前哨戦の行方、歩のアドバンテージとは?
先手を取れたこれは大きい。
先手が有利とまでいかないが少なくても勝ちやすい、少なくとも桐島歩は先手を好んでいるのだ。
ばあちゃんこと桐島竜玉との対局で分かってしまった事がある、
この世界と元の世界では将棋の発達の仕方が違う、もちろんルール等は同じだ。
何が違うかと言うと定跡だ。例えば体操の技を編み出すとその編み出した人の名前が付くように(例えばモリスエ、シライ)の様に将棋も編み出した人の名前や特徴を命名される事が殆どだ。
藤井システム等は、もしかしたら将棋があまり興味ない人でも聞いた事があるかもしれない。
もし、その名前の付いた人達がこの世界に居なければ……
そう、その定跡は存在しないのだ。
これはかなりのアドバンテージだ。実際プロの頂点の竜玉相手に何度も勝ちを拾えるぐらいだ。
もちろん良い事ばかりではない、逆に言えば元の世界で居なかった人達だ。桐島歩だけが知らない定跡が沢山ある。
これは辛い。が、これからも勉強すれば良い、しかし向こうの世界の定跡は勉強しようがない。トータルで見ればかなり有利だろう。
当面はどちらの土俵で戦うかで勝敗が決まると言っても過言ではない。
天王寺四段との対局は横歩模様だ。桐島歩は思いきって横歩を取る。
【横歩取り戦法は研究(事前の勉強)が大きく物を言う】
どちらの世界の戦法が強いのか、今後この世界で闘うには良い指針になると思い選択した。
「これまでは定跡通りだ。これからどうなる」
チラッと天王寺四段の方を見る。口元が笑っている様に見えた
(なんだ?何かあるのか?)
すると、ここで天王寺四段は角を交換して来る。
(角交換……まさか!)
思った通り天王寺四段は4五角戦法を選択してきた。
(4五角戦法……この世界にもあったのか、いや迷い無く取ったということは、かなり有力な戦法なのか?)
桐島歩は身構える。
4五角戦法は元の世界ではオワコンとすら言われている。
明確な対処方法が見つけられたのだ。
しかし、新手が見付けられれば話は変わって来る、一気に有力な戦法になるのだ。
(こちらの世界の4五角戦法はどう進化してるんだ……わからない、でも俺の知っている情報で勝負するしかない)
お互いに持てる力を出し
対局は中盤戦をすっ飛ばして一気に終盤に入る。
「参りました」
決着が付いた様だ。




