アマチュア棋士~
16/61

前夜祭終了。どうしても聞きたい事

会場にどよめきが沸く。


「参りましたって言ったの天王寺四段だよね」

「多分、急な対局だったから大盤解説も無いし、本当に勝ったのあゆむ様?」

「えっ?ハンデ無しの平手でしょ?流石にそれは無いでしょ!」


ここで観客の種類が二つに分かれる。

本当の将棋ファンで自分達が応援している、新しいスター天王寺四段が男とはいえ、ぽっと出に負けた事を信じたくない人達。


もう一つはこちらもぽっと出だが、新しいスター(この場合アイドル的感覚)の男の子が勝って嬉しい人達。


「でも流石に29連勝中のプロが負けないよね……」

「多分天王寺四段はあっくん様に惚れたのよ。好かれようとしてわざと負けたのよ」

「えー、めっちゃキモい」

「天王寺四段はそんな事しないわよ」

「じゃあどう、説明するのよ!」


会場のざわめきがおさまらない。


「銀ちゃんや……どういう事?」

「どういう事とはどういう意味じゃ?」

「その、こ憎たらしい顔よ、いつの間にあんな怪物育ててたの?よく今までバレなかったわね」

「私はあっくんに将棋教えてないさね、あっくんと初めて将棋指したの二,三日前さね」

「嘘でしょ?……本当なの?」


桐島竜王はコクリと頷く。


盤を挟んで二人の棋士が天を仰ぐ、激戦だった。

将棋とは正直だ。勉強した分だけしか強くなれない。

今この一瞬だけ男や女の性別を越えてお互いを尊敬し合う。


皮肉にも勝敗を分けたのは定跡ではなく天王寺四段が桐島歩を男と舐めた事だった。

後悔するだろう、この悔しさは将棋でしか返せない。


「ありがとうございました」


会場にまばらな拍手が沸く。


桐島歩が席を立ち、立ち去ろうとした時


「桐島君!あっ、あの……」


疲れと緊張で上手く話せない。

だが一言だけどうしても聞きたかった事を聞く。


「桐島君はプロ棋士になるのっ?」


彼は疲れた顔でニッコリ笑って答える。


「プロ棋士になるよ」


波乱の前夜祭が幕を閉じる。





7/26(木)

ヒューマンドラマ部門1位

総合26位


ありがとうございました。

これからもお願いします。

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